平成15年版 情報通信白書

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第1章 特集「日本発の新IT社会を目指して」

(5)コンテンツビジネス及び技術の動向

我が国発の携帯電話のコンテンツビジネスが海外にも広がる

 インターネット上でのコンテンツビジネスを拡大するため、著作権管理や通信品質を改善する技術の開発や改善が進んでいる。実際のビジネス展開でも、映像コンテンツの本命として期待される放送番組を再配信する大規模な実験等が行われている。また、携帯電話を使ったコンテンツビジネスは、我が国発のビジネスモデルとして海外にも広がり始めている。

1 技術・システムの開発

(1)DRMシステム

 DRM(Digital Rights Management:デジタル著作権管理)システムとは、配信するコンテンツの暗号化、利用者の認証、専用の視聴用ソフトの使用、電子透かし等の技術を組み合わせて、ネットワークコンテンツの著作権を総合的に保護するシステムである。DRMシステムの採用により、1)コンテンツの安全な配信、2)不正なコピーの追跡・監視、3)コンテンツの利用条件(利用期間、利用回数、コピー制限等)の柔軟な設定等が可能になる。
 システム的には、1)正当なユーザを識別し、本人確認されたユーザのみが鍵を入手して、暗号化されたデジタルコンテンツを複合化できるようにする「アクセス管理システム」、2)電子透かし等により、不正コピーを抑制するとともに、不正利用がされていないかどうか探索する「コピー管理システム」、3)コンテンツを個別に識別できるIDを割り振ることで、著作権情報等が容易に確認でき、円滑なコンテンツの流通に役立つ「ID管理システム」、4)ユーザのコンテンツ利用料金を定め、確実に徴収する「課金システム」を組み合わせたものとなっている(図表1))。

 
図表1) DRMシステムの概要

図表1) DRMシステムの概要

(2)CDNシステム

 CDN(Contents Delivery Network:コンテンツ配信ネットワーク)システムとは、インターネットという帯域保証のないネットワーク上で、エンドユーザに大容量のデジタルコンテンツを、安定的、効率的に配信するために構築されるネットワークシステムをいう。例えば、1Gbpsの回線を用いて、1.5Mbpsの転送速度による映像のストリーム配信を行った場合、同時に配信できるユーザ数は単純計算で600人程度に限られ、コンサート中継等で多人数が同時にアクセスすると有料サービスにふさわしい通信品質は確保できない。そこで、CDNを用いて、通信品質を改善する。CDNのネットワークとしては、ネットワーク上のエンドユーザの近い位置にコンテンツ配信を中継するキャッシュサーバ(ウェブサイトなどのコンテンツの複製を蓄積しておき、ユーザからの要求に応じて要求先のサーバに代わって配信するサーバ)を設置したり、配信用の専用ネットワークを構築するなど、事業者によって多様な方法が採られている(図表2))。

 
図表2) CDNシステムの概要

図表2) CDNシステムの概要

 例えば、ケーブルテレビ局向けにサービスを行っているCDN事業者の場合、多くのケーブルテレビ局の協力を得て、ケーブルテレビ局の高速ネットワーク内にライブ映像などの番組を配信するサーバを設置している。各家庭のパソコンは、この配信サーバからケーブルテレビ局内の高速ネットワークを通じて直接配信を受けることになるため、高画質な映像を見ることができる。

(3)ストリーミング配信技術

 ストリーミング配信技術とは、音声や映像ファイルをユーザが受け取りながら、再生する技術である(図表3))。音声や映像のファイルは大容量なので、ダウンロードしてから再生するのでは長い時間を待たなければならない。ストリーミング技術を使えば配信サーバから送られたデータが、ユーザのパソコンに一定量蓄積されれば再生を始めることができるので、再生までの待ち時間は短い。また、蓄積されたデータは再生後に削除されるので、再頒布や改ざんの心配も少ない。
 ストリーミング技術自体はかねてより広く使われてきたが、再生開始や再生場面の切り替えに時間がかかる点や画質・音質等に難点があった。しかしながら、最近の技術開発により、再生や場面切り替え時間の大幅短縮やDVD並の高画質・高音質を実現するなど、急速に機能が向上している。

 
図表3) ストリーミング配信技術の概要

図表3) ストリーミング配信技術の概要

2 事業者の取組

(1)放送事業者の取組

 今後、ブロードバンドや高速な携帯インターネットサービスが一層普及していく上で、映像系コンテンツへのニーズはますます増大していくと考えられる。現在、映画等を含めたコンテンツ市場全体において、映像系コンテンツの6割はテレビ番組が占めており、テレビ番組のインターネット上での再配信が期待される。民間放送事業者においても、ブロードバンド時代における収益の多様化等の観点から、テレビ番組の再配信等に向けた取組を本格化させている(図表4))。

 
図表4) 放送事業者の主なコンテンツ配信

図表4) 放送事業者の主なコンテンツ配信
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1) トレソーラ

 TBS、フジテレビ及びテレビ朝日の3社は、ブロードバンドにおけるテレビ番組のニーズの把握、事業化のための各種マーケティング調査を目的として、平成14年9月から11月までの期間限定で、テレビ番組のブロードバンド有料配信実験「Chance!@トレソーラ」を実施した。

 実験の結果として、様々なジャンルの中でドラマ、バラエティの人気が高く、ドラマの視聴者の多くが番組を最後まで視聴し、パソコンであっても長時間視聴する傾向が強かったことなど、テレビ番組のブロードバンドでの視聴ニーズが確認されたほか、効率的な映像配信ネットワークの確立や、著作権処理ルールの整備など、今後の市場拡大に向けた課題が抽出された。

2) SKY PerfectBB

 CS放送会社であるスカイパーフェクト・コミュニケーションズは、平成14年8月から、ブロードバンドコンテンツ配信サービス「SKY PerfectBB」を開始した。平成15年3月時点で、CS放送で配信しているコンテンツと、オリジナルコンテンツの双方を300kbpsと1Mbpsの速度で配信している。コンテンツは映画、スポーツ、アニメ等400タイトルにのぼる。

(2)携帯電話向けのコンテンツビジネスの海外展開

 我が国では、携帯インターネットの普及により、携帯電話向けのコンテンツ配信やカメラ付き携帯電話が普及しているが、我が国の生んだこれらのビジネスは、諸外国にも広まりつつある。
 NTTドコモは、海外の提携事業者を通じて携帯インターネットサービスを展開している。2000年5月に香港でハチソンテレフォンが携帯インターネットサービスを展開したのをはじめとし、ドイツ、オランダ、ベルギー、台湾等で携帯インターネットサービスが順次提供されている。
 Jフォンの親会社であるボーダフォンは、2002年10月から欧州で、ニュース等の各種情報サービス、公式サイトへの接続、ゲーム等が利用可能なサービスを開始している。Jフォン同様の写真付電子メールサービスも利用可能であり、日本メーカのカメラ付き携帯電話端末も提供されている。
 また、これらの通信事業者の動きに合わせ、我が国のコンテンツ配信事業者等も相次いで海外に進出し、我が国が生んだ着メロ、携帯電話向けのゲームといったコンテンツビジネスが世界に広まりつつある。

 

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