平成19年版 情報通信白書

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第1章 ユビキタスエコノミーの進展とグローバル展開

コラム SEDと有機ELディスプレイ

 SED(Surface-conduction Electron-emitter Display:表面伝導型電子放出素子ディスプレイ)は、日本企業が開発している新型ディスプレイで、技術的には、FED(Field Emission Display)と呼ばれる電界放出ディスプレイの一種である。原理的には、ブラウン管テレビと同じように、蛍光体に電子を衝突させて発光させるため、ブラウン管と同じように色再現性が高く、動画表示性能が優れているという特長を持っている。さらにブラウン管とは異なりフォーカスゆがみがなく、薄型で軽量、消費電力がブラウン管に比べて小さいという長所を備えている。
 当初は平成17年8月から試験的な量産が開始され、平成19年には本格的な量産に入る計画であったが、平成19年第4四半期からに延期されている。
 量産時期が延期になった理由は二つあるとされている。第一は競合する液晶テレビやプラズマテレビの価格対性能比が急速に向上し、画質などの性能で差別化が困難になったことである。第二は、量産技術の確立が予定より遅れたことである。しかしながら、製品の実用化に向けた技術開発は着実に進展しており(※)、十分な製造歩留りが実現できれば、競争力のある薄型テレビが誕生する可能性もある。
 一方、有機EL(Electrolumines cence)ディスプレイは、電流を流すと発光する有機化合物を電極で挟んだ自発光型のディスプレイである。従来のディスプレイと比較して、明るく鮮明、視野角が広い、液晶パネルやプラズマパネルと比べても更に薄いテレビが実現できるなどの特長を持っている。現在、量産されているのは、携帯電話のディスプレイ用やデジタルカメラのディスプレイ用など小型パネルで、大画面化と長寿命化という二つの課題がある。
 有望視されている製造プロセスは、蒸着方式とインクジェット方式であるが、蒸着方式については、生産性があまり高くなく、大型化が困難という問題点がある。一方、インクジェット方式は、インク化できる高分子材料の発光効率が低く、寿命が短いという問題を抱えている。
 ただし、有機ELディスプレイは、他の薄型パネルにない特長を持っていることから、日本国内では、家電ベンダーを中心に、カメラメーカー、事務機器メーカー、化学品メーカー等が、海外では韓国や台湾等の企業が研究開発を進めている。

※ 平成18年10月に開催されたCEATEC JAPAN 2006では、55インチで1,920×1,080ドットのSEDフルハイビジョンパネルが展示された

 第2節 情報通信と競争力

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