平成19年版 情報通信白書

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第3章 情報通信政策の動向

(1)アジア・太平洋地域における国際政策の推進

ア アジア・ブロードバンド計画の推進
 総務省は、アジア地域のブロードバンド環境の整備に向けた行動計画として、平成15年3月、「e-Japan重点計画-2002」及び「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2002」に基づき、関係府省とともに「アジア・ブロードバンド計画」を策定した。同計画においては、2010年(平成22年)までに、アジアが世界の情報拠点(ハブ)になることを目指すこととされており、その後の「e-Japan戦略II」、「e-Japan重点計画-2004」、「IT政策パッケージ2005」等においても着実に推進することがうたわれている。
 これまでに、アジアの9箇国・地域との間で同計画推進に関する協力取決め等を取り交わしている。2005年(平成17年)8月には、インドと、産学官が参加する「ICTフォーラム」の第一回会合を開催し、今後も協力を推進していくことが合意された。また、日中韓3箇国の間では、ICT9分野の協力に関する取決めが作成され、これらに基づき、各種研究開発プロジェクト、人材育成施策や政策対話等を実施しているところである。
 また、我が国の官民の強力な連携の下に同計画に基づく取組を加速するために平成16年3月から、「アジア・ブロードバンド推進会議」を開催し、状況の変化等を踏まえ、今後実施又は着手すべきプロジェクトについて議論を行っている。2006年(平成18年)8月に開催された同会議において、総務省及び関係府省は、同計画の改定を行っている。
 改定後の計画は、従前の計画と比して、目標を基本的に維持しつつ、次世代ネットワークが今後のインフラとして注目されていることを反映するとともに、
[1] ブロードバンドの基盤としてのネットワークインフラ整備のための施策
[2] アプリケーション、コンテンツ、共通的基盤の整備のための施策
[3] 人材育成のための施策
[4] 横断的施策
等について新規重点項目を追加している。
 総務省及び関係府省は、今後とも、アジアにおけるブロードバンド環境の整備に向け、改定後の計画に基づいた取組を、アジア各国の政府・NPO・国際機関とも連携しつつ、積極的に行っていくこととしている。

イ 日中韓における協力・協調
 2002年(平成14年)9月、マラケシュ(モロッコ)において、日中韓3箇国の情報通信分野における協力等の促進を目的として、これら3箇国の民間企業、研究機関等も参加して、第1回の「日中韓情報通信大臣会合」が開催された。その後、第2回会合(2003年(平成15年)9月済州(韓国))、第3回会合(2004年(平成16年)7月札幌)を経て、2006年(平成18年)3月に、厦門(中国)において、第4回会合が開催された。同会合では、ASEANとの連携、情報ネットワークセキュリティ(スパム対策を含む。)、次世代IPネットワーク、4G(次世代移動通信)等のICT分野における日中韓協力について、今後一層推進していくことで一致し、3箇国の連携体制の充実・強化を図るため文書への署名が行われた。今後、情報交換だけではなく、具体的なプログラムベースによる協力を推進することを通じて、日中韓のみならずアジアにおけるICTの発展が図られることが期待される。

ウ アジア太平洋経済協力(APEC)における活動
 アジア太平洋経済協力(APEC:Asia-Pacific Economic Cooperation)は、アジア太平洋地域の持続可能な発展を目的とし、域内の全主要国・地域が参加する国際会議である。電気通信分野に関する議論は、電気通信・情報作業部会(TEL:Telecommuni-cations and Information Working Group)及び電気通信・情報産業担当大臣会合(TELMIN: Ministerial Meeting on Telecommunications and Information Industry)を中心に行われており、次世代ネットワーク時代の政策・規制の在り方の検討、デジタル・ディバイドの解消、ブロードバンドの普及、WTOへの支援、セキュリティ及び人材育成等に関する議論及び情報交換が活発に行われている。
 総務省は、自由化分科会(LSG)副議長を担当するとともに、APEC加盟国・地域間で共有すべき目標である「アジア太平洋情報通信社会(APIS)ビジョン」を策定するための議論を主導し、同ビジョンは2007年(平成19年)4月にフィリピンで開催されたAPEC TEL第35回会合において承認された。また、各種課題に関する議論への積極的な参加、我が国の情報通信政策の紹介、研究開発プロジェクトの実施及びアジア・太平洋地域の情報通信主管庁との意見交換等を通じ、APECの情報通信関連の活動に積極的に貢献している。
 2006年(平成18年)10月にニュージーランドで開催されたAPEC TEL第34回会合において、我が国が第37回会合のホスト国となることが決定された。総務省は、2008年(平成20年)3月に予定されている同会合の開催に向けて、引き続き積極的な貢献を行っていく予定である。

エ アジア・太平洋電気通信共同体(APT)
 アジア・太平洋電気通信共同体(APT:Asia-Pacific Telecommunity)は、1979年(昭和54年)に設立されたアジア・太平洋地域における電気通信専門の国際機関であり、同地域における電気通信の均衡した発展を目的として、研修やセミナーを通じた人材育成、標準化や無線通信等の地域的政策調整及び地域的な電気通信問題の解決等を行っている。
 APTでは、2005年度(平成17年度)から、我が国からの特別拠出金により、情報通信網が十分整備されていない地域にインターネット等の環境を整備するプロジェクトを支援する「デジタル・ディバイド解消のためのパイロットプロジェクト支援」を実施している。現在までフィリピン、モンゴル、パプアニューギニア及びインドネシアに対し支援した。また、2006年度(平成18年度)から、同様に我が国からの特別拠出金により、ブロードバンド化に向けた、競争環境整備に必要な人材育成等を支援する「アジア・太平洋地域におけるブロードバンド普及に向けた環境整備支援」を開始した。具体的には、同年度は、ブロードバンド普及のための政策策定等に関する中長期研修を行った。

オ 東南アジア諸国連合(ASEAN)との電気通信及びIT担当大臣会合
 2006年(平成18年)9月、(ASEAN:Associ-ation of South-East Asian Nations)10箇国の電気通信主管庁大臣が参加するASEAN電気通信及びIT担当大臣会合がブルネイで開催され、あわせてASEAN10箇国と我が国との間でも電気通信及びIT担当大臣会合が行われた。
 同会合においては、総務省総務審議官から、我が国におけるICTの現況、ネットワークの高度化の進展、今後の政策課題及びASEANとの協力・連携についてプレゼンテーションを行った。また、ASEAN域内における電気通信及びITの発展に向け、これまでの相互の取組及び協力実績を確認するとともに、今後の協力の方向性について意見交換を行った。
 ASEANは、我が国のほか中国、韓国及びインドともそれぞれ大臣会合を行い、一連の会合がすべて終了した後、議長声明を発表した。議長声明では、アジア・ブロードバンド計画の改定や今後の日本とASEANとの協力の方向性についても言及されている。

カ アジア欧州会合(ASEM)
 2006年(平成18年)11月、アジア欧州会合(ASEM:Asia-Europe Meeting)域内におけるICT分野の協力強化を目的に、「ASEM 第1回ICT閣僚会合」がハノイ(ベトナム)において開催された。同会合は、近年の情報通信技術(ICT)の著しい進展や、2003年(平成15年)と2005年(平成17年)に開催された世界情報サミット(WSIS)において、ICTの重要性と情報社会構築の必要性が改めて確認されたこと等を背景として開催された会合であり、ASEM加盟国の閣僚等が参加し、活発な意見交換等が行われた。同会合では、ASEM域内で今後取り組むべき課題をまとめた「活動リスト」を含む議長声明等が採択されるとともに、ICT分野における協力を促進するための意見交換、情報共有を継続することが確認された。

 第6節 国際戦略の推進

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