平成19年版 情報通信白書

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第3章 情報通信政策の動向

(2)電波利用の高度化・多様化に向けた取組

ア 移動通信システムの高度化
(ア)1.5GHz帯における第3世代携帯電話の導入等に向けた技術的条件の整備
 現在第2世代携帯電話及び自営無線に使用されている1.5GHz帯の周波数について、第3世代携帯電話用の周波数を確保するために再編を進めるとともに、無線を使用した安価なエントランス回線(基地局〜交換局間の回線)の導入により携帯電話のエリア整備等を進めるため、平成18年2月、情報通信審議会は「1.5GHz帯の周波数有効利用のための技術的条件」について審議を開始し、同審議会は、同年12月に答申を行った。
 同答申においては、以下の技術的条件が示されている。
[1] 1.5GHz帯における第3世代携帯電話(FDD方式)の技術的条件
[2] 1.5GHz帯における第3世代携帯電話用非再生方式エントランス回線(※)の技術的条件
 総務省は、上記の答申を踏まえ、平成19年4月、1.5GHz帯における第3世代携帯電話の導入等のための技術基準の策定や周波数割当計画の変更等の制度整備を行った。
※ 非再生方式エントランス回線……CDMA方式が用いられているアクセス回線(携帯電話〜基地局間の回線)の電波を周波数変換して直接中継する簡易な中継方式(非再生方式)を用いたエントランス回線のこと。
(イ)第4世代移動通信システムの研究開発及び国際標準化の推進
 IMT-2000の次の世代となる、いわゆる第4世代移動通信システム(IMT-Advanced)は、高速移動時で100Mbps、低速移動時で1Gbpsの実現を目標としており、2010年(平成22年)頃を目指して国際電気通信連合(ITU)において標準化作業が進められている。2006年(平成18年)には、ITUの無線通信部門(ITU-R)において、候補周波数、所要周波数帯域幅の推定値、周波数特定の手法等、IMTの候補周波数について検討が行われており、2007年(平成19年)に開催されるITUの世界無線通信会議(WRC-07)で使用周波数の決定に向けた議論が行われることとなっている。
 総務省では、第4世代移動通信システムについて、2010年(平成22年)頃の実現を目指して、産学官の連携の下、研究開発及び国際標準化に向けた取組を積極的に推進している。

イ UWB無線システムの制度化
 近年、オフィスや家庭内において、事務の効率化や生活の利便性向上のため、様々な機器に通信機能が搭載されつつあり、これらの機器間で無線により大容量のデータを高速に伝送できる手段の一つとして、非常に広い周波数幅にわたって電力を拡散させることにより高速通信を可能とするUWB(Ultra Wide Band)無線システムが注目されている。
 UWB無線システムは、伝送距離が10m程度以下と短いものの、伝送速度が最大数百Mbps程度と非常に高速であることから、特に、パソコン周辺機器間における「高速ファイル転送」やAV(Audio Visual)機器間における「ストリーミング伝送」(データを受信しながら同時に再生を行なう方式)等における利用において、既存の無線システムでは実現できなかった大容量データを小電力で伝送することが可能となる。
 国際的には、米国が2002年(平成14年)2月に制度化し、欧州においても導入に向けた検討が行われており、我が国でも2006年(平成18年)8月に制度化を行った。
 総務省では、平成14年9月に、情報通信審議会に「UWB(超広帯域)無線システムの技術的条件」について諮問し、同審議会は、利用環境、他の無線システムの運用形態、国内の利用者のニーズ、国際的な検討動向等を踏まえつつ検討を行い、平成18年3月に一部答申として「マイクロ波帯を用いた通信用途のUWB無線システムの技術的条件」について答申を行った。これを受けて総務省は、電波監理審議会への諮問・答申を経て、同年8月に関係省令等の改正を行っている。

ウ 433MHz帯アクティブタグシステムの制度化
 電子タグシステムは、ユビキタスネット社会における基盤的ツールとして、幅広い分野での利用が期待されている。総務省では、高出力型950MHz帯パッシブタグシステム(952〜954MHz)について平成17年4月に、また、低出力型950MHz帯パッシブタグシステム(952〜955MHz)について平成18年1月に、それぞれ制度化している。
 さらに、近年、円滑で効率的な国際物流を実現するため、国際的に、433MHz帯アクティブタグシステムの制度整備・実用化が進められており、我が国においても、同システムの導入による高度なコンテナ情報管理、作業の迅速化等が期待されていることから、総務省は、平成18年7月に、情報通信審議会から、「小電力の無線システムの高度化に必要な技術的条件」(平成14年9月諮問)の一部答申として、「433MHz帯アクティブタグシステムの技術的条件」について答申を受け、電波監理審議会への諮問・答申を経て、同年12月に関係省令の改正等を行っている。

エ 無線アクセスシステムの高度化
 無線LAN等の無線アクセスシステムは、オフィスや家庭内における配線を無線化するものや、喫茶店や駅等に無線スポットとして設置されるもの(ノートパソコン等によりインターネットへのアクセスが可能)、また、オフィスや家庭と電気通信事業者等の間を直接無線で接続するもの等があり、近年、急速に需要が増大している。現在、2.4GHz帯、5GHz帯、18GHz帯、22GHz帯、26GHz帯、38GHz帯等の周波数帯が使用され、数Mbpsから百数十Mbps程度の大容量通信が可能となっている(図表3-2-15)。
 
図表3-2-15 無線アクセスシステムの概要
図表3-2-15 無線アクセスシステムの概要

 特に、無線LANに使用できる周波数については、2003年(平成15年)7月、世界無線通信会議(WRC-03)において、5GHz帯の周波数が新たに世界的に分配されたことを受けて、総務省では、平成12年に制度化済みの5.2GHz帯(5.15〜5.25GHz)に加え、平成17年5月に5.3GHz帯(5.25〜5.35GHz)を、平成19年1月に5.6GHz帯(5.47〜5.725GHz)を制度化した。4.9〜5.0GHz及び5.03〜5.091GHzを利用する5GHz帯無線アクセスシステムについては、それぞれ平成17年12月及び同年5月に、手続が簡易な無線局登録制の対象としている。
 また、総務省では、平成19年5月からの100Mbps以上の通信が可能な高速無線LANの導入に向け、制度化を行ったところである。
 さらに、総務省では、世界最先端のワイヤレスブロードバンド環境の構築に資するべく、超高速無線LANの実現に向けた研究開発を平成16年度から行っている。

オ ITS(高度道路交通システム)の推進
 ITS(Intelligent Transport Systems:高度道路交通システム)は、最先端の情報通信技術を活用することにより、渋滞、交通事故、環境悪化等の道路交通問題の解決を図るためのシステムであり、社会的基盤性が高く、国民への影響が極めて大きいものである。ITSでは電波が様々な形で使用されているが、大別して通信型、放送型及びセンサー型がある。
 我が国のITSは世界的にも例のないレベルで普及・高度化しており、累計台数では、カーナビゲーションが約2,430万台(平成18年9月時点)、VICS(Vehicle Information and Communication System:道路交通情報通信システム)が約1,737万台(平成18年12月時点)、ETC(Electronic Toll Collection System:ノンストップ自動料金支払いシステム)が約1,684万台(平成19年3月時点)となっている。
 また、交通事故死傷者数を減少させ、安全な道路交通社会を早期に実現させることが大きな社会目標となっていることから「IT新改革戦略」(IT戦略本部:平成18年1月)及び「重点計画-2006」(同:平成18年7月)において、世界一安全な道路交通社会をITSによって実現することが重点施策として取り上げられ、安全運転支援システムの実用化による交通事故、死傷者件数の削減が目標とされている。これを受けて、総務省では、平成18年4月から開催されている「ITS推進協議会」(事務局:内閣官房)において、内閣官房、警察庁、経済産業省、国土交通省、日本経団連、ITS Japanとともに、平成20年の特定地域の公道における安全運転支援システムの大規模実証実験の実現に向けて検討を行っているところである。総務省は平成19年度から、安全運転を支援するような路車間通信や車車間通信システムにおいて、様々な電波メディアの有効性を実環境で検証するため、安全運転を支援する情報通信システムの実用化に向けた実証実験を行う予定である。
 また、総務省は、「ITS情報通信システム推進会議」(事務局:社団法人電波産業会)等の民間関係団体や関係省庁等と連携して、誰もが快適に移動できる安全・安心な道路交通社会の実現を目指して、研究開発、標準化等の施策に取り組んでいる。
 研究開発については、平成17年度から3箇年計画で、車車間通信技術や路車間通信技術、地上デジタル放送のITS応用技術等により、車・道路・人を有機的に結合させ、道路交通分野においてもユビキタスネットワーク環境を享受できるユビキタスITSの実現をめざし、「ユビキタスITSの研究開発」を進めている(図表3-2-16)。
 
図表3-2-16 ユビキタスITSの研究開発
図表3-2-16 ユビキタスITSの研究開発

 標準化については、我が国のITS関連技術をITUの無線通信部門(ITU-R)へ提案するなど国際標準化に取り組んでおり、2006年(平成18年)9月の会合において、ミリ波帯を用いた車車間通信、路車間通信等の技術上・運用上の特性について日本提案が盛り込まれた暫定新勧告案が作成されている。

 第2節 情報通信政策の展開

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