昭和58年版 通信白書

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7 マイクロ波着陸装置(MLS)

 現在,航空機が空港に着陸する際,最終進入及び着陸援助施設として計器着陸装置(LS)が広く利用されているが,航空交通量の増大,空港及びその周辺の過密化に伴い,安全上,騒音対策上等種々困難な問題が生じるようになってきている。
 MLSはILSに代わり,これらの問題を抜本的に解決するものとして各国で開発が進められているもので,米国では既に一部実用化されており,スペースシャトルの着陸誘導にも利用されている。我が国においても既に実験局が4局開設され,基礎実験及び実用化実験が行われている。
 システムの概要は第2-7-8図に示したとおりであり,5GHz帯のマイクロ波を利用して薄いファンビームを左右及び上下に時分割で走査させ,これを航空機上で受信し,△Tから滑走路に対する自機の方位及び仰角を連続的に測定することにより,精度の高い着陸誘導を行おうとするものである。
 MLSには,主に次のような特徴がある。[1] 直線の進入コースが一つに限られるILSに比べて,誘導覆域が滑走路の中心線の延長線上左右400,通達距離20NM(海里)と広く,同覆域内において曲線を含めて任意の進入コースが選定できるため,空港周辺空域の有効利用による安全性の確保,人口密集地域の上空通過回避による騒音公害防止,航空燃料の節約等が図れること。[2] 所要の運用要件を満たすために広大な平坦地を必要とするILSに比較して狭あいな空港においても十分な精度の着陸誘導が期待できること。[3] 同時に多数の航空機に対してサーピスが可能となるほか,将来,全自動着陸への発展が期待できること。[4] 高角度進入誘導が可能であることから将来発展が予想されるSTOL機,ヘリコプター等にもサービスが可能であること。
 MLSは実用段階に入っていることかち国際的な標準化作業が国際民間航空機関(ICAO)で行われており,方位誘導装置及び高低誘導装置については標準及び勧告方式が規定されたほか,精密距離測定装置(DME/P)についても標準及び勧告方式の案が作成されている。また1995年を目途としたILSからMLSへの移行計画が1981年に開催された通信部会会議で勧告されている。

第2-7-8図 MLSの概念図及び角度測定原理説明図

 

 

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