平成15年版 情報通信白書

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第1章 特集「日本発の新IT社会を目指して」

第1節 世界最高水準のネットワークインフラの整備

1 成長する情報通信

(1)世界最高水準のブロードバンド

2007年にブロードバンド利用人口は6,000万人、経済波及効果は18兆円

1 ブロードバンド利用人口の増加

 我が国のブロードバンドの整備と利用は、急成長を遂げ、世界最高の水準に達しつつある。ブロードバンド(FTTH、DSL、ケーブルインターネット、無線(FWA等))利用人口は、平成14年末現在で1,955万人(人口普及率(注1)は15.3%)と推計される(注2)。インターネット利用人口6,942万人中28.2%を占め、既にインターネット利用人口の4人に1人以上がブロードバンドを利用している(図表1))。

 
図表1) ブロードバンド利用人口の現状と予測

図表1) ブロードバンド利用人口の現状と予測
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 自宅のパソコンからインターネットを利用する場合にブロードバンドを利用している世帯の比率も、平成13年末の14.9%から14年末の29.6%に1年間で倍増している。ブロードバンドとISDN(常時接続)を合わせた常時接続回線は44.3%の世帯が利用している。これに対し、電話回線によるダイヤルアップは47.2%から44.9%になり、対前年比で2.3ポイント減少している(図表2))。

 
図表2) 自宅におけるパソコンからのインターネットの接続方法の推移

図表2) 自宅におけるパソコンからのインターネットの接続方法の推移
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 また、ブロードバンド契約数の推移等に基づき、将来のブロードバンド利用人口の予測(注2)を行ったところ、5年後の平成19年(2007年)には、インターネット利用人口は8,892万人(人口普及率(注1)は69.6%)となり、このうち、ブロードバンド利用人口は5,967万人(人口普及率(注1)は46.7%)に達すると予想される。インターネット利用人口の67.1%がブロードバンドを利用することとなり、インターネット利用の主流はナローバンドからブロードバンドに逆転する(図表1))。
 このようにブロードバンドが急成長を遂げた背景には、早期より進めてきたブロードバンドに関する競争政策・振興政策の結果、事業者間の競争が進み、世界で最も低廉な料金で高速サービスが実現していることがある。

2 ブロードバンドの経済効果

 ブロードバンドの普及は、我が国経済に大きなインパクトを与える。ブロードバンド利用人口の増加に伴い、利用者が使用する機器や端末の需要が増加する。また、利用者がネットショッピングを行う機会が増え、個人の電子商取引が増加することが期待される。事業者においては、ブロードバンド利用人口の増加に対応するためにシステムやネットワークが新たに構築される。また、高速データ通信が可能なブロードバンドの特性を活かした新たなビジネスの創出が期待される。
 これらのブロードバンドの普及に伴う需要の増加を、ブロードバンドに関連する1)機器・システム構築市場、2)ネットワーク市場、3)プラットフォーム市場、4)コンテンツ・アプリケーション市場及び5)個人の電子商取引(B2C)市場に分類して推計すると、ブロードバンド関連の市場規模は、平成14年の2.0兆円から平成19年(2007年)には約5.1倍の10.2兆円に増加すると見込まれる。また、ブロードバンドの普及が各産業に及ぼす生産誘発効果を推計(注3)すると、平成19年(2007年)に全産業に及ぼす経済波及効果は18.1兆円である(図表3)、4))。

 
図表3) ブロードバンドの市場規模の現状と予測

図表3) ブロードバンドの市場規模の現状と予測
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図表4) ブロードバンドの経済波及効果(平成19年(2007年)に各産業に及ぼす生産誘発額)

図表4) ブロードバンドの経済波及効果(平成19年(2007年)に各産業に及ぼす生産誘発額)
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3 ブロードバンドアクセスの現状と課題

(1)ブロードバンド契約数の推移

 我が国では、平成13年1月に策定した「e-Japan戦略」において、「少なくとも高速インターネットアクセス(接続)網に3,000万世帯、超高速インターネットアクセス網に1,000万世帯が常時接続可能な環境を整備する」ことを目標として、ブロードバンド網の整備に取り組んできた。
 その結果、平成14年10月時点において、高速インターネットアクセス網への加入可能世帯数は、DSLで約3,500万世帯、ケーブルインターネットで約2,300万世帯となっている。また、超高速インターネットアクセス網であるFTTHへの加入可能世帯数は、約1,600万世帯となっており、同戦略の目標を既に大幅に上回っている。
 ブロードバンド回線契約数も、平成14年度末で、943万契約に達し、この1年間で約2.4倍と飛躍的に拡大している(図表5))。しかしながら、加入可能世帯数に比べた実利用(契約数)の比率は、DSLで約20%、ケーブルインターネットで約9%、FTTHで約2%と低い水準にとどまっている(図表6))。

 
図表5) ブロードバンド回線契約数の推移

図表5) ブロードバンド回線契約数の推移
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図表6) ブロードバンド回線契約数(実利用)が加入可能世帯数に占める割合

図表6) ブロードバンド回線契約数(実利用)が加入可能世帯数に占める割合
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(2)DSLの現状

 従来の電話回線に専用のモデムをつけて利用する高速のインターネット接続サービスであるDSLの契約数は、平成14年度末に702万契約に達し、この1年で約3倍と著しい伸びを示している。平成13年7月以降、毎月30〜50万のペースで増加を続けブロードバンド利用の急増を牽引してきた(図表5))。
 DSLのサービス内容も、事業者間の競争により高度化している。平成14年3月以降、電話局からより離れたエリアでも利用可能なサービスが、同年8月以降には、最大12MbpsのADSLサービスが各事業者により開始された。平成15年1月には最大16Mbps以上の高速化を図った標準技術が国際電気通信連合(ITU: International Telecommunication Union)において確定されており、今後16Mbps以上のサービスが登場する見通しである。
 また、DSL回線を使った新たなサービスも展開されている。DSLをアクセス回線に利用するIP電話は、平成14年4月に開始され、格安な通信料金からその利用者が急増しており、DSLの加入増に拍車をかけている(1-1-1(2)参照)。平成15年3月には、ADSL回線を使って多チャンネル放送や見たいときに好きな映画等を視聴できるVOD(ビデオ・オン・デマンド)サービスを行うADSL放送サービスが東京23区で開始された。

(3)ケーブルインターネットの現状

 ケーブルテレビ網を利用したインターネット接続サービスであるケーブルインターネットも着実な普及を続けている。ケーブルインターネットの契約数は、平成14年度末に207万契約となり、この1年間で約1.4倍に拡大している(図表5))。ケーブルインターネットを提供する事業者は、平成14年度末現在282社となり、営利を目的とするケーブルテレビ事業者315社の約9割がインターネットサービスを兼営している。
 DSLとの競争が激しくなっている中で、最大30Mbpsの高速サービスを提供する事業者も出てきている。また、ケーブルテレビ網を利用したIP電話の普及を目指してケーブルテレビ事業者が連携する動きが見られる。平成14年8月に関東、東海、中部、関西の84のケーブルテレビ事業者は、「広域ケーブルフォン検討会」を発足し、ケーブルテレビ事業者による全国的なIP電話サービスの本格的な開始に向けた検討を行っており、平成15年4月には一部地域でIP電話サービスを開始した。

 
図表7) ブロードバンドアクセス方法と利用可能なコンテンツ

図表7) ブロードバンドアクセス方法と利用可能なコンテンツ

(4)FTTHの現状と課題

 FTTHは、DSLやケーブルインターネット以上に高速な通信が可能な超高速ネットワークであり、映画等の大容量コンテンツのダウンロードを短時間で行うことが可能である。また、高品質のテレビ会議等に必要な双方向での高速通信が可能であること、距離による減衰が小さいなどの特徴を備えている(図表7))。平成14年3月から、同じ光ファイバ上で異なる波長光を多重化することにより、最大500チャンネル(標準テレビ映像換算)の映像配信が可能な多チャンネル映像配信サービスの実験も行われ、実用化に向けた検討が進められている。
 我が国では、世界に先駆け平成13年3月に一般家庭向けのサービスが開始されたが、平成14年度末現在で契約数は、31万契約にとどまっている(図表5))。
 FTTHの利用意向について、現在FTTHを利用していないブロードバンド利用者に対して調査を行ったところ、利用開始の条件としては、「初期費用・通信費用等の料金が下がったら」(75.3%)と考えている人が極めて多く、「現在地がサービスエリアとなったら」(30.0%)がこれに次いで多かった。「興味がない、内容がよく分からない」(13.3%)はこれらと比べると少なく、いずれFTTHに加入したいと考えているユーザが多い(図表8))。また、FTTHに移行してもよいと考える月額料金としては、「3,000円〜4,000円未満」が31.5%、「2,000円〜3,000円未満」が26.8%であり、DSL並みの料金を希望している人が多い(図表9))。

 
図表8) FTTH加入の条件(ブロードバンド利用者、複数回答)

図表8) FTTH加入の条件(ブロードバンド利用者、複数回答)
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図表9) FTTHに移行してもよいと考える月額料金(ブロードバンド利用者)

図表9) FTTHに移行してもよいと考える月額料金(ブロードバンド利用者)
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4 ブロードバンド料金の動向

 ブロードバンド料金は低廉化が続いており、急速なブロードバンド普及の一因となっている(図表10))。また、各国のDSL及びケーブルインターネットの料金を100kbps当たりの料金に換算し比較すると、我が国の料金は国際的にみても最も低廉な水準となっている(図表11))。このような低料金を実現している背景には、我が国のブロードバンド市場が非常に競争的であることがある。DSLの契約数に占めるNCCのシェアは、平成12年度末の61.1%から、14年度末には63.6%に拡大している(図表12))。

 
図表10) ブロードバンド料金の低廉化

図表10) ブロードバンド料金の低廉化
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図表11) ブロードバンド料金の国際比較(100kbps当たりの料金、2002年度末)

図表11) ブロードバンド料金の国際比較(100kbps当たりの料金、2002年度末)
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図表12) DSLサービスにおける契約数のシェア(占有率)の推移

図表12) DSLサービスにおける契約数のシェア(占有率)の推移
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5 ブロードバンド普及状況の国際比較

 ブロードバンドの普及状況について国際比較すると、契約数では我が国は米国の1,870万契約、韓国の986万契約に次いで第3位であり、急速に契約数が増加している(図表13)、14))。
 世帯普及率では我が国は第10位である。世帯普及率の上位国は、韓国が67.6%と突出して第1位、香港が第2位、台湾が第4位とアジアの国・地域が占めており、ブロードバンドの普及においてアジアが世界をリードしている(図表15))。

 
図表13) ブロードバンド契約数の国際比較(上位15か国・地域、2002年末)

図表13) ブロードバンド契約数の国際比較(上位15か国・地域、2002年末)
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図表14) ブロードバンド契約数の国際比較の推移

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図表15) ブロードバンド世帯普及率の国際比較(2002年末)

図表15) ブロードバンド世帯普及率の国際比較(2002年末)
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6 ブロードバンド普及に伴うネットワーク基盤の課題

 ブロードバンドの急速な普及に伴い、ネットワークを流れるトラヒック量の増加も加速している。インターネット接続事業者同士の相互接続点としてトラヒックの中継を行うインターネットエクスチェンジ(IX:Internet Exchange)におけるトラヒック量は、我が国の代表的なIXであるDix-ie(旧NSPIXP2)、JPIX、JPNAPの場合、平成14年度末に1日のピークがそれぞれ15Gbps、21Gbps、15Gbps程度となっている。また、前年度と比較すると、Dix-ie、JPIXが2倍以上、JPNAPが5倍以上に増大している(図表16))。

 
図表16) IXのトラヒック量の推移

図表16) IXのトラヒック量の推移

 今後、動画等のデータ量の多いコンテンツの利用が進めば、トラヒック量はさらに増大すると予想される。トラヒック量の増大に対応するには、IXやバックボーン等のネットワーク全体を拡充しておくことが必要である。バックボーン回線の拡充については、光ケーブル内において複数の波長の光信号を多重伝送することにより伝送容量を拡大するWDM(Wavelength Division Multiplexing:波長分割多重)技術が活用されている。
 IXについては、設備や処理能力の増強やIXの分散による負荷低減等によって対応が図られている。IXの分散は、都市部における分散のほか、民間事業者及び地方公共団体等によってIXの地方分散も進められている(図表17))。

 
図表17) IXの全国分布図(平成14年度末)

図表17) IXの全国分布図(平成14年度末)
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(注1)平成14年末、19年末の人口普及率は、各々の時点での我が国のインターネット人口、ブロードバンド人口を平成14年末、19年末時点の全人口推計値1億2,738万人、1億2,773万人(「我が国の将来推計人口(中位推計)」(国立社会保障・人口問題研究所、平成14年1月))で除すことにより算出
(注2)インターネット及びブロードバンド利用人口の推計方法については、資料1-1-11-1-2参照
(注3)「平成13年情報通信産業連関表」を用いて推計(資料1-1-3参照)

関連ページ:加入者系ネットワークについては、2-2-5(1)参照

 

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