第1部 特集 ICTの利活用による持続的な成長の実現
第1章 ICTによる地域の活性化と絆の再生

(5)ソーシャルメディアによる絆の再構築


 以下では、「デジタルネイティブ」「デジマム」「76世代」「アクティブシニア」といった特徴的な4つの世代グループにおいて、ソーシャルメディアが日常生活やライフイベントなどでいかに活用され、従来の枠を超えた新たな絆が再構築されているかについて、グループインタビュー等16を通じて分析した結果を紹介する。

ア デジタルネイティブ

●SNSを中心にソーシャルゲームやマイクロブログなど新しいソーシャルメディアを活用しながら、絆を構築

 子どものころからインターネットが存在し、日頃から使っている10〜20代のデジタルネイティブ世代の絆の再構築の事例を図表1-2-2-14に示す。デジタルネイティブ世代は他の世代と比較して、SNSを中心にソーシャルゲームやマイクロブログなどの新しいソーシャルメディアを活用しながら絆を構築している。

図表1-2-2-14 ソーシャルメディアによる新たな絆の再構築(デジタルネイティブ)
図表1-2-2-14 ソーシャルメディアによる新たな絆の再構築(デジタルネイティブ)
新しいソーシャルメディアを使って、知人・友人の絆を深めたり、国内外での新たな絆を構築
(出典)総務省「ソーシャルメディアの利用実態に関する調査研究」(平成22年)

 たとえば、海外のSNSを利用して日本にいながら海外に住む外国人の友達をつくったり、出身学校の卒業生を簡単に探すことのできる国内のSNSのサービスを利用して年齢の離れた卒業生と知り合いになったり、SNSを用いて国境や世代を越えた絆を構築している。また、同世代のほとんどは国内大手のSNSに自身のアカウントを保有しているため、個人保有のメールアドレスを知らない同士の同窓会の連絡手段として利用している。マイクロブログでも積極的に情報を投稿し、趣味が同じ人が集うオフ会に参加し、年齢や出身、職業が異なる人と交流している。携帯電話の利用率の高いソーシャルゲームでは、ゲームの中で会話をした人と友達になり、実際に会って遊ぶようになったという例もある。

イ デジマム

●ブログやSNSで子育て関連の情報や地域情報を入手、家族の絆を深め、地域の人との新たな絆も構築

 未就学の第1子のいるデジマム世代の絆の再構築事例を図表1-2-2-15に示す。デジマム世代は核家族世帯で双方の両親とは別所帯で暮らしていることが多く、子育て関連の情報や地域情報が不足しがちという傾向がある。家庭で過ごす時間が比較的長くなるため、情報収集は携帯電話などと比べると画面が大きく高性能のパソコンのインターネット利用割合が高い。

図表1-2-2-15 ソーシャルメディアによる新たな絆の再構築(デジマム)
図表1-2-2-15 ソーシャルメディアによる新たな絆の再構築(デジマム)
ブログ、SNS、掲示板で子育て情報や地域情報を入手し、家族の絆を深め、地域の人との新たな絆を構築
(出典)総務省「ソーシャルメディアの利用実態に関する調査研究」(平成22年)

 転勤等で居住地域に知人がいない場合に、ブログやSNSでおいしい食事ができる店や地域のイベントなどの情報を得るツールとして活用し、お気に入りの店や地域のお得な情報を知るとSNSに書き込み、コミュニケーションを取りながら地域の人と新たな絆を構築している。また、転勤前にいた地域の情報もブログやSNSで確認し、地方の友人と連絡を取る際に利用している。
 子育てにもソーシャルメディアを活用しており、子どもの機嫌が悪いときには、動画共有サイトでお気に入りのアニメーションを見せたり、ソーシャルゲームでゲームを覚えて子どもと一緒に対戦ゲームをしたり、ソーシャルメディアを子どもと一緒に利用しながら親子の絆を深めている。また、自分の子どもと同じ病気で悩んでいる親が集う掲示板の書き込みを読んで前向きな気持ちになったというように、知らない人と新たな絆を構築しながら子育ての悩みをソーシャルメディアで解決している。育児以外の目的での外出時間が確保しにくいため、疎遠になった旧来の友人との連絡の手段にSNSを用いたり、趣味の仲間探しにSNSやブログを活用しているのも特徴的である。

ウ 76世代

●ブログ、SNS、マイクロブログなどにより、新たなビジネスチャンスを得るとともに、情報発信で社会に影響

 1976年前後に生まれた、日常生活でICTを使いこなす世代である。インターネットとの出会いは高校卒業頃、もしくは大学入学頃で、就職氷河期を体験した世代でもあるため、起業指向が特に強いといわれている。そこで起業家を中心とした絆の再構築の事例を図表1-2-2-16に示す。

図表1-2-2-16 ソーシャルメディアによる新たな絆の再構築(76世代)
図表1-2-2-16 ソーシャルメディアによる新たな絆の再構築(76世代)
ブログ、SNS、マイクロブログで新たなビジネスチャンスを得るとともに、情報発信で社会に影響
(出典)総務省「ソーシャルメディアの利用実態に関する調査研究」(平成22年)

 パソコンやインターネットに初めて触れた当時の体験を踏まえ、インターネット利用の利便性を直感的に捉え、利用者目線でのサービス・商品開発をめざし、自身のやりたいことを実現するための方法としてICTを活用している。たとえば、ブログを通じて積極的に自社情報の発信を行ってビジネスのきっかけをつくったり、ブログのフォロワーである専門家に自らのビジネスモデルについて評価してもらうなど、リアル社会のつながりだけでは得られなかった新しい絆がネット上で生み出されている。
 また、ブログで発信した自らの経営方針に賛同した学生が就職希望をしたりするなど、起業家の情報発信が自分の想像を超える大きな影響を社会に与えるようになっている。ツールもブログ、SNS、マイクロブログなどをICTになじんだ世代として積極的に利用している。

エ アクティブシニア

●ブログやSNSを活用しながら家族との絆や新たな絆を構築し、世代や国境を越えたオフラインの交流も積極的

 50〜60代の子どもも自立し、新しいものに興味・関心を持ち自身の生活に積極的に取り込んでいるアクティブシニア世代の絆の再構築の事例を図表1-2-2-17に示す。アクティブシニア世代はソーシャルメディアを活用しながら、家族との絆や新たな絆を構築しオフラインの交流を積極的に行っている。

図表1-2-2-17 ソーシャルメディアによる新たな絆の再構築(アクティブシニア)
図表1-2-2-17 ソーシャルメディアによる新たな絆の再構築(アクティブシニア)
ブログ・SNSを活用しながら家族との絆や新たな絆を構築し、世代や国境を越えたオフラインの交流も積極的
(出典)総務省「ソーシャルメディアの利用実態に関する調査研究」(平成22年)

 離れて暮らす子どもたちの近況はブログなどで確認し、親子の絆を深めている。同世代の旧知の友人との近況報告や連絡手段にブログやSNSを活用したいと考えているが、ICTやソーシャルメディアを利用している友人が少ないため、なかなか実現していないという意見もみられた。
 また、自身が病気になったときにSNSを通じてできた友人から励まされ、前向きな気持ちになることができたという経験を生かし、患者の悩み相談の掲示板の管理人となって、患者同士の新たな絆の構築に役立てているという事例もある。仕事や子育てに時間をとられることもなく、趣味に時間を費やすことができるため、SNSで趣味のコミュニティを立ち上げオフ会を積極的に開催するという例もあり、SNSのコミュニティで人材を集めて近所の施設を利用して英会話教室を開き、地域の国際交流活動に繋がったなど、世代や国境を越えた新たな絆の構築に役立っている。
 以上、デジタルネイティブ、デジマム、76世代、アクティブシニアのライフイベントや日常生活におけるソーシャルメディアの活用状況をみてきたが、各世代において共通していえることは、みずからの生活環境やライフスタイルに応じて、使いやすいソーシャルメディアの機能を活かして、世代や空間を超えた新しい絆を再構築していることであろう。こうした新しい絆による自発的かつ自立的な活動が広がっていくことにより、地域社会の活性化につながっていくと考えられ、このような潮流を生み出すソーシャルメディアの役割は、今後もますます重要となってくるであろう。


16 グループインタビューの詳細については、付注6参照
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