第2部 情報通信の現況と政策動向
第5章 情報通信政策の動向

(3)電気通信事業者間等の紛争処理


ア 電気通信事業紛争処理委員会の機能等
 電気通信事業紛争処理委員会(以下「委員会」という。)7は、電気通信事業者間の紛争を処理する専門組織として、平成13年11月に創設された。現在、総務大臣により任命された委員5名及び特別委員8名が紛争処理に当たっている。
 委員会は、[1]電気通信事業者間の紛争を解決するためのあっせん・仲裁手続の実施、[2]無線局の開設等に関する紛争を解決するためのあっせん・仲裁手続の実施、[3]総務大臣の命令及び裁定等について諮問を受けて審議・答申を行うこと、[4]その権限に属せられた事項に関し、ルール整備等について総務大臣に必要な勧告を行うことという4つの機能を有している(図表5-2-1-1)。

図表5-2-1-1 電気通信事業紛争処理委員会の機能の概要
図表5-2-1-1 電気通信事業紛争処理委員会の機能の概要

 また、委員会事務局に「電気通信事業者」相談窓口を設けて、接続その他電気通信事業者間のトラブル等に関する問合せ・相談等に対応している。

イ 委員会の紛争処理機能の拡大等
 情報通信審議会「通信・放送の総合的な法体系に関する検討委員会」等において、委員会の紛争処理機能の拡大について検討が行われ、平成21年に総務大臣への答申が行われた。総務省は、答申等を踏まえ、新政権の下で放送法、電波法及び電気通信事業法等の改正案の検討を行い、所要の修正・追加を行った上で、「放送法等の一部を改正する法律案」として平成22年3月5日に国会に提出した。

【放送法等の一部を改正する法律案における委員会に関する主な改正事項】
(ア)放送法改正関係
 [1] 地上テレビジョン放送の再放送同意を巡る紛争の迅速・円滑かつ専門的な解決に資するため、電気通信紛争処理委員会によるあっせん・仲裁制度を整備。
 [2] 地上テレビジョン放送の再放送同意を巡る紛争において総務大臣の裁定を行う場合の諮問先を電気通信紛争処理委員会に変更。
(イ)電気通信事業法改正関係
 [1] 委員会の名称を「電気通信事業紛争処理委員会」から「電気通信紛争処理委員会」へ変更。
 [2] コンテンツ配信事業者と電気通信事業者との間における電気通信役務の提供に係る紛争及び電気通信事業者間における鉄塔等の共用を巡る紛争を電気通信紛争処理委員会のあっせん及び仲裁の対象とするなど、紛争処理機能を拡充。

(ウ)その他の法改正関係
 委員会の名称変更に伴い、電波法、特別職の職員の給与に関する法律及び総務省設置法について改正。

ウ 電気通信事業紛争処理委員会が果たしている役割
 委員会は、これまで、大きく四つの役割を果たしてきた。
 [1] 専門性を生かした迅速な紛争の解決
 あっせん事案では、これまで51件の事案を扱い、平均して約1か月半で処理を終え、約6割の事案を解決している。
 [2] 紛争の発生の未然防止
 「電気通信事業者」相談窓口の助言により本格的に紛争化する前段階で解決した事例もある。また、過去の事例を委員会のウェブサイト等で積極的に公開し、類似の紛争防止に努めている。
 [3] セイフティネットの機能
 電気通信事業者は他事業者との協議に当たり、紛争化した場合であっても、委員会という公正中立な第三者機関の場で自己の考え方を対等に主張できる機会が保障されている。
 [4] 総務大臣への勧告を通じた競争ルールの改善
 勧告を通じ、我が国のブロードバンドサービスの競争促進や固定発携帯電話料金の低廉化、MVNOの発展等に貢献してきた。

エ 委員会の活動の状況
(ア)平成21年度末までの紛争処理件数
 委員会は、平成21年度末までに、あっせん事案を51件、仲裁事案を3件、諮問・答申案件を7件、勧告を3件実施している(図表5-2-1-2)。

図表5-2-1-2 紛争処理等の年度別件数
図表5-2-1-2 紛争処理等の年度別件数
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(イ)「電気通信事業者」相談窓口における相談等
 平成21年度に57件の相談、問い合わせ等を受けた。相談内容ごとの受付件数は、接続の諾否に関するものが22件と約3割以上を占めている。また、相談窓口における助言を踏まえ事業者間協議が行われ、複数の事案が解決された。
なお、主な相談事例については、次のとおり。
 ・中継ダークファイバとの接続の諾否に関する相談
 ・債権保全措置に関する相談
 ・卸役務の提供に係る料金に関する相談
 ・他の電気通信事業者の土地の利用による占有料の支払に関する相談
 ・ローミング契約に係る費用負担に関する相談

(ウ)委員会の認知度・利便性向上に向けた取組
 委員会の活動内容などの周知活動や電気通信事業者間の協議状況等に関する実態調査を行い、委員会の認知度・利便性の向上に取り組んだ。

(エ)国際通信調停ワークショップへの出席
 平成21年10月に韓国ソウル特別市において開催された「国際通信調停ワークショップ」に出席し、委員会の現状等について発表するとともに、各国における紛争処理プロセスの相違点等について議論を行った。


7 参考:電気通信事業紛争処理委員会:http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/hunso/index.html
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