昭和58年版 通信白書

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第7章 技術及びシステムの研究開発

 第1節 概  況

 近年,社会経済の進展とともに情報の果たす役割が飛躍的に高まってきており,情報流通の主要な担い手である電気通信の役割はますます重要なものとなってきている。我が国の電気通信は,電子通信技術の急速な進歩に伴い高度な発展を遂げており,今日では,世界のトップレベルに達しているが,更に利便性を求める国民の二ーズは強く,これにこたえるため新しい技術やシステムの研究開発が積極的に進められている。
 まず,電気通信,情報の高速処理を支える基礎技術として大規模集積回路の開発が進められており,コンピュータ,通信機器等電気通信全般にわたる各種装置の小型軽量化,高信頼化に大きく貢献することが期待されている。また,より高速かつ低消費電力のジョセフソン素子,薄膜磁性体の三元合金薄膜を用いた光磁気ディスク等の研究開発が進められており,さらに,人間の音声や文字を用いてコンピュータ等への入出力を可能とするためのパターン情報処理の研究が進められている。
 広範な先端的技術を結集することによって目的が達成される宇宙通信分野では,昭和58年2月及び8月に打ち上げられた「さくら2号-a」及び「さくら2号-b」により初めて実用に供される通信衛星が実現し,多様な利用目的に応じた宇宙開発が展開されつつある。衛星通信の研究については,衛星の管制技術,衛星の最適軌道配置等の研究開発が行われている。
 電磁波有効利用技術の分野では限られた資源である周波数の開発と利用効率向上のため,光領域を含めた40GHz以上の未利用周波数帯の実用化の研究や,既に利用されている周波数帯におけるディジタル陸上移動通信方式,スペクトラム拡散地上通信方式等の新しい通信方式,周波数共用技術のための研究が続けられている。また,50GHz帯の簡易無線局,パーソナル無線,漁業新通信システム等が実用化された。放送の分野では,多重化の研究が進められた結果,テレビジョン文字多重放送についてパターン伝送方式により58年10月から放送が開始されており,さらにコード伝送方式についての研究が進められている。12GHz帯衛星テレビジョン放送は,59年2月に打ち上げられる放送衛星2号により実用化される予定であり,また災害時における緊急情報を迅速かつ正確に住民に周知する手段として,ラジオ・テレビ放送を利用した緊急警報放送システムの実用化へ向けての検討が進められている。
 次に,有線電気通信分野では,ディジタル網を形成する上での基本技術である網同期方式とディジタル同期端局装置が開発された。光ファイバケーブル伝送方式は実用化の段階を迎え,57年度には,単一光ファイバケーブルを用いた北海道から九州に至る日本縦貫の400Mb/sのディジタル伝送路の建設が開始された6このほかオフィスにおける情報通信システムについて利用面から見た技術的,制度的検討が進められている。
 本章では,このような電気通信に関する技術及びシステムの研究開発について,我が国の関係研究機関等において進められている主なものを以下に述べることとする。
 これらの研究開発を行っている我が国の代表的な機関としては,次のものがある。
 郵政省の附属機関として電波研究所があり,その規模としては研究者257名(57年度末現在。以下同じ。),57年度予算は約44億円である。電電公社には,研究開発本部のほか,武蔵野,横須賀,茨城及び今年度に開設された厚木の各研究所があり研究者総数2,900名,57年度予算約859億円となっている。NHKには,総合技術研究所及び放送科学基礎研究所があり,両所合わせて研究者345名,57年度予算約49億円である。国際電電研究所は,研究者182名,57年度研究費約77億円である。
 一方,研究機関には属さないが,郵政省の附属機関として電波技術審議会があり,24名の委員及び190名の専門委員によって,電波の規律に必要な技術に関する事項について調査審議が行われている。また,電気通信審議会技術部会は58年3月25日設置され,7名の委員及び12名の専門委員によって,電気通信に関する事務(電波及び放送の規律に関するものを除く。)のうち技術的事項について調査審議が行われている。

 

 

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