昭和55年版 通信白書

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6 その他の国際機関

(1) アジア・太平洋電気通信共同体
 アジア・太平洋電気通信共同体(Asia-Pacific Telecommunity,略称APT)は,アジア・太平洋地域における電気通信の開発を促進し,地域電気通信網を確立するための地域国際機関である。
 APTの根拠規定であるアジア=太平洋電気通信共同体憲章は,1976年3月24日から同年4月2日まで開催された第32回ESCAP(アジア・太平洋経済社会委員会)総会において採択され,APTへの加盟資格を有するすべての者に開放されていたが,1979年2月25日に効力が発生し,その主要機関である総会及び管理委員会の創立会合が同年5月8日から17日までATP本部の所在地であるバンコクにおいて開催された。
 APTは,加盟国,準加盟国及び賛助加盟員により構成されており,加盟国は1980年3月末現在,アフガニスタン,オーストラリア,バングラデシュ,ビルマ,中国,インド,日本,マレイシア,ナウル,ネパール,パキスタン,フィリピン,韓国,シンガポール,タイ,ヴィエトナム及びスリ・ランカの17か国,準加盟国は,ホンコンである。賛助加盟員は,企業体として地域における国内又は国際電気通信業務を運営する事業体で,加盟国又は準加盟国から指名されるものに開放されており,日本から電電公社及び国際電電,ホンコンからCable&Wireless Ltd.(C&W),Hong Kong Telephone Company,フィリピンからEastern Telecommunications PhilippinesIncorporated (ETPI), Globe Mackay Cable and Radio Corporation(GMCR),Philippine Communications Satellite Corporation(PHILCOMSAT),Philippine Long Distance Telephone Co. (PLDT),Philippine Global Communications Incorporated(PGCI)の9社がそれぞれ加盟している。
 APTの主要機関は,総会,管理委員会及び事務局であるが,このほかに総会又は管理委員会はAPT目的遂行のため必要と認める補助機関及び専門部会を設置することができる。
 総会は,APTの最高機関であり,APTの目的を遂行するための一般的な方針及び原則を定めることを主たる任務とし,原則として3年ごとに会合する。
 管理委員会は,総会の決定及び指示に従い,APTの事務運営の監督,年間の業務計画及び予算の検討,承認を主たる任務とし,原則として毎年1回会合する。事務局は,APTの首席の管理職員である事務局長,管理委員会が必要と認める数の事務局次長(現在1名)及びその他の職員で構成され,APTの技術援助の総合計画及び事業計画の実施,APTの業務計画案,予算の見積書,会計計算書,年次報告及び定期報告の作成等を主な任務としている。
 創立会合においては,主要機関人事,暦年制予算の採用,業務計画作成のためのガイドライン等が採択されたが,1979年12月に開催された第2回(臨時)管理委員会においては,創立会合で採択されたガイドラインに基づき,1980年度の業務計画が決定され,本格的業務活動を開始するための第一歩を踏み出した。
(2) 国際連合アジア・太平洋経済社会委員会(ESCAP)
 ESCAP(Economic and Social Commission for Asia and the Pacific)は,国連経済社会理事会(ECOSOC)の監督下にある地域経済委員会の一つで,1947年3月設立された国連アジア極東経済委員会(ECAFE)から名称が変更され(1974年9月),現在に至っているものである。ESCAPの本部はバンコクにあり,地域内各国の経済,社会開発のための協力をはじめ,これに関する調査,研究,情報収集等を行っている。現在の加盟国は,域内国30,域外国5,準加盟国8の計43か国で,我が国は1954年以来域内の加盟国として参加している。ESCAPには,九つの常設委員会があり,その一つである海運・運輸通信委員会において,域内の電気通信及び郵便の開発に関する技術及び経済関係の諸問題の討議,勧告を行い,その実施状況の検討がなされている。
(3) 政府間海事協議機関(IMCO)
ア.概   要
 IMCOは,海運に影響のあるすべての種類の事項に関する国際協力を促進することを目的として設立された国際連合の専門機関の一つである。
 海運業務の分野においても無線通信は広く利用されており,これまでに,「1974年の海上における人命の安全のための国際条約」,「1977年の漁船の安全のためのトレモリノス国際条約」,「1978年の船員の訓練,資格証明及び当直維持の基準に関する国際条約」等,無線通信に関係する条約が,IMCOの招集する国際会議において採択され,また,海上における遭難通信制度,種々の無線設備の基準等に関し,海上安全委員会等において審議が行われ,多くの決議が採択されている。
イ.組   織
 IMCOは,総会,理事会,海上安全委員会,機関が必要と認める補助機関及び事務局で構成し,無線通信に関する事項は主として補助機関である無線通信小委員会が実質的な審議を行い,その結果について海上安全委員会の承認を求めることとなっている(第2-8-8図参照)。
ウ.活   動
 1979年度において,無線通信が関係するものとしては,次の活動が行われた。
(ア) 無線通信小委員会
 海上の安全に関する事項のうち,無線通信の分野に係る諸問題について検討を行い,その結果を海上安全委員会に報告することを任務とする無線通信小委員会の第21会期が,1980年1月26日から2月1日までロンドンにおいて開催された。
 この会期では,[1]海上における遭難及び安全のための通信に関する将来の全世界的制度の検討が始められた。[2]船舶向け航行警報放送について国際的な調整が行われた。[3]EPIRB(非常用位置指示無線標識)の運用要件,ディジタル選択呼出方式,救命艇及びいかだ用無線設備の要件等については,今後も審議を継続することとなった。
(イ) 1974年の海上における人命の安全のための国際条約の改正に関する作業部会
 1974年の海上における人命の安全のための国際条約は,1980年5月25日発効したが,これに先立って,IMCOは,この条約の改正について検討を始めた。
 この作業部会は,IMCOが,これまでに検討してきた条約の改正案及び条約の改正に関係する決議を統一のとれた条約の規則案として編集することを目的として,1980年2月4日から8日までロンドンにおいて開催された。
 審議は,事務局が作成した改正案に基づいて行われたが,このうち,無線通信に関係のある主な事項は,[1]旅客船及び総トン数300トン以上の貨物船にVHF無線電話局の設置を義務付けること。[2]無線電信局に無線電話の送受信設備の備え付けを義務付けること。[3]無線電話の送信機の最小通常通達距離を原則として150海里に改めることなどである。
(4) 国際民間航空機関(ICAO)
ア.概   要
 ICAOは,国際民間航空の安全かつ秩序ある発達及び国際航空運送業務の健全で,経済的な運営を図ることを目的として設立された国際連合の専門機関の一つである。
 航空の分野においても,通信あるいは航行援助に各種の電波が駆使されており,ICAOの主要な任務には,国際航空通信の要件,無線通信及び無線航法施設の技術基準,国際航空業務に分配された周波数の使用等について,国際的な統一基準を設定することがある。これらの具体的な内容は,ICAOの標準及び勧告方式として国際民間航空条約の付属書に規定されている。また,対外的には,ITU等の活動における国際民間航空に影響のある問題についての研究等に参画することも大きな任務の一つとなっている。
 今日,この分野における電気通信の課題としては,電子技術を十分に活用しての通信の自動化の促進,航行援助施設の性能の向上及び新技術の研究開発,宇宙通信技術の導入等が挙げられる。
イ.組   織
 ICAOの組織は,総会,理事会,事務局等のほか,それぞれの分野における専門的な活動を行う各種委員会や地域航空会議等の補助機関により構成されており,国際航空通信に関する事項は,主として航空委員会及びその下部機関である通信部会等で審議され,その結果を理事会に勧告,助言することになっている(第2-8-9図参照)。
ウ.活   動
 1979年12月10日のICAO理事会において,国際民間航空条約第10付属書(航空通信に関する国際標準及び勧告方式)の改正が行われた。
 主な改正内容は,[1]1978年の航空移動(R)業務に関する世界無線通信主管庁会議の結果に基づき,SSB・HF無線電話通信装置の技術規定が改正されたこと。[2]自動データ交換に関する技術規定を最近の技術の進歩に合わせて改正したこと。[3]現在の国際標準に適合するILS(計器着陸装置)の有効期限を10年間延長して,1995年までとしたこと。[4]MLS(マイクロ波着陸装置)の国際標準等を策定中であることを明らかにしたこと。[5]航空固定電気通信網及び運航管理通信の定義が改正されたことなどである。
 なお,これらの改正は1980年11月27日から適用される。
(5) 国際連合宇宙空間平和利用委員会
 国際連合宇宙空間平和利用委員会は,国際連合総会の下に宇宙空間の平和利用に関する問題を検討することを目的として設置された機関であり,その下部機関として法律小委員会及び科学技術小委員会を設けて,付託された問題についてそれぞれ専門的に検討を行っている。
 同委員会は,1979年6月18日から7月3日まで第22会期会合を開催し,法律小委員会(第18会期=1979年)及び科学技術小委員会(第16会期=1979年)の作業状況を審査した。
 法律小委員会は,宇宙空間の平和利用に関する法律面の検討を行っているが,1979年3月12日から4月6日まで第18会期会合を開催し,[1]月協定案,[2]衛星による直接テレビジョン放送を規律する原則案,[3]衛星による地球の遠隔探査(リモートセンシング)の法的側面,及び[4]宇宙の定義,について検討を行った。
 このうち,[1]については,前回までに作成された文案が再検討された。また,[2]については,前回に引き続き未合意の4項目(「国家間の協議及び協定」,「番組内容」,「不法な許されざる放送」及び「前文」)の文案が審議されたが,いずれの項目も合意に至らなかったのみならず,これらのほかの項目全体についても見直しが行われ,その結果として,1978年の前会期までに暫定的に一応の合意が成立していた多くの項目が再び次会期以降における審議の対象とされることとなった。
 同委員会は,法律小委員会のこれらの活動を是としたが,月協定案については,同小委員会の作業に基づく文案を審議し,一部修正の上最終案として第34回国連総会へ採択のために提出することとし,また,衛星による直接テレビジョン放送を規律する原則案については,同小委員会に対して次会期に引き続き審議するよう勧告することとした。
 1968年にウィーンにおいて国連宇宙会議が開催されて以来10年余の間に宇宙開発は著しく進展したが,その開発の実績を評価し将来を展望するため,第2回国連宇宙会議の開催が計画されている。同委員会は,国連総会決議33/16(1978年)により,この会議のための準備委員会に指定され,かつ,科学技術小委員会が準備委員会の諮問委員会に指定されたことから,この会議の開催の準備を同小委員会の作業に基づいて進めてきたところである。今会期においては,開催期(1982年の後半とするとしている),議題(関係の各種の個別会議では成果を期待し得ないような世界的な広範な問題を取り扱うとしている)等について暫定案が作成されたが,開催場所については,次会期における審議にゆだねられることとなった。
 科学技術小委員会は,1980年1月28日から2月13日まで第17会期会合を開催した。同小委員会は,宇宙に関する科学技術面での国際協力等の審議を行っているが,リモートセンシング,宇宙空間における原子力利用,国連宇宙応用計画,国連宇宙会議の開催,静止軌道の技術的特性等に関する事項を前会期に引き続き検討した。これらの活動は,宇宙空間平和利用委員会第23会期(1980年)において審議されることとなっている。
(6) 経済協力開発機構(OECD)
 OECDは,1961年に欧州経済協力機構(OEEC)を発展的に改組して発足した機構で,我が国は1964年に加盟しており,1980年3月現在の加盟国は24か国である。OECDの三大目的は,[1]経済成長,[2]開発援助,[3]貿易拡大であり,これを達成するため加盟国相互の情報及び経験の交換,政策の調整,共同研究等を行っている。
 OECDの組織は,上部機構としての全加盟国によって構成されOECDの意見の正式決定機関である理事会,下部機構としての理事会の補佐機関である執行委員会,事務局,機構の目的を達成するために必要な委員会及び作業部会等から構成されている。委員会には,OECDの三大目的に直接対応する経済政策委員会,開発援助委員会,貿易委員会をはじめとして,経済,社会,産業,科学技術等あらゆる分野にわたる各種委員会がある。
 通信政策に関する諸問題は,各国の科学技術政策の立案,実施についての意見交換等を行っている科学技術政策委員会(CSTP)の下に設置されている情報・電算機・通信政策作業部会(ICCP)で検討が行われている。ICCPは,1976年10月に,それまで情報に関する基本政策を扱っていた情報政策グループ(IPG)と電算機に関する問題を扱っていた電算機利用グループ(CUG)を統合して設立された組織である。1977年3月に第1回ICCP会合を開いて以来,越境データ流通とプライバシー保護,情報活動の経済分析,データ通信政策,発展途上国への技術情報の移転等の政策的問題について検討を行っている。
 本年度におけるICCP関係会合の主なものは次のとおりであった。
[1] 第5回ICCP会合の開催(1979.4.3〜4.5)
[2] ビデオテックス特別会合の開催(1979.6.21〜6.22)
 新しい情報インフラストラクチャーとしてのビデオテックスについて,各国における開発状況,その発展に当たっての法律的,経済的問題点についての討議等が行われ,我が国はキャプテンシステムの紹介を行った。
[3] 第6回ICCP会合の開催(1979.10.8〜10.10)
[4] マイクロエレクトロニクスの雇用と生産性に及ぼす影響特別会合の開催(1979.11.27〜11.29)
[5] 第7回ICCP会合の開催(1980.3.26〜3.28)
(7) 国際連合教育科学文化機関(UNESCO)
 ユネスコは,国際連合の専門機関の一つであり,教育,科学,文化等多様な分野で活動を行っているが,とりわけ近年はコミュニケーション問題に関心を深めている。
 マスメディア宣言は,1978年の第20回ユネスコ総会で採択されたが,その宣言案の検討の過程で1976年の第19回総会の決議に基づいて設立されたコミュニケーション問題研究国際委員会(マクブライト委員会)の報告書が,1980年2月にユネスコ事務局長に提出された。この報告書は,現代社会におけるコミュニケーション問題全般にわたって広範な分析を行った上で,情報のより自由で均衡ある国際的流通を達成するために,コミュニケーション分野の開発を促進し各国の自立を強化すること,ジャーナリストの活動に特別の配慮を払うこと,コミュニケーション分野の国際協力を促進すること,などを勧告しているが,この中では,郵便及び電気通信料金の検討,電磁波及び静止衛星軌道の公正な分配などにも言及されている。

第2-8-8図 IMCO組織図

第2-8-9図 ICAO組織図

 

 

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