平成19年版 情報通信白書

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第3章 情報通信政策の動向

(1)コンテンツの流通の促進等に関する取組

ア IPTVに関する取組
 放送番組その他の映像コンテンツを、IPネットワークにより地上デジタル放送と同等の品質でテレビ受信機等へ配信する、いわゆるIPTVサービスの実現に向け、総務省では、平成18年10月に設立された、学識経験者、放送事業者、通信事業者及び家電メーカー等が参加する民間協議会である「IPTVフォーラム」と連携・協力しながら、送出側・伝送路・視聴端末についての実証実験を実施し、利用者の利便性等に配意しつつ、必要な技術要件や運用の検証に取り組んでいる。

イ コンテンツの国際競争力の強化
 コンテンツの積極的な海外展開による文化の発信は、自国ブランドの確立、強化等の面に加え、新たな海外市場の獲得による新産業の育成と雇用の拡大など、経済的な観点からも重要な課題となっている。「ICT国際競争力懇談会」においては、放送番組を中心とするコンテンツの国際競争力について、
[1] 海外展開に取り組む事業主体のインセンティブ
[2] 海外展開の客体であるコンテンツ自体の競争力
[3] 海外販売ネットワークの開拓に係る課題
[4] 海外展開に係る人材育成 
の四つの観点から検討を行い、平成19年4月に放送コンテンツの海外展開を更に促進するための具体策を取りまとめた。
 ICT国際競争力強化プログラム(平成19年5月)においては、ソフトパワー強化プログラムを策定し、コンテンツの国際競争力の強化や海外へのコンテンツ流通ネットワーク開拓に向けた体制の整備・検討を推進している。

ウ 地域に根ざしたコンテンツの制作・流通の促進に向けた取組
 多様な地域性をいかした地域におけるコンテンツの制作・流通については、海外市場もターゲットとした新たなコンテンツの開拓という観点から、その重要性が再認識されているところである。
 北海道にある地上波放送局で、北海道の自然等の観光資源を紹介した地域情報番組を制作し、東アジア地域に向けて放送を行ったところ、番組放送後、同地域からの観光客が増加するなど、地域発信のコンテンツが有効な地域振興策の一つとなっている。また、地域における映像コンテンツに関する産・学・官連携の取組として、放送事業者や大学、クリエーター、地方公共団体等が協力して、地域に根ざしたコンテンツを創出し、国内外に流通させることで、活躍の場を確保し、人材育成を継続的に図るサイクルに向けた取組も行われているところである。
 こうした観点から、総務省としても、平成18年に各総合通信局及び沖縄総合通信事務所に「コンテンツ流通促進官」を新設し、地域におけるコンテンツの制作・流通等の更なる促進に向けた取組を推進している。また、社団法人デジタルメディア協会が主催するAMD Awardにおいては、平成16年から、地域に根ざした優れたコンテンツを表彰する「リージョナル賞」を創設し、第12回(平成19年1月)には「阿蘇インターネット放送局(WebTV‐アソ)」(熊本県阿蘇市)の取組に対して表彰を行うなど、コンテンツの流通の促進に向けた取組を行っている。

エ コンテンツ取引市場の形成に向けた取組
 デジタル化、ネットワーク化の進展に伴い、放送番組等の映像コンテンツについて、DVD等のデジタルメディアや、インターネット等のネットワークでの流通等、様々な形態の二次利用が進んでいるが、こうした二次利用に係る取引についてのルールを整備し、取引を促進することにより、コンテンツがより多くの付加価値を生むことが期待されている。   
 このような状況下においては、コンテンツの取引対象としての透明性や流動性の向上に関するルールの整備等が重要な課題となるため、総務省では、コンテンツ取引の促進及び取引市場の形成に資するべく、平成18年11月から、「コンテンツ取引市場の形成に関する検討会」を開催している。同検討会では、これら重要課題への対応の在り方について検討を行い、平成19年6月を目途に報告書を取りまとめる予定である。

オ ネットワークを利用した不正な映像コンテンツ流通防止に関する調査研究
 インターネットのブロードバンド化に伴い、YouTube等の動画投稿サイトにおける不正な映像コンテンツの流通等が拡大していることから、総務省では、平成18年度から、「ネットワークを利用した不正な映像コンテンツ流通防止に関する調査研究」として、ネットワークを利用した映像コンテンツの適正な流通促進を図るべく、不正な映像コンテンツの流通による被害の状況や対応策等についての調査を行い、官民連携による不正な映像コンテンツの流通防止対策等について検討を行っている。

カ 次世代型映像コンテンツ制作・流通支援技術の研究開発
 総務省では、デジタルシネマ(制作、配給、上映という工程すべてがデジタルデータにより行われる映画)や高臨場ライブ中継等の臨場感あふれる超高精細映像(次世代型映像コンテンツ)について、ネットワークを活用して安全かつ効率的・効果的に編集・配信等を行う技術を確立し、広く利用者が豊かな映像環境を享受できる社会の実現に資するため、平成17年度から平成19年度までの予定で、次の技術を内容とする「次世代型映像コンテンツ制作・流通支援技術の研究開発」を実施している。
 [1] ネットワーク分散協調型映像編集・制作技術
 遠隔地間で伝送遅延素材劣化のない非圧縮素材による実時間分散協調編集作業を可能とする超高精細映像制作技術
 [2] 超高速・多地点ストリーム配信技術
 次世代型コンテンツをリアルタイムかつセキュリティを確保しつつ全国規模での配信を可能とする技術
 平成18年度は、第19回東京国際映画祭の第2回digital TIFFシンポジウム(平成18年10月)において、産学の協力を得て、大容量IPネットワークにより遠隔地からの映像を合成編集したレーシングゲーム映像や弦楽演奏のカメラ映像等の超高精細映像を複数拠点へ配信する実証実験を実施した。

キ 対外流通チャンネルとしての国際放送の活用策の検討
 前述のとおり、対外情報発信力の強化、すなわち、「ソフトパワー」の強化の柱の一つとして国際放送の強化が進められており、これに当たっては、新映像国際放送におけるコンテンツの対外流通促進も念頭に置きつつ、検討を進めている。

 第4節 豊かで活力あるユビキタスネット社会の構築

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