昭和48年版 通信白書

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2 民間の情報通信事業

(1) 情報通信サービスとシステムの他人使用
 情報通信サービスにおけるシステムの基本パターンを図示すれば,第3-4-20図のとおりである。
 サービス提供企業(計算センター)に設置された電子計算機と顧客方に設置された端末機との間は,所要規格の電気通信回線によって接続される。この種のシステムにより,顧客に情報通信サービスを提供することは,従来,電気通信設備の他人使用(設備の設置者がその設備を自己以外の者に使用させること。)として厳しく制限されていたが,公衆電気通信法の改正によりその制限が緩和された。他人使用システム(私設システムを除く。以下同じ。)の推移は第3-4-21表のとおりである。
 また,他人使用システムの主計算機の国産機・外国機別の利用状況は,第3-4-22表のとおりであり,47年度末で71.9%が外国機を利用しており,外国機の利用率が極めて高い状況にある。
 これらのシステムにおいては,いずれもデータ通信システムの設置者がそのシステムを他の者に利用させるという関係にあるが,このうち業として行われるものを商用サービス・システムとしてとらえることができる。
(2) 商用サービス・システム
 このシステムの設置者は,電子計算機メーカー及びその系列企業を含む計算センターが中心になっている。
 これらのサービス・システムは,そのサービス内容により,[1]特定分野,特定業務処理のために設計,提供されている各種サービス・システムと[2]あらかじめ,各種分野にわたる多数のアプリケーション・プログラム・ライブラリーを備え,これらを用いた業務の処理その他各般の業務処理のため,コンピューターリソースを提供している汎用サービス・システムとに区分することができるが,ここでは汎用サービス・システムについて記述することとする。
 電子計算機の経済的,技術的効率性の増大を指向するコンピュータ・ユーティリティとしてのタイムシェアリング・システムは,我が国においては,従来,大学や一般企業における企業内TSSとして先行していたが,いわゆる回線開放の行われた46年ごろから電子計算機メーカー系その他一部企業による商用タイムシェアリング・サービス提供への動向がみられ,47年に入るとともに商用サービスとしての正式営業活動が開始されている。
ア.システム概要
[1]センター設備・・・・東京周辺の顧客を中心に商用タイムシェアリング・サービスの提供が行われているが,サービス地域の拡大,顧客の増大の方向に沿い,一部においては拡大地域の中心に集線装置を設置し,顧客の端末機をこれに収容するとともにセンター設備と集線装置との間を高速回線により接続して,システム利用の効率化を図る方向にある。端末機との間は,現在,特定通信回線により接続されているが,今後,公衆通信回線の利用が見込まれ,特定通信回線,公衆通信回線及び集線装置の組合せによる効率的システム化への進展が推測される。
[2]処理方式・・・・・・タイムシェアリングの最も代表的形態である会話型処理方式と,リモート・バッチ処理方式の2方式に大別されるが,各々の処理方式専用のものと双方の処理方式の選択が可能なものがある。
イ.アプリケーション・プログラム等
 この種サービス・システムにおいては,利用者が自らプログラムを作成し実行できるほか,サービス提供者によって,あらかじめ各種の業務処理のためのアプリケーション・プログラムが備ええられている。これらは,一般数学,統計・予測,技術工学(建築,土木,電気,電力・機械,数値制御,物理,化学,原子力等),財務・金融,経営学(数理計画,OR,シミュレーション,日程計画等),その他ファイル・マネージメント,データ・ベース,検索用プログラム等を含め,多くの分野にわたっている。また,その利用言語も会話型,バッチ型,問題向言語を含め多様であるが,FORTRAN,BASIC,COBOL,ALGOL,PL/1などが共通的利用言語としてあげられる。
ウ.料金体系
 料金体系は,各サービス提供企業がそのシステムの設置及び運営コストをどのように配分し,回収するかという高度の経営判断に基づくものであり,各社とも種々の料金体系をとっているが,各社の商用タイムシェアリング・サービス料金体系の最大公約数的な骨子は第3-4-23表の示すとおりである。
 これらの料金は,大別すれば[1]初期経費,[2]月間固定経費,[3]月間変動経備に分けられる。初期経費は,サービスの利用者がその利用開始時に必要とする経費であり,電電公社への支払いに充てられるデータ通信回線の設備料金等のほか,サービス提供企業の規定料金として加入料金等がある。加入料金は,通常,システムへの顧客ナンバー等の登録,マニュアル提供,利用者教育等の経費とされ,サービス提供企業によっては,加入料金を課さないものもあるが,この場合においても,調整費,手数料等の名称による諸経費が課されている。また,月間固定経費は通常,端末機のレンタル料金,月間最低料金及び電電公社への支払経費であるデータ通信回線等の使用料からなるが,月間最低料金については,月間最低料金を最低水準としてこれに利用に伴う料金が上積みされる場合と,一定量までの利用は月間最低料金によってカバーされる場合の二つの方式がある。
 月間変動経費は,サービス提供企業によって多様である。その基本は,センター設備を中心とするシステム・コストの配分にあり,おおむね回線接続料,CPUタイム料金,ファイル使用料金からなるが,特にCPUタイムを中心とする料金の算定は,その構成要素を含め相当に複雑なものがある。
 以上のように,現在,これら商用サービスは,ようやくその発展の緒についたところであり,その顧客なども,大勢として必ずしも多数とはいえないのが実情であり,公衆通信回線の導入,集線装置等の利用によるシステムの高度化,効率化,サービス地域の拡大等,そのサービスとしての本格化は今後に待つところが多い。

第3-4-20図 情報通信サービスのシステムの基本構成図

第3-4-21表 他人使用システムの推移

第3-4-22表 他人使用システムにおける主計算機の国産機・外国機別利用状況

第3-4-23表 商用タイムシェアリング・サービスの料金体系

 

 

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