第1部 特集 ICTの利活用による持続的な成長の実現
第1章 ICTによる地域の活性化と絆の再生

第2節 ICTによる地域の絆の再生


キーワード
ソーシャルメディア、これまでに利用したソーシャルメディア、ソーシャルメディアの利用頻度とオフ会参加経験との関係、ソーシャルメディアの利用テーマ、ソーシャルメディアで実現したこと、ソーシャルメディアによる不安の解消、ソーシャルメディアによる絆の再生(デジタルネイティブ、デジマム、76世代、アクティブシニア)、ソーシャルメディアの効用(オフラインコミュニケーションの補完、オンラインコミュニケーションの促進)、地域SNS、地域SNSの運営母体と対象範囲、地域SNSの運営目的(都市型、地方型)、地域SNSの利用者像、地域SNSの効用と地域活性化

●地域の絆の再生や自立性の醸成を支援するICTの効果に注目

 米国の政治学者ロバート・パットナムは、ソーシャル・キャピタル(社会関係資本)が充実している地域では、地域経営が効率的に機能しうまくいくという1。パットナムによれば、ソーシャル・キャピタルとは人々の協調行動を活発にすることによって社会の効率性を高めることのできる「信頼性」「互酬性」「市民参加のネットワーク」といった社会組織の特徴をいい、ソーシャル・キャピタルが人々の安心感を醸成する可能性があるとの研究成果も多数報告されている2
 人々の協調行動が活発であるということは、地域の中間組織の活動が活発であるということである。地域社会には町内会や自治会といった地縁組織があるが3、だんだん衰退する傾向にある。特に都市部では人々の流動性が高いため、地域における協力関係がなかなか構築されず、危険意識や不安感が高まっている。少子高齢化が進みグローバルな競争が進む中で、地域社会は自ら課題を見出し、分析し、目標を定め、自前の知識や資源で問題を解決していく必要がある。
 このような中、ICTを活用した地域の絆の再生が注目されている4。そこで本節では、ICTのコミュニケーションツールを活用して失われた地域の絆が再生又は再構築され、疲弊した地域社会を回復する効果について検証する。


1 Putnam(1993)
2 Putnam(2000)では、社会関係資本の高い米国内の州では殺人件数が少ないこと等を論拠に、社会関係資本が近隣地域の安全に寄与するとしている。また、国内の研究としては、内閣府経済社会総合研究所(2005)では、個人の信頼やネットワーク、社会活動等の社会関係資本を形成するものは、生活上の安心感を醸成する可能性があるとしている
3 庄司(2008) は、もともと日本の地域社会には、労働力の交換や行事、趣味などのために形成された「結」「講」「連」など様々な組織が存在し、ソーシャル・キャピタルとしての中間組織を体現していたと指摘している
4 平成19年版国民生活白書(P203)では、「ITの発達は、時間的・空間的制約を取り払い、新たなつながりを持つ機会を提供することに貢献している。例えば、家族と離れて暮らしていても、携帯電話やメールなどの活用により、多くの情報を共有し、家族としての一体感をもてる。また、地域では、地域版ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)などの活用により、活動が活発化している例もある。ITの活用により、顔の見えるコミュニケーションの機会が減少し、意思疎通が滞る場合もあるが、基本的には、多様な形でコミュニケーションを促す手段として、その効果的な活用が期待されている。」とある
テキスト形式のファイルはこちら