第1部 特集 ICTの利活用による持続的な成長の実現
第3章 ICTによる経済成長と競争力の強化

(1)「課題先進国」日本の経験等を生かし、何をどのようにグローバル展開するか


●個々の要素技術、製品のみならず、オペレーションやマネジメントまで意識したシステム・パッケージによるグローバル展開を

 日本がかつて経験してきた課題の対処のノウハウを生かした社会インフラシステムの他国への展開について、どのような分野が考えられるだろうか。
 日本は地震をはじめ自然災害が多い国であり、その対策を目的として、ICTを用いて、日本各地に配置された地震、雨量、水位等の計測データを収集し、警報として発するとともに、災害発生後、災害情報を送り届けるシステムは、国民の安心・安全を支えている。こうした最先端のICTを活用したインフラをトータルパッケージとして災害の多い国へ提供することにより、他国での安心・安全の確保とのニーズに応えることが考えられる。
 また、鉄道システムに関して、日本は、都市における人口密集、人口密集した都市の連続、地震大国等を背景に、都市内の鉄道、都市間の高速鉄道等に関して、ICTを用いた高度の運行管理システムなど、安全かつ高度の技術や運営ノウハウを有する。鉄道に関して、製品のみならずその運行ノウハウも含めシステムとしてグローバル展開することは、安全運行や都市の渋滞解消にも資する。
 さらに、日本は、石油等のエネルギー源を他国に依存する制約を背景に、経済発展と、環境負荷軽減及び省エネルギーとを両立させてきた歴史を有しており、関連する技術の蓄積や優位性を有している。このような、環境負荷軽減及び省エネルギー関連のICTプロジェクトについて、全体をパッケージ化して他国へ普及、展開することは、展開先のみならず世界の環境負荷軽減に資する。例えば、各国において積極的に取組が進められているスマートグリッド/スマートメーターは日本が技術的優位性を発揮しうる分野であり、「低炭素社会の実現」「エネルギー安全保障」「新産業の育成」といった相互に関連する諸課題を解決する観点からも、政府全体の取組みとして推進した上で、グローバル展開することが考えられる。
 このように、日本がかつて経験してきた課題の対処のノウハウを生かした社会インフラシステムを他国へ展開する場合、個々の要素技術、製品のみならず、オペレーションやマネジメントまで意識したトータルなシステム・パッケージによるグローバル展開を推進するとの視点が必要であると考えられる。技術、製品を「単品売り切り」するのでなく、オペレーションやマネジメントまで一括して手掛ければ、日本の課題解決の経験・ノウハウを十分に生かすことができると考えられ、また、長期的に安定した収入が見込まれるためである。また、その展開先については、その課題解決を現在求めている国への展開が必要だろう。
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