昭和58年版 通信白書

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2 主な動き

 ア.「世界コミュニケーション年」事業の推進
 1983年は,国際連合が定めた「世界コミュニケーション年」(WCY)であり,政府は内閣総理大臣を本部長とする「世界コミュニケーション年推進本部」を中心に「世界コミュニケーション年国内委員会」と連携をとりつつ,世界コミュニケーション年事業を推進してきている。
 我が国の主な世界コミュニケーション年事業は,次のとおりである。・7月26日から8月7日まで,「通信メディアの明日をさぐる」のテーマの下,「コミュニケーションフェア′83」が開催された。・8月1日から5日まで,日本,中国,韓国,インド等12か国及びアジア太平洋放送開発研究所(AIBD)の代表が参加して,「放送・情報処理に関するアジア・フォーラム」が開催され,これら分野における人材の養成,アジア各国のニュース・番組の交換の促進,各国における情報資源の充実や相互利用を図るための方策等についての提言が採択された。・9月12日から14日まで,我が国を含む世界16か国及び国際電気通信連合(ITU),国際連合教育科学文化機関(UNESCO)等7国際機関から,コミュニケーション分野の権威が参加し,「世界コミュニケーション会議・東京」が開催され,今後のコミュニケーションの発展のために,日本が世界的に果たすべき役割について,会議参加者の支持を得て,[1]情報社会の目標の確立,[2]国際協力の拡充,[3]国際データベースの構築の促進,[4]アジアとの連帯と情報発信の強化を内容とする東京宣言が発表された。・9月19日から21日まで,我が国を含む世界18か国及び国際アマチュア無線連合から,アマチュア無線の代表が参加して,アマチュア無線に関して将来の発展の方策を探求することなどを目的として,「世界アマチュア無線国際会議」が開催され,幅広い討議が行われた。・9月26日から10月1日まで,アジア・太平洋電気通信共同体(APT)の18加盟国及びITU,国際電気通信衛星機構(INTELSAT)等8国際機関の代表が参加して,「アジア・太平洋電気通信東京会合」が開催され,地域における電気通信の開発政策等について幅広い討議が行われた。・10月17日,「世界コミュニケーション年中央記念式典」が開催され,各界代表等の出席の下に,コミュニケーション関係功労者表彰等が行われた。・11月7日から11日まで,環境変化の中での郵便をテーマとして,我が国を含む主要先進国7か国及び万国郵便連合の代表による「郵便国際シンポジウム」が開催された。
 イ.郵便サービスの改善
 小包郵便物及びビジネス郵便に係るサービス改善を行うため,郵便規則の一部が改正され,57年11月15日から施行された。これにより,小包郵便物については,10個以上同時に差し出された一般小包に対して20〜25%,3,000個以上同時に差し出された書籍小包に対しては最高8%の料金割引き等が実施になり,ビジネス郵便については,500グラムを超えるものは,その基本料を軽減するとともに,新たにビジネス郵便料を設け,従来書留扱いにする必要があったものを,その扱いは利用者の選択によることとなった。
 また,小包郵便物の重量による料金区分などを改正するための郵便規則の一部改正も行われ,58年9月1日から,小包料金は重量によっては従来よりも引下げられるとともに,かさ高な小包郵便物の料金割増制も廃止された。
 さらに,10月1日から,全国の幹線区間及び主要ローカル線区間において,第一種定形外郵便物の航空機搭載を実施するとともに,速達小包郵便物の航空機搭載区間をこれまでの幹線区間から主要ローカル線区間に拡大した。
 ウ.遠距離通話料の引下げ等
 通話料の遠近格差を是正するため,遠距離通話料の引下げを内容とする「公衆電気通信法の一部を改正する法律」が,58年7月21日より施行された。
 この新料金体系では,320kmを超える遠距離区間の通話料を,3分間通話した場合で一律400円と改定しており,11〜33%の引下げ幅となっている。この結果,遠近格差は,従来の1対60から1対40に是正された。
 また,電電公社は,35年以来,「電信電話設備の拡充のための暫定措置に関する法律」に基づいて,新規に電話の架設等を行う場合,加入者債券の引受けを義務づけていたが,加入電話に対する需要充足のための態勢が整ったことから,「電信電話設備の拡充のための暫定措置に関する法律を廃止する法律」が,58年3月31日に施行され,加入者債券の引受けの義務づけが廃止された。
 エ.データ通信高度化施策の推進
 電気通信技術及びコンピュータ技術の著しい発展に対応するため,57年10月23日,公衆電気通信法の一部改正により,いわゆるデータ通信の自由化が実施されたが,これに併せて臨時暫定措置として,主として中小企業者を対象とする民間企業による付加価値通信(いわゆる中小企業VAN)サービスが認められた。
 また,これらの措置により,データ通信システムのネットワーク化が一層容易となったことから,その健全な発展に資するため,同日「データ通信ネットワーク安全・信頼性基準」を告示したほか,58年2月1日から「情報通信ネットワーク登録」を開始した。
 オ.端末機器の売渡方式の試験実施
 近年の電気通信技術の進展と利用者ニーズの多様化に伴い,多彩な端末機器が出現してきているが,郵政省では端末機器問題調査研究会を開催するなど端末機器制度の在り方について検討を続けている。
 同研究会からは,57年9月に,本電話機の開放及び電電公社の端末機器の売渡方式の導入等を内容とする報告書がだされており,この研究成果等も参考にしながら,売渡方式の制度化を図るための資料収集を行い,その円滑な導入を図るため,58年7月1日から6か月間の予定で,親子電話機(ベル音量調節付電話機),ビジネスホン(6形,10形,20形),ホームテレホンDの3機種について台数を限り,その売渡しを試験的に実施しているところである。
 今後,この結果をも踏まえ,各方面の意見等も十分勘案しながら,端末機器全体の利用制度について検討を進めていくこととしている。
 力.総合テレメータシステムの実用化
 郵政省は,53年7月から,既設の加入電話回線を利用するシステムの開発のために,「総合テレメータシステム開発会議」を開催し,システムの標準方式の開発及び諸運用実験を通じて実用化に向けての検討を進めてきた。
 その結果,電電公社は,58年2月,この総合テレメータシステム開発会議の成果である標準方式を「ノーリンギング回線サービス」としてサービスの提供を開始し,その第1号として東京都水道局が工業用水を自動検針することとなった。
 キ.ICASのVENUS-Pへの統合
 国際電電は,国際間のデータ通信をより使いやすいものとするため,日本から外国のデータベースにアクセスし情報検索等を行うための国際コンピュータ・アクセスサービス(ICAS)を58年7月15日から国際標準の国際公衆データ伝送サービス(VENUS-P)へ統合した。
 この結果,ICASが提供していた伝送速度毎秒300ビットの品目及び同1,200ビットの品目の基本料(月額)は,14%及び8%引き下げられることとなった。また,通信料のうち,伝送料の課金単位が<1>CASでは伝送字数,VENUS-Pではセグメント単位となっていたものが,今回の統合により,セグメント単位に一本化された。
 ク.実用通信衛星の打上げ
 58年2月4日,我が国初の実用通信衛星「さくら2号-a」(CS-2a)が打ち上げられた。同衛星は,赤道上空3万6千km,東経132度の静止軌道に投入され,すでに東京〜小笠原間のダイヤル即時通話を実現させているほか,7月の島根県の集中豪雨による非常災害の際の通信確保やテレビ中継回線としての利用に活躍するなどの実績をあげている。また,8月6日には「さくら2号-b」(CS-2b)も打ち上げられ,CS-2体制は計画どおり整った。
 ケ.MCAシステム及びパーソナル無線の開始
(ア)MCAシステム
 陸上移動業務用無線の需要急増による周波数の不足を解消するとともにその有効利用を図るため,800〜900MHz帯の「MCA(マルチ・チャンネル・アクセス)システム」が開発された。このシステムは,複数の周波数を多数の利用者が共用するもので,自動車運送事業等の各種業務用として需要の極めて多い東京地域において57年10月25日から,また,大阪地域において12月13日からそれぞれサービスが開始されている。近く,名古屋地域においても導入される運びである。
(イ)パーソナル無線
 モータリゼーション社会に適応した簡易な連絡用としてのパーソナル無線の制度が57年12月1日から施行された。パーソナル無線は,900MHz帯の周波数80チャンネルを使った空中線電力5W以下の簡易無線局で,容易に免許が受けられるように,免許の手続も簡単で,その操作のための無線従事者の資格も不要となっている。
 また,56年5月の電波法の一部改正により,免許を受けないで無線局を開設した者に対する罰則規定が設けられ,58年1月1日から施行された。 
 パーソナル無線の導入及びこの罰則規定の設定については,これまで社会問題化していたハイパワー多チャンネルの不法市民ラジオに対する排除効果が期待されている。
 コ.有線放送関係法の一部改正有線ラジオ放送業務の運用の規正に関する法律及び有線テレビジョン放送法の一部を改正する法律が,58年6月1日公布され,12月1日から施行の運びとなった。
 改正内容は,道路管理者の道路占用の許可や電柱所有者等の使用承諾を得ずに設置されている施設によって有線ラジオ放送及び有線テレビジョン放送を行ってはならないこととしたものである。
 サ. 国際電気通信連合(ITU)全権委員会議の開催
 ITUの最高意思決定機関である全権委員会議は,前回スペインのマラガ・トレモリノス会議以降,9年ぶりに,57年9月28日から11月6日までの6週間,ケニアのナイロビにおいて開催され,157加盟国のうち日本を含む147か国が参加した。
 我が国は,会議の副議長を務めたほか,管理理事国選挙で当選し,また,我が国から国際周波数登録委員会委員が選出された。
 シ. 臨時行政調査会(臨調)最終答申及びその後の動き
 臨調は,58年3月14日,内閣総理大臣に行政全般にわたる改革方策を打ち出した最終答申を提出した。この答申の中には,郵政省内部部局のうち電気通信行政関係の組織を三局に再編成することや郵政事業の弾力的運営や機構及び要員の合理化等が盛込まれている。
 その後,政府は5月24日の閣議で「臨時行政調査会の最終答申後における行政改革の具体化方策について」(新行政改革大綱)を決定した。この中で,内部部局の再編成については,「昭和59年度予算編成過程において具体的成案を得ることとし,国家行政組織法の一部を改正する法律案及び同法の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律案の成立なまって,政令改正により措置するもの」とし,また,郵政事業については,事業運営,要員,機構の合理化措置を講ずるものとしており,さらに,電電公社の経営形態の改革問題については,「答申の趣旨に沿って,引き続き鋭意調整を行い,所要の法律案を次期通常国会に提出すべく準備を進める」こととしている。
 その後,電電公社の改革問題については,9月13日の政府・自由民主党行政改革推進本部常任幹事会において,行財政調査会長から示された「日本電信電話公社の改革について」の案を手掛りとして,政府において法律案策定のための具体的作業を進めていくとの方針が決定された。

 

 

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