昭和48年版 通信白書

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5 防災と通信

 我が国は,台風,豪雪,地震,津波などの自然災害が多く,更に現代では,発火物・危険物の増加,建造物の高層化,地下街・地下鉄の発展,激増する自動車などの都市過密化が加わり,二次災害の発生の危険が充満している。このような災害の予防と対策に対し,通信は極めて重要な役割を果たし,特に,複雑高度化した都市においては,通信の整備運用のいかんが被害の規模を決定するといっても過言ではない。通信は,台風,津波をはじめ,地震予知に活用されるとともに,災害の発生した場合においても,その拡大の防止,避難誘導,被害者の救出,各種救援活動に不可欠のものとなっている。更に,多くの災害が地域的孤立化や個人の心理的孤立を招くことに対して,放送などによる情報提供が有効な役割を果たしている。このように災害に対する通信,連絡網の重要性にかんがみ,災害対策基本法に基づく防災基本計画を受けて,郵政省では「災害時における重要通信の疎通確保のため,通信施設の整備,通信の運用に関する適切な指導,協力をすること」を基本目標とし,通信施設の整備面と通信の運用面と二つの側面から積極的に取り組んできている。
 通信施設の整備,強化については,公衆通信系(電電公社及び国際電電の通信施設,有線放送電話)の確保に万全を期し,また,放送局についても施設の強化,予備機の配備など設備の二重化,電源の確保を図ってきている。 更に,防災行政用無線施設,気象機関,水防機関,消防機関,警察機関,交通機関など災害時に重要な役割を果たす機関についても,通信施設の整備を促進し,必要な電波の確保に努力してきている。
 このような通信施設の整備とともに,公衆通信施設,各種通信施設,更には,放送など報道用通信の相互間の連けい体制が,災害時には重要であり,通信の運用面での配慮が不可欠となる。このため,郵政省をはじめ警察庁,国鉄,電電公社,NHK,全国漁業無線協会,日本アマチュア連盟,全国消防長会,日本赤十字社,電力会社,新聞社等により非常無線通信協議会が設けられ,関係者間において非常通信疎通のための秩序ある組織を全国ネットとして確立して,各種通信施設の効果的運用を図り,あらかじめ非常事態に備えている。その結果,47年度末で全国の無線局の約40%に当たる約35万局が協議会に属している。
 このように通信,連絡網の整備が進められてきているが,近時,都市の発展により震災を中心とした大都市災害に対しては,抜本的な対策が必要となっている。災害時における情報の量,内容,流通傾向などを想定し,各通信施設を一つのシステムとして再検討を行うとともに,各種センサーの開発を通じてテレメータシステム,電子計算機処理によって災害情報の大量,迅速処理を図り,更に,地下街,高層ビル,高架道路などの環境下の防災システム,避難誘導システム,避難地域への情報提供システムなど開発を急がれている部分が多い。

 

 

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