第2部 情報通信の現況と政策動向
第5章 情報通信政策の動向

(2)その他の放送政策


ア 携帯端末向けマルチメディア放送の実現
 情報通信審議会において、地上テレビジョン放送のデジタル化による空き周波数帯について、平成19年6月に「90−108MHz及び207.5−222MHzの周波数帯を移動体向けのマルチメディア放送等の放送(テレビジョン放送を除く。)に使用することが適当」との一部答申(図表5-2-2-6)が取りまとめられた。

図表5-2-2-6 デジタル移行完了後の空き周波数の有効利用について
図表5-2-2-6 デジタル移行完了後の空き周波数の有効利用について

 総務省では、携帯端末向けマルチメディア放送の実現に向け、平成21年の第171回通常国会に関連法案を提出するとともに(同年4月成立、公布)、同年8月に制度整備に関する基本的方針を策定し、同年10月から11月にかけて当該放送への参入希望調査を実施した。また、同年10月に情報通信審議会において当該放送の技術的条件についての一部答申が取りまとめられた。
 総務省は、これらを受けて、平成22年4月に207.5MHzから222MHzまでの周波数を使用する携帯端末向けマルチメディア放送の実現に向けた受託放送(ハード)に係る制度整備を行ったところであり、今後、同年夏頃に開設計画の認定(受託放送に係る参入事業者の決定)を行う予定である(図表5-2-2-7)。

図表5-2-2-7 携帯端末向けマルチメディア放送のイメージ
図表5-2-2-7 携帯端末向けマルチメディア放送のイメージ

イ 地域情報メディアの進展
 地域経済の疲弊やインターネットメディアの台頭等により、地域の情報文化や経済社会の担い手である既存のラジオ放送局の経営基盤が大きく変化している。
 このため、総務省では、新しいデジタルメディアとの関係も踏まえ、ラジオをはじめとした地域情報メディアの将来像について、多様な角度から検討することを目的に、平成22年2月に「ラジオと地域情報メディアの今後に関する研究会」を発足させた8。今後、平成22年7月頃を目途に取りまとめを行う予定である。

ウ 衛星放送政策の展開
(ア)衛星放送の現状
 我が国の衛星放送は、多彩な専門放送サービスの提供、テレビジョン放送の高精細度化をはじめとして、技術先導的なメディアとしての役割を果たしてきた。衛星放送の現状としては、特別衛星放送(BS放送及び東経110度CSデジタル放送)対応受信機出荷台数(累計)は約6,535万台(平成21年度末現在)、特別衛星放送視聴可能世帯数も約2,198万世帯(平成20年度末現在※9)となっている。

(イ)BS放送のデジタル化の推進
 BSデジタル放送については、現在、5周波数を使用して、12番組のテレビジョン放送が放送されているが、平成19年7月の電波監理審議会答申を受け、平成23年以降、BSデジタル放送のために新たに7周波数を使用することが決定されている。
 これを受け、これまで、平成20年7月に「平成23年以降に開始される予定の新たなBSデジタル放送に係る委託放送業務の認定に関する基本的方針」を策定・公表し、その後「平成23年以降の新たなBSデジタル放送に係る参入希望調査」を実施した。これらを踏まえ、平成21年2月に委託放送業務の認定申請を受け付けるにあたり必要な制度整備を行った。
 平成21年2月から委託放送業務認定の申請を受け付けたところ、29者からHDTV35番組等の申請があり、同年6月に、9者・HDTV12番組に対し、委託放送業務の認定を行った。今後、BSデジタル放送のうち上記委託放送業務の認定において割当を行わなかった帯域を対象に、認定申請受付を行う予定である。
 BSアナログ放送の終了については、平成20年3月の終了期日決定後、BSデジタル放送への円滑な移行を目的として、BS放送に関係する事業者、団体及び総務省が参加する「BSアナログ放送の終了に係る関係者連絡会」を設置し、BSアナログ放送終了の周知広報用リーフレット及び「BSアナログ放送の終了に係るQ&A」の作成等、周知広報の推進や視聴者からの問合せに対する相談体制の整備等の取組が進められている10

(ウ)映像国際放送の強化
 近年のグローバル化の進展を踏まえ、対外情報発信力の強化が重要な課題となっている。平成19年の放送法改正では、外国人向けに特化した新たな映像国際放送の制度化が行われ、総務省では、投入国費の大幅な拡充(平成20年度:15.2億円、同21年度:24.5億円、同22年度:24.5億円)等の施策を講じたところである。
 平成20年4月の改正放送法施行後、NHKからの業務委託を受ける子会社((株)日本国際放送(jibtv))が設立され、同21年2月から、24時間完全英語の新たな外国人向け映像国際放送が開始されている。総務省としては、jibtvの独自番組を含めた当該チャンネル全体の番組内容の更なる充実、受信環境整備(受信可能な国・地域の拡大。平成22年3月末現在、約1億2500万世帯が受信可能。)及び国際的な認知度の向上等に向けた取組を推進しているところである。


8 参考:ラジオと地域情報メディアの今後に関する研究会:http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/radio/index.html
9 ※「世帯インデックス調査(耐久消費財所有実態調査):(社)中央調査社」結果をもとにNHKが算出した推計値
10 参考:BSアナログ放送の終了に係るQ&A:http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/bs-analog_syuuryou/faq.html
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