平成19年版 情報通信白書

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第1章 ユビキタスエコノミーの進展とグローバル展開

(2)情報化投資による経済成長と労働生産性向上

ア 日米の情報化投資とGDPの推移
 日本と米国の1990年(平成2年)から2005年(平成17年)までの情報化投資の推移を比較すると、日本では約1.9倍に増加しているのに対して、米国では約6.2倍に増加しており、増加率は日本の3倍以上となっている。同期間中のGDPの推移を比較すると、日本は1.2倍の伸びにとどまっているのに対し、米国は日本を上回る約1.5倍の伸びとなっている(図表1-1-14)。
 
図表1-1-14 日米の情報化投資額及びGDPの推移
図表1-1-14 日米の情報化投資額及びGDPの推移
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 このことは、情報化のためのおう盛な投資需要が、当該期間中のGDP成長をけん引してきたことを示唆するものと考えられ、また、1990年代後半以降の米国経済の繁栄は企業の活発な情報化投資に支えられていたとする見方と整合的である。

イ 情報通信資本ストックの深化と経済成長
 我が国の経済成長に対する情報通信資本ストックの寄与を見ると平成2年から平成7年の間には、経済成長率1.51%に対して寄与度0.18%、平成7年から平成12年の間には、同0.93%に対して寄与度0.46%、平成12年から平成17年の間には、同1.25%に対して寄与度は0.20%と、一貫してプラスに寄与している。一方、労働投入は平成2年以降、−0.42%、−0.30%、 −0.26%と、経済成長に対して続けてマイナスに寄与していることが確認される13(図表1-1-15)。
 
図表1-1-15 経済成長に対する情報通信資本ストックの寄与
図表1-1-15 経済成長に対する情報通信資本ストックの寄与
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 資本ストックの増大は1990年代以降の日本の経済成長のけん引役となっているが、その中でも情報通信資本ストックの果たした役割は小さくない。今後についても、企業の積極的な情報化投資による情報通信資本ストックの深化が、我が国の経済成長にプラスの影響をもたらすことが期待される。

ウ 日米のTFP成長と労働生産性向上
 労働生産性に対するTFPの寄与について、日本と米国を比較してみる(図表1-1-16、1-1-17)。米国の労働生産性は、1990年(平成2年)から1995年(平成7年)の5年間では1.6%の成長率であったが、2000年(平成12年)から2005年(平成17年)の5年間では3.2%まで伸びており、1990年(平成2年)以降、労働生産性成長率は一貫して伸びている。2000年(平成12年)から2005年(平成17年)の5年間の労働生産性成長に対する寄与度は、情報通信資本を除く一般資本ストックが0.4%、情報通信資本ストックが0.6%であるのに対し、TFP成長の寄与は2.2%と高い値を示している。
 
図表1-1-16 労働生産性成長に対するTFP成長の寄与(日本)
図表1-1-16 労働生産性成長に対するTFP成長の寄与(日本)
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図表1-1-17 労働生産性成長に対するTFP成長の寄与(米国)
図表1-1-17 労働生産性成長に対するTFP成長の寄与(米国)
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 これに対して、日本では、1990年(平成2年)以降、労働生産性成長率はほぼ横ばいとなっており、直近の5年間における成長率は2.22%となっている。労働生産性成長に対する寄与度は、一般資本ストックが1.06%、情報通信資本ストックが0.16%、TFP成長が1.00%となっている。日本の労働生産性の向上は、米国と比べ、TFP成長よりも、資本ストックに依存していることになる。
 このことから直ちに情報化投資と経済成長の関係を論じることはできないが、1990年代以降の日本と米国のマクロ経済のパフォーマンスは、情報通信資本の量やその利用により実現するイノベーションに少なからず影響を受けていると考えられる。情報化投資及び情報通信資本が経済の供給能力の向上に貢献するためには、それを活用した社会構造のイノベーションが伴うことが必要であることが指摘されるが、上記結果は、我が国では、情報化投資及び情報通信資本の蓄積は着実に拡大しているものの、これを有効に活用することによるイノベーションが米国に比べて遅れていたことを示唆している。また、このことが米国と比較した場合に労働生産性の向上の遅れの要因となっている可能性が考えられる。


13 資本ストック、労働はいずれも民間部門。その他は残差として推計されており、公的部門の寄与、循環的要因、技術進歩、外部効果、測定誤差等が含まれる

 第1節 情報通信と経済成長

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