昭和58年版 通信白書

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12 鉄道事業用

(1) 日本国有鉄道
 ア.現 状
(ア)日本国有鉄道の業務と通信
 日本国有鉄道(以下「国鉄」という。)では,安全迅速かつ正確に列車を運行するため,また,迅速かつ円滑な旅客サービス等の営業活動を行うために,関係者間における正確な指令伝達及び緊密な情報連絡の手段として,電気通信回線の確保は不可欠の要件となっている。
 国鉄通信回線は,これらの目的のために,全国規模において整備されており,本社-鉄道管理局(30局)間等の長距離回線はSHF無線回線,鉄道管理局相互間等の中距離回線はSHF-UHF無線回線及び有線回線,鉄道管理局-現業機関(駅・機関区・保線区等)間の近距離回線はUHF-VHF無線回線及び有線回線で構成されている。
(イ)伝送路の構成
 基本的には大容量の長距離基幹回線はSHF無線回線によって,鉄道沿線の近距離中容量回線は有線回線によって構成されるが,その伝送路の内容は次のとおりである。
 A 電話回線
(A)交換電話回線
 列車の運行,営業等に関する業務を遂行するため,組織内のいずれの機関とでも交換機を介して結ぶ通話に使用している。
(B)直通指令電話回線
 列車の運行状況を把握し,必要な指揮命令(列車指令,旅客指令,貨物指令等)を行う際の通話等を確保するため,交換電話とは別に,指令と指令を受ける者との間を直通で結び使用している。
(C)直通区間電話回線
 列車の運行状況の問合せ,応答等のため,駅相互間,電力区,通信区等の事務所相互間を直通で結び使用している。
(D)構内電話回線
 駅及び操車場構内における業務連絡,一斉情報伝達等のため駅長室を中心に改札,ホーム,貨物扱所,信号扱所等相互間を結び使用している。
 B 電信回線
(A)交換電信回線
 列車の運行,営業等に関する情報を記録通信(印刷電信及び模写電信)により確実に伝送するため,交換機を介して結び,各種業務連絡用として使用している。
(B)直通電信回線
 駅相互間等特定の区間を結ぶ電信回線であり,次のような用途に使用している。
 [1] 列車の遅延時間を駅から指令室に伝達すること。
 [2] 貨物列車の分解,組成のため,到着列車の組成内容,その後の組成予定を操車場事務室から構内関係先に一斉に伝送すること。
 [3] その他図表,文書等を伝送すること。
 C データ通信回線
 情報を処理し,又は情報を伝送するため,データ情報の入力装置と
 電子計算機を結ぶ回線であり,次のような用途に使用している。
(A)列車の座席予約用として,みどりの窓口の端末装置と国立市にある中央情報処理装置間におけるデータ伝送。
(B)新幹線における設備管理,資材管理,経理事務等の集中管理用として,新幹線総局と関係機関との間におけるデータ伝送。
(C)その他,貨物列車貨車組成用,地域間急行貨物用等のデータ伝送。
(ウ)主要な無線設備
 57年度末の無線局数は,4万5,911局で,使用している無線設備の概要は次のとおりであり,設備状況は,第2-3-25表,第2-3-26表 及び第2-3-27表のとおりである。
 A 固定業務
 本社と鉄道管理局との間及び鉄道管理局相互間を結ぶSHF多重無線回線(7GHz帯及び12GHz帯)と鉄道管理局と主要駅との間及び主要駅相互間を結ぶUHF多重無線回線(400MHz帯及び2GHz帯)とがあり,指令電話,CTC(列車集中制御装置)の制御,各種データ伝送等の回線として使用している。
 B 移動業務
(A)新幹線用列車無線(400MHz帯)
 新幹線列車の運転に必要な運転指令,旅客営業に関する旅客指令,業務通信,公衆通信を行うため,指令所と乗務員,乗務員と駅等の関係機関,乗客と一般加入電話との間を結び使用するものであり,新幹線の運行にとって必要不可欠のものとなっている。この新幹線用列車無線の通信方式は,東海道・山陽新幹線が空間波方式を,また,東北・上越新幹線はLCX(漏えい同軸ケーブル)方式を採用し,より安定した高品質の通信回線を設定しており,特にLCX方式は,データ伝送に適していることから列車の運行,管理に必要なデータの伝送を行っている。
(B)乗務員無線(400MHz帯)
 列車の運転,保安等に関する情報連絡のため,運転士と車掌との間及び乗務員と駅との間の通信に使用するものである。
(C)構内無線(400MHz帯)
 操車場等において,貨物列車の貨車の分解,編成を行う際,構内作業員相互間の業務連絡に使用するものである。
(D)自動車無線(150MHz帯)
 鉄道に関する事故,災害等の際,その現場から関係機関への情報連絡に使用し,通常は公安業務,保線作業等の連絡用として使用するものであり,交換電話にも接続することができる。
(E)防護無線(150MHz帯)
 線路等に異常が発生した場合に,車上,踏切又は携帯用の装置から電波を発射し,対向,続行列車を停止させるために使用するものであり,新幹線の全線,常磐線の一部で使用している。
(F)その他
 上記のほか無線設備としては,船舶無線,在来線用列車無線,公安無線,作業連絡用無線,レーダースピードメータ,列車接近警報用無線等がある。
 イ.動 向
 国鉄が安全で円滑な輸送業務を遂行する上で,電気通信の果たす役割は大きく,特に最近における列車ダイヤの過密化,列車の高速化に伴い,列車集中制御,電力系統の集中管理等,電子計算機による情報処理及びこれに基づく制御の自動化等が逐次進行しているが,今後はデータ通信の需要が増大し,通信回線に期待が高まるとともに,その信頼度の向上が要求され,無線系の伝送路は増大する傾向にある。
 最近における無線関係の主な動きは,次のとおりである。
(ア)在来線用列車無線
 山手線,京浜東北線,赤羽線においては,安全な輸送の確保と輸送力の増強を図るためATC(列車自動制御)化工事を行っており,これに併せて必要になる列車無線に係る基地及び陸上移動局について,免許を付与している。
 この列車無線は,各指令と乗務員間において直接指示連絡を随時行うことを目的とし,多チャンネルを使用し,列車を個別に呼び出し,常時同時通話を行うことができるものである。
 このATC関連方式は,56年度に山手線と京浜東北線の一部で運用を開始したが,残りの区間においても整備を計画している。
(イ)青梅線列車無線実験
 国鉄では,輸送管理面,運転保安面及び列車運転業務の近代化を目的とした全国列車無線整備計画の一環として,東京・青梅線において,通話機能,列車防護機能,データ伝送機能を有した新しい方式の在来線列車無線装置の実験を実施中である。
(ウ)衛星通信システム
 国鉄の伝送路が大規模地震等の災害により被害を受けた場合の通信回線の確保等のため,実験用中容量静止通信衛星(CS)を介し,電話,静止画像,ファクシミリ等の伝送に関する各種の実験を実施してきた。
 58年2月4日打上げられた我が国初の実用通信衛星CS-2aを利用し,[1]新幹線地震検知システム,[2]非常災害時における地上回線バックアップ回線,[3]災害・事故現場との間の電話及び画像伝送等の回線を構成することとし,今後増大が予想される高速データ及び画像伝送の分野への有効利用を図ることとしている。
(2)民営鉄道
 大都市を起点とした鉄道路線を有する民営鉄道では,増加する輸送需要に対処するため,列車の増発,車両編成増等を行っており,列車の安全運行の確保のために無線通信が重要な役割を果たしている。
 無線通信の利用形態は,列車の運転指令用,事故発生時における運輸指令所と駅及び列車乗務員間,近接列車相互間の緊急連絡用,踏切事故発生時における二重衝突等の事故防止のための警報用,操車場内での車両の入換編成作業用等であり,その主なものは,次のとおりである。
 [1] 運輸指令,電力指令,一般業務用(指令所⇔駅,変電所等)・・・・・・2GHz帯,7GHz帯,12GHz帯(固定通信系)
 [2] 列車無線(指令所⇔駅)・・・・・・60MHz帯,150MHz帯,400MHz帯(固定通信系)
 [3] 列車無線(指令所・駅⇔列車)・・・長波帯,150MHz帯,400MHz帯(移動通信系)
 [4] 列車接近警報用(列車相互間)・・・長波帯,26MHz帯,400MHz帯(移動通信系)
 [5] 保守・災害用,車両の入替作業用・・・・・・150MHz帯,400MHz帯(移動通信系)
 このほか,線路上あるいは踏切道上の障害物を発見した場合,近接列車に警報信号を送信するための防護警報用の無線局が踏切付近に設置される傾向にある。また,踏切道上の障害物を34GHz帯(ミリ波)の電波を利用して,検知する障害物検知用の無線局が実用化され,交通量の多い踏切道上に設置されている。これらの無線局は,今後増加するものと予測される。

第2-3-25表 無線局数

第2-3-26表 在来線移動通信系設備数(局数)

第2-3-27表 新幹線移動通信系設備数(局数)

 

 

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