平成19年版 情報通信白書

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第3章 情報通信政策の動向

(2)国際機関及び多国間関係(アジア・太平洋地域関係を除く)における国際政策の展開

ア 国際電気通信連合(ITU)活動への参加
 電気通信に関する国連の専門機関である国際電気通信連合(ITU:International Telecommunication Union)は、
[1] 無線通信部門(ITU-R:ITU Radiocommunic-ation Sector)
[2] 電気通信標準化部門(ITU-T:ITU Tele-communication Standardization Sector)
[3] 電気通信開発部門(ITU-D:ITU Tele-communication Development Sector)
の3部門から成り、周波数の分配、電気通信技術の標準化及び開発途上国における電気通信分野の開発支援等の活動を行っている。我が国は、研究委員会の議長・副議長の輩出や人材育成の支援等、ITUの各部門の活動に積極的な貢献を行っている。
(ア)ITU-Rにおける取組
 ITU-Rでは、無線通信規則の改正、無線通信の技術・運用等の問題の研究や勧告作成及び周波数の割当・登録等を行っている。標準化に関しては、現在、第4世代移動通信システム(IMT-Advanced)、広帯域無線アクセスシステム(BWA:Broadband Wireless Access)等の標準化作業が進められている。我が国は、今会期(2003〜2007年)において、4名のSG副議長をはじめ数多くの役職を引き受けるとともに、SG会合等に多数の専門家が出席するなど積極的に貢献している。
 2007年(平成19年)10月からは、ITU-R部門全体の作業方法の見直しや勧告及び次研究会期(2008〜2011年)の研究課題の承認等を行う無線通信総会(RA-07)及び国際的な周波数分配等、電波に関する国際的秩序を規律している無線通信規則の改正等を行う世界無線通信会議(WRC-07)が開催される予定である。我が国は、RA-07及びWRC-07に向けて、各SG会合やAPTの関連会合等に対して寄与文書を提出するなど継続的に貢献し、各国の動向にも注意しつつ対処を検討していくこととしている。
(イ)ITU-Tにおける取組
 ITU-Tでは、電気通信における様々な技術課題に対する標準化作業を行っている。今会期(2005〜2008年)においては、特に、現在の電話網に代わる次世代のオールパケット型ネットワークである次世代ネットワーク(NGN:Next Generation Network)や光伝達網等の標準化の推進や、新たな課題であるホームネットワーク、ネットワーク型電子タグ(N-ID:Networked Identification)(図表3-6-1)及び動画像をIPベースで送受信する技術であるIPTVの標準化計画の検討、我が国提案の電気通信事業における情報セキュリティマネジメント規格(X.1051)の改定作業が進められているところである。これらの新たな課題は複数の既存の研究委員会(SG)にまたがるため、フォーカスグループ等により検討が進められている。
 研究委員会(SG)には、我が国から議長2名、副議長8名が任命されているほか、各課題の責任者にも多数任命されているなど、我が国も積極的に標準化活動を行っている。
 
図表3-6-1 N-ID
図表3-6-1 N-ID

(ウ)ITU-Dにおける取組
 ITU-Dでは、開発途上国における電気通信分野の開発支援を行っている。2006年(平成18年)3月には、ITU-Dの総会である世界電気通信開発会議(WTDC-06)が開催され、今後の活動指針となるドーハ宣言及び行動計画が採択された。同行動計画には、インフラ整備、技術開発、人材育成、災害時の支援等に関するプログラムが盛り込まれ、これらのプログラムに基づき、様々なプロジェクトの実施や各種ワークショップの開催といった活動が積極的に進められている。
 また、WTDC-06においては、我が国の提案により、途上国におけるITU技術標準の作成・活用能力の向上に取り組むべきことを内容とする決議が採択された。これを受け、アジア・太平洋諸国において標準化活動に従事する政府職員等を対象とする研修を総務省とITUとで共催する予定である。

イ インターガバナンスフォーラム
 WSIS第2フェーズであるチュニス会合の結果に基づき、2006年(平成18年)10月下旬から11月上旬にかけて、国際連合事務総長により、インターネットガバナンスフォーラム(IGF)の第1回会合がアテネ(ギリシャ)にて開催され、インターネットに関する様々な公共政策課題について議論が行われ、我が国からも官民の関係者が参加した。
 全体テーマは「開発のためのインターネットガバナンス」とされ、「人材育成」が横断的優先事項とされた。また、個別テーマとして、
[1] 自由な情報流通・表現の自由
[2] インターネットにおけるセキュリティ
[3] インターネットの多様性
[4] インターネットへのアクセス
がとりあげられた。
 議長総括として、第1回IGF会合は政府関係者、国際機関関係者、民間企業、市民団体等の異なる分野の参加者がオープンな場で交流する壮大な実験であり、第1回目の顔合わせとして意味があり、全般的には機能したと評価された。

ウ 主要国首脳会議(G8サミット)
 年に1回開催されるG8サミットでは、デジタル・オポチュニティの活用とデジタル・ディバイドの解消(2000年(平成12年)九州・沖縄サミット)等、毎年情報通信関連のテーマについても議論されている。2006年(平成18年)7月に開催されたサンクトペテルブルク・サミットでは、教育の共同文書においてG8沖縄憲章及びWSISに従い情報通信技術を教育でより効果的に活用するというコミットメントを再確認するとされたほか、テロ対策、海賊版対策にICT関係の記述が盛り込まれた。

エ 世界貿易機関(WTO)における新ラウンド交渉
 2001年(平成13年)11月から開始された世界貿易機関(WTO:World Trade Organization)ドーハラウンド交渉では、サービス貿易分野において最も重要な分野の一つとされている電気通信分野について、一層の自由化に向けた積極的な交渉が展開されている。我が国は、WTO加盟国の中で最も電気通信分野の自由化が進展している国の一つであることから、諸外国に対して、一律に課せられている外資規制等の措置について、撤廃・緩和の要求を行っている。同ラウンド交渉は、2006年(平成18年)夏に各国の意見対立によりいったん中断されたが、2007年(平成19年)1月末に本格的に再開されており、現在、早期妥結に向けて交渉全体が加速化している。

オ 経済協力開発機構(OECD)
 経済協力開発機構(OECD:Organization for Economic Co-operation and Development)では、情報・コンピュータ・通信政策委員会(ICCP: Committee for Information, Computer and Communications Policy)における加盟各国の意見交換を通じ、情報通信に関する政策課題及び経済・社会への影響について検討を行っている。OECDの特徴は、他の国際機関に比べ、最新の政策課題につき経済学的な観点から客観的・学術的とされる議論を行う点にある。ICCPは、通信規制政策、情報セキュリティ、プライバシー等の分野において特に先導的な役割を果たしている。また、加盟国の情報通信動向・統計をまとめたOECD通信白書(Communications Outlook)を、2年に1回発行している。

カ 世界知的所有権機関(WIPO)
 世界知的所有権機構(WIPO:World Intellectual Property Organization)は、知的財産権保護の国際的な促進(各国制度の調和等を目的とする条約の策定、技術協力を通じた途上国における保護水準の引上げ、情報化の推進等)並びに知的財産権に関する条約及び国際登録業務の管理・運営を行う国際連合の専門機関である。
 現在、WIPO/著作権及び著作隣接権に関する常設委員会(SCCR:Standing Committee on Copyright and Related Rights)では、放送機関の権利について、近年のデジタル化等に対応した既存の条約に代わる新しい保護の枠組みが必要であるとの認識の下、我が国等による論点に関する文書提案(1999年(平成11年))を契機として、現在の条約上では保護されていない放送機関の権利を保護の対象に含めた新たな条約の策定に向けた検討を開始し、これまで活発に議論してきているところである。

 第6節 国際戦略の推進

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