平成15年版 情報通信白書

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第3章 情報通信政策の動向

(2)電波の与える影響からの人体の防護

人体電波防護対策の実施

 携帯電話をはじめとする電波利用の急速な普及・高度化に伴い、無線設備から発射される電波が人体に好ましくない影響を及ぼすのではないかという懸念が提起されている。
 総務省では、こうした懸念を解消し、安心かつ安全に電波を利用できる環境を整備するため、無線通信に用いられる電波が人体に好ましくない影響を与えないための適切な基準の策定及び継続的な研究等を実施している。

1 電波防護規制の導入

 電波利用において人体が電磁界にさらされる場合、その電磁界が人体に好ましくない電磁現象(深部体温の上昇、電撃、高周波熱傷等)を及ぼさない安全な状況であるか否かの判断をする際の基本的な考え方と、それに基づく指針値等により構成される「電波防護指針」について、電気通信技術審議会(現情報通信審議会)が答申を行っている。
 「電波防護指針」は、放送局や基地局等、特定の場所に設置して運用される無線設備から発射される電波の強度等に関する指針(平成2年6月25日電気通信技術審議会答申)及び携帯電話端末等、身体に近接して使用される無線設備から発射される電波の強度等に関する指針(平成9年4月24日電気通信技術審議会答申)から構成されている。

2 電波防護指針の強制規格化

 放送局や基地局等、特定の場所に設置して運用される無線設備から発射される電波については、平成11年10月、無線局の整備、運用の際に守るべき技術基準として、電波法施行規則に「電波の強度に対する安全施設」の規定を追加した。これにより、定められた値を超える場所(人が通常、集合し、通行し、その他出入りする場所に限る。)について、その無線設備の取扱者以外の者が容易に出入りできないように施設することが義務付けられている。
 他方、携帯電話端末等、身体に近接して使用される無線設備に適用する局所吸収指針については、平成12年11月、電気通信技術審議会(現情報通信審議会)から「人体側頭部の側で使用する携帯電話端末等に対する比吸収率の測定方法」が一部答申され、統一的な測定方法が定まった。総務省では、これを受け、無線設備規則及び特定無線設備の技術基準適合証明に関する規則を一部改正し、人体側頭部のそばで使用する携帯電話端末等に対する電波防護規制(局所吸収指針:比吸収率で規定)を平成14年6月から施行している(図表)。

 
図表 電波防護指針の強制規格化の流れ

図表 電波防護指針の強制規格化の流れ

3 電波の人体に対する影響に関する研究等の推進

 総務省では、電波の生体への影響を科学的に解明するため、平成9年度から関係省庁や大学の医学、工学の研究者等により構成される「生体電磁環境研究推進委員会」を開催している。
 本委員会は、平成13年1月、「これまでの研究成果によれば、現時点では電波防護指針値を超えない強さの電波により、非熱効果を含めて健康に悪影響を及ぼすという確固たる証拠は認められないこと」を発表した。また、平成14年11月、ラットを用いた迷路学習実験により、「熱作用を生じない条件下では携帯電話の電波による課題学習能力への影響は生じないこと」を発表した。現在は、長期的な電波ばく露による影響調査のための2年間(実験で使用するラットの一生に相当)に渡る長期ばく露実験や、携帯電話端末使用と脳腫瘍との関係についての疫学調査等を実施している。
 総務省では、今後も電波の人体安全性に関する研究等を継続し、我が国の電波防護のための基準の根拠となる科学的データの信頼性向上を図るとともに、研究成果を正確に公表することにより、安心して安全に電波を利用できる環境の整備を推進していく予定である。

 
参考:電波利用ホームページ
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