平成15年版 情報通信白書

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第1章 特集「日本発の新IT社会を目指して」

(6)放送のデジタル化

平成15年12月、地上デジタル放送の開始

1 デジタル放送の概況

 平成15年12月1日、地上デジタルテレビジョン放送が関東、中京及び近畿の各広域圏において、東京・名古屋・大阪から開始される。これにより、地上、衛星、ケーブルテレビの全放送メディアにおいて、デジタル放送が実現する。放送におけるアナログからデジタルへの変化は、かつての白黒テレビからカラーテレビへの変化に匹敵する。放送のデジタル化により、これまでの受け身の視聴スタイルに加え、視聴者自らが能動的に働きかける視聴スタイルが実現する。
 我が国初のデジタル放送は、平成8年6月の通信衛星(CS:Communication Satellite)を用いたCSデジタル放送開始に始まる。平成10年7月にはケーブルテレビでも一部地域においてデジタル放送が開始された。平成12年12月には、放送衛星(BS:Broadcasting Satellite)によるBSデジタル放送が、また、平成14年3月には、東経110度CSデジタル放送が開始された。平成15年秋には、東京と大阪において、需要の把握、放送サービスの開発を目的とした地上デジタル音声放送の試験放送が予定されている。そして、平成15年12月には、地上デジタルテレビジョン放送が三大広域圏において開始される予定である。
 アナログ放送からデジタル放送の移行についても、地上ラジオ放送を除き、平成23年(2011年)までに完了する予定である。既に、CS放送は、デジタル放送への移行がおおむね完了している。BSアナログ放送のうち、アナログハイビジョン放送については、平成19年(2007年)に、そのほかの放送(NHK-1、2、WOWOW)については、平成23年(2011年)までに、それぞれ終了する予定である。また、地上アナログテレビ放送については、平成23年(2011年)に停止される計画になっている。ケーブルテレビについても、平成22年(2010年)までにほぼすべてのケーブルテレビがデジタル化されていることを目標としている(図表1))。

 
図表1) 放送のデジタル化のスケジュール

図表1) 放送のデジタル化のスケジュール

2 地上デジタルテレビジョン放送

(1)導入スケジュール

 テレビは我が国のほぼ全世帯に普及しており、利用時間もパソコンに比べ数倍長い(図表2)、3))。また、インターネットの利用格差において最大の要因は世代間の格差にあるが、高齢者のテレビ視聴時間が長い(1-3-3(2)2-7-1(3)参照)ことを勘案すると、地上テレビジョン放送のデジタル化を進めることにより、国民に広く浸透したテレビを活用して、誰もが簡便に高度なサービスを利用できる「家庭のIT革命を支える基盤」(「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2002」(平成14年6月閣議決定))を構築することができる。

 
図表2) テレビとパソコンの世帯普及率(平成14年度末)

図表2) テレビとパソコンの世帯普及率(平成14年度末)
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図表3) テレビとパソコンの週平均利用時間(平成14年、利用者平均)

図表3) テレビとパソコンの週平均利用時間(平成14年、利用者平均)
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 地上デジタルテレビジョン放送は、三大広域圏(関東・中京・近畿圏)では平成15年12月から、そのほかの地域では平成18年(2006年)末までに順次、県庁所在地等から開始される予定である。視聴者保護のため、アナログ放送の終了時期である平成23年(2011年)夏までは、デジタル放送番組をアナログ放送でも放送するサイマル放送を実施する計画となっている。放送局の免許について、総務省では平成14年9月に地上デジタルテレビジョン放送の免許方針を策定し、1)サイマル放送について、1日の放送時間中3分の2以上の時間で実施すること、2)高精細度テレビジョン放送について、1週間の放送時間中、50%以上の時間で実施することを放送局の要件としている。この免許方針に基づき、平成15年4月、総務省はNHK及び関東・中京・近畿広域圏の民間放送事業者16社に対し、予備免許を交付した。

(2)視聴者の期待

 国民生活に最も密着した基幹的放送である地上テレビジョン放送のデジタル化は、国民、視聴者に対して様々な便益をもたらす。視聴者の地上デジタルテレビジョン放送に対する期待について調査したところ、「画質や音質のよい番組」に期待する人が65.4%と圧倒的に多く、次いで28.8%がデータ放送等による「最新情報の取得」、21.2%が字幕放送・音声速度変換等の「高齢者・障害者に優しい放送」の実現に期待している(図表4))。

 
図表4) 視聴者の地上デジタルテレビジョン放送への期待(複数回答)

図表4) 視聴者の地上デジタルテレビジョン放送への期待(複数回答)
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(3)諸外国における地上デジタルテレビジョン放送の動向

 地上テレビジョン放送のデジタル化は、先進諸国でも推進されている。1998年9月にイギリスで世界初の地上デジタルテレビジョン放送が開始されて以来、2002年度末までに世界10か国で地上デジタルテレビジョン放送が実施されている(図表5))。アジア地域でもシンガポール、韓国で2001年から放送が開始されている。
 イギリスでは、2003年3月現在で地上デジタルテレビジョン放送の人口カバレッジは75%となっている。2002年3月に、有料で地上デジタルテレビジョン放送を行っていたITV Digitalが破綻したが、後継事業として同年10月にBBC、BSkyB等が設立したFree to View Ltd.がFree Viewという名称で無料の地上デジタルテレビジョン放送を開始している。
 米国では、2003年2月現在で97%のTV保有世帯において受信可能であり、デジタルテレビジョン受信機の出荷台数は2002年12月現在累計で約473万台となっている。FCCは地上デジタルテレビジョン放送の普及を促進するため、2002年4月に放送、ケーブルテレビ、家電メーカ等の関係業界に地上デジタルテレビジョン放送普及のための具体的目標を示し、それに基づき各業界が自主プランを作成することを要請した。また、2002年8月にFCCは、新規に発売されるテレビ受像機に、2004年から2007年にかけて、大型テレビから段階的に地上デジタルテレビチューナーの内蔵を義務付ける規則を発表している。
 ドイツでは、2002年10月に最初の地上デジタルテレビジョン放送がベルリン首都圏で開始されている。また、フランスでは、2002年10月に免許事業者が決定されており、2004年末に放送が開始される予定である(図表6))。

 
図表5) 地上デジタル放送の開始国(2002年度末)

図表5) 地上デジタル放送の開始国(2002年度末)

 
図表6) 主要国における地上デジタル放送の実施状況

図表6) 主要国における地上デジタル放送の実施状況
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3 衛星デジタル放送

 BSデジタル放送は、準基幹放送として発展し、デジタル技術を生かした多彩な放送を行うことにより地上放送のデジタル化の先駆けとしての役割を果たすことが期待されている。BSデジタル放送の受信件数は、平成14年度末に約392万件となっている。このうち、BSデジタルチューナー及びBSデジタルテレビの出荷台数累計は、約209万台であり、ケーブルテレビ経由の受信件数は約183万件となっている(図表7))。

 
図表7) BSデジタル放送の受信件数とCSデジタル放送の契約件数の推移

図表7) BSデジタル放送の受信件数とCSデジタル放送の契約件数の推移
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 東経110度CSデジタル放送以外のCSデジタル放送は、多チャンネル専門放送として、多様な視聴者ニーズに応え、多彩なコンテンツが提供される放送を行うことが期待されている。また、平成14年3月に開始された東経110度CSデジタル放送は、BSデジタル放送とCSデジタル放送の中間的な性格をもつ放送として発展していくことが期待されている。CSデジタル放送の契約件数は、平成14年度末時点で345万件となっている。平成14年5月末から6月に開催された2002FIFAワールドカップサッカーの中継等により、契約件数が増加している。このうち、東経110度CSデジタル放送の契約件数は、6.5万件である。
 また、我が国初の移動体向け放送である2.6GHz帯を使った衛星デジタル音声放送について、平成15年1月に総務省では制度整備を行った。衛星デジタル音声放送においては、従来の衛星放送では困難であった高速移動中の安定的な受信やCD並の高品質ステレオ音声放送、さらには文字・図形等のデータを組み合わせた多彩な放送が可能となり、早期のサービス開始が期待される。

4 ケーブルテレビのデジタル化

 ケーブルテレビは契約件数で4世帯に1世帯以上が加入する再送信メディアであり、放送全体のデジタル化の推進に当たり、ケーブルテレビに期待される役割は非常に大きい。BSデジタル放送の場合、平成14年度末にBSデジタル放送に対応しているケーブルテレビ事業者数は326社であり、ケーブルテレビ事業者全体の60%となっている。今後、ケーブルテレビは広域の複数ケーブルテレビ局の統合運営や事業者間のネットワーク化等、事業者同士の連携を進めることにより、デジタル化対応を一層促進していくことが求められている。

関連ページ:デジタル放送推進のための行動計画の策定については、3-2-2(1)参照
 地上放送のデジタル化の推進については、3-3-2(1)参照
 衛星放送については、2-3-2(3)、衛星放送の高度化については、3-3-2(2)参照
 ケーブルテレビについては、2-3-2(4)、ケーブルテレビの高度化については、3-3-2(3)参照

 

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