第1部 特集 ICTの利活用による持続的な成長の実現
第3章 ICTによる経済成長と競争力の強化

3 利用者と協働する製品・サービス開発とグローバル展開


●グローバル展開に際しては、ICTを活用した利用者(ユーザー)との協働が有効

 我が国ならではの高付加価値な財・サービスをイノベーションにより創出することは、内需振興のみならず、外需獲得すなわちグローバル展開においても必要かつ強力な武器となる。他方、平成21年版通商白書において、我が国の企業は高い技術力を販売に結びつけるプロセスに課題があり、例えば、現地市場の嗜好を把握し、製品・サービス開発に反映できていない可能性が示唆されている18
 また、同白書は、我が国企業が今後売上拡大を見込む地域について、中国やASEAN4(タイ、マレーシア、フィリピン、インドネシア)、ベトナム、インドを中心とした新興国市場であることを紹介した上で、今後の新興国市場では中所得層(ミドルエンド)からなるボリューム・ゾーン19をターゲットとした展開が重要であるとしているが、その際に、高い性能・品質やブランドイメージを生かしつつ、価格帯も含めてボリューム・ゾーンのユーザーから満足を得られる製品やサービスの開発と提供に向けて、研究開発戦略やマーケティングやブランディング等を含めたビジネスモデル全体を工夫すべきことについても述べている。
 すなわち、グローバル市場においては「現地のユーザーにとり高付加価値」となる製品・サービスを開発・提供できるかが大きな課題となる。このような課題に対して、ICTによるユーザーとのコミュニケーション強化が有効であると考えられる。
 上記を踏まえ、ICTを上手に活用し、ユーザーと協働したUGD(User Generated Device)20をタイプ別に分類し、グローバル展開に成功している事例を紹介する。


18 平成21年版通商白書第2章第2節
19 平成21年版通商白書によると、日本を除くアジア地域の世帯可処分所得5,001ドル以上35,000ドル以下の家計人口は約8.8億人であり、
1990年の約1.4億人の約6.2倍になったとしている
20 『日経エレクトロニクス(2009年3月23日号)』が初出の模様(http://techon.nikkeibp.co.jp/article/HONSHI/20090316/167277/)。ユーザーが機器やサービスの開発に参加し、メーカーが提供するハードウエアの機能モジュールやソフトウエアなどを組み合わせて自分仕様のデジタル機器を作り上げる動きのこと
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