第1部 特集 ICTの利活用による持続的な成長の実現
第3章 ICTによる経済成長と競争力の強化

コラム 生産情報の提供による販路拡大〜「あいちそだち」の取組〜


 今後の日本の農林水産業においては「食の安全」「安定供給」が重要課題となっているが、「食の安全」にむけた取組として、我が国では最大規模の農産物データベースである「SEICAネット」を中心とした農業分野の見える化が進められている。このSEICAネットを利用して、生産者や出荷品目毎の情報を追加して提供しているのが「あいちそだち」である。2003年の立ち上げから既に7年がたち、登録生産者数は約1,100名になる(2009年度)。
 「あいちそだち」を運営しているJAあいち経済連園芸部青果販売課によると、システム導入のきっかけは、販売先から減農薬、減化学肥料に取組むことへの要望があり、そうした取組状況を情報として欲しいといったニーズに変わってきたことが背景にあるという。もともと愛知県は全国有数の農業産出額を誇る農業県でもあるが、昨今の消費者の食の安全への関心の高まりの中で、美味しい・鮮度が良いに加えて生産情報の提供という付加価値も生み出しているといえる。
 また「あいちそだち」は消費者の声が直接生産者に届く仕組になっており、品質改善に素早い対応が可能となっている。このため「それまではクレームが寄せられても、(農家は)どこか他人事だったのが、『クレーム報告が多数あった』となると反応が違うし、『いつも買ってますよ』というメッセージは生産者にとって励みにもなっている」という声にみられるような効果が得られている。また出荷日をロット番号で管理しているため、クレームが寄せられた場合でも責任の所在がはっきりし、それにより流通過程の改善にもつながっているという。
 もともと農業分野では販路拡大をICT導入目的とする傾向が強いが、同課「農作物は一つ一つの個体差が大きく、農作物へのこだわり等をアピールしたいという思いが強い。小売店先でのPOP広告は、せいぜい数行だけれどもインターネット販売だと多くの情報が提供できる。「あいちそだち」を入口にJAあいちのホームページで、多くの産地情報と農家の想いを届けていきたい」、「これまでの食材の提供だけでなく、「せっかくの良い食材を美味しく食べてもらう』ために、オススメレシピを提案することにも力を入れていきたい」と周辺情報の提供による消費拡大も意図している。
 このように「あいちそだち」は市場・量販店および消費者からの信用を得ることで取引の継続・拡大につながっており、インターネットの利活用による販売チャネルの多様性確保にも役立っている。また同課の「これからの農家は生産者でもあると同時に経営者でもあることも求められます。農業分野は他業種よりもICT導入が遅れている分、伸びしろも大きいと思う。農業を取り巻く状況は厳しいが、ピンチはチャンスと思っています」という考えは、今後の農業分野においてICT利活用によりコスト削減や生産拡大といった面での貢献の可能性を感じさせる声である。
あいちそだち

※ 「あいちそだち」のホームページを引用

http://www.ja-aichi.or.jp/as/index.php

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