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2 高度化・多様化する通信メディア近時におけるエレクトロニクス技術の急速な発展と経済社会の高度化は,通信手段の高度化・多様化をもたらしつつある。(1) 画像通信 ア.ファクシミリ通信と電子郵便 ファクシミリ通信は,漢字を用いる我が国に適した通信手段であるといえるが,従来,私設線又は専用線の利用に制限されていたため気象,新聞,警察,電報用など官公庁や特殊な用途に限られていた。しかし,46年の公衆電気通信法の改正による公衆電気通信網の開放とともに,近年における技術革新により,ファクシミリの高性能化と低コスト化が進められたこともあって,ファクシミリは急速に普及し,現在は,米国に次いで世界第2位に当たる10万台を超す普及台数となっている。 また,近年のファクシミリ等の新しい通信技術の進歩は,郵便の利用態様にも種々の影響を及ぼすと予想されており,各方面から電子郵便に対する関心を喚起することとなった。我が国においては,郵政省が50年度から電子郵便に関する将来性,技術的可能性等について調査研究を進めている。 イ.CATV CATVは,一般には高感度のアンテナで受信した良質のテレビジョン信号を同軸ケーブルのような広帯域伝送路を通して各家庭のテレビジョン受像機に分配するシステムであり,我が国においては,主として辺地におけるテレビジョン放送難視聴解消を図る共同受信施設として普及してきた。最近では,都市における高層建築物等に起因するテレビジョン放送受信障害対策に利用されているほか,地域社会に密着した自主放送を行うものも増加しつつある。また,CATVシステムを構成する同軸ケーブル等は,極めて多量の情報を伝送する能力があるところから,これに双方向性機能を持たせたり,コンピュータと結んだりして多種多彩な情報を提供するコミュニティ・ネットワークとして普及発展することが期待されている。 ウ.新しい情報メディア 画像通信の中では,このほか,文字図形情報システムの発展がみられる。これは,特定の個別情報を受け手主導で入手できるシステムで,現在,世界各国で開発が進められており,我が国では,郵政省と電電公社が共同してキャプテン・システムと呼ばれる文字図形情報システムの実験を54年12月から実施している。 また,放送メディアにおいて新しい技術の展開として注目されるのは多重放送である。多重放送は,テレビジョン放送やFM放送の電波に別の信号を重畳して同時に放送を行う方式であり,53年9月には,このうちテレビジョン音声多重放送(ステレオホニック放送,翻訳による2か国語放送)を試験的に実施するための措置がとられた。多重放送にはこのほか文字放送,静止画放送,ファクシミリ放送が考えられ,電波資源の有効利用と共に多種多様な情報を入手できるシステムとして,今後の発展が期待されている。 (2) データ通信 データ通信は,46年に制度が法定化されて以来順調な発展を遂げてきたが,更に,最近における通信技術及びコンピュータ技術の発展に伴い,その処理内容,利用形態はより高度化,複雑化するとともに広域化の傾向にある。 また,豊富な情報を迅速かつ適切に収集し,それを効率的に利用することにより,社会における諸活動を適切かつ効率化していくためのデータベースシステムの重要性が認識されつつある。さらに,今後は,単独のシステムが通信網を介してコンピュータネットワークとして機能する高度なユーティリティを持ったシステムの出現が考えられる。 (3) 宇宙通信 インテルサットや諸外国の国内衛星通信システムにみられるように,各国において衛星通信技術の研究開発が活発に進められており,今後も社会の高度化,多様化に伴う通信需要の増大と多様化によって宇宙通信の重要性は一段と高まるものと予想される。 我が国においても衛星利用の本格化に向けて各種実験が進められており,通信衛星の分野では,52年12月に実験用中容量静止通信衛星(CS)「さくら」が打ち上げられ,さらに放送衛星の分野では,実験用中型放送衛星(BS)「ゆり」が53年4月に打ち上げられ各種の実験が進められており,現在までに多大の成果が得られている。このような実験の成果を踏まえて,1980年代の半ばにはいよいよ実用の通信・放送衛星が打ち上げられることとなり,通信需要への対応,テレビジョン放送の難視聴解消等が図られるものと期待されている。 (4) 新しいネットワーク 超LSIやコンピュータに代表されるディジタル技術の発達は,電気通信ネットワーク自体に本質的な変化をもたらしつつある。従来,音声,符号等については,それぞれ独立したネットワークが構成されていたが,将来,これらを包含したディジタル通信網が構成される可能性も予想されている。既にデータ通信のためのディジタル交換技術を用いた回線交換サービスとパケット交換サービスが,電電公社によって開始されている。
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