平成3年版 通信白書

本文へジャンプ メニューへジャンプ
トップページへ戻る
操作方法


目次の階層をすべて開く 目次の階層をすべて閉じる

第1章 平成2年情報通信の現況

3 国際通信サービスの動向

 (1)国際電気通信サービスの動向

 80年代における国際電気通信については、第1-1-30図のとおり、国際電話サービスを中心とした順調な推移がみられた。この間、昭和56年には、オペレータ通話における国際電話受付け番号「0051」の全国化が達成され、全国どこからでも局番なしの「0051」でオペレータ通話がかけられるようになり、昭和60年の電気通信事業法の施行を受けて元年には、新国際第一種電気通信事業者2社の事業が開始された。また、昭和62年には、従来は個別かつ事前に必要であった国際自動ダイヤル通話の登録手続きが原則として不要となり、かけたい時にすぐ利用できるようになるなど、国際電話の一般化促進のためのサービスの改善が図られてきている。
 一方、料金面においては、昭和54年12月にKDDによる第1次値下げが実施されて以降、昭和58年を除いて毎年値下げが実施されている。例えば米国あての国際自動ダイヤル通話サービスでは、3年4月1日現在の料金水準は昭和55年の4分の1程度となるなど、大幅な料金の低廉化が実現されてきており、内外価格差の解消が図られてきた10年間であった(第1-1-31図参照)。
 なお、2年の国際電気通信においては、国際化の進展に伴う需要増と、料金の低廉化に伴う割安感といった需要の顕在化効果があいまって、国際電話の取扱数、専用回線数等は前年に引き続き高い伸びを示した。
 また、元年に国際専用回線サービス及び国際自動ダイヤル通話サービスを開始した新事業者2社の業績は、事業開始後わずか1年余りという短期間で予想以上の実績を挙げている。
 ア 国際電話サービス
 80年代の国際電話の取扱数は、10年間で13.8倍と極めて順調な伸びを示している。国際郵便と比較すると、昭和55年度に国際郵便物数の10.2%であったものが、元年度には111.1%と初めてこれを上回る状況となっている。
 2年度上半期の国際電話の取扱数(発着信及び中継信のKDD及び新事業者2社の合計)は1億9,146万回で、対前年度同期比23.5%増と好調な伸びを示している。また、海外との言葉の壁も、KDDテレサーブが提供する通訳サービス等により低くなってきており、国際電話はますます身近なものとなってきている。
 一方、新事業者2社については、提供サービスは国際自動ダイヤル通話サービスのみではあるが、トラヒックの多い地域から順次提供地域(注)発拡大しており、2年度末現在の提供地域は、日本国際通信(株)が27地域、国際デジタル通信(株)が26地域となっている。
 元年の国際自動ダイヤル通話サービスのトラヒックをみると、上位30地域で全体の95%以上を占めており、米国(26.1%)、韓国(14.1%)及び台湾(9.2%)の上位3地域合計で約50%を占めることから、国際電話の市場構造は新事業者の参入を容易ならしめるものであったといえ、提供地域数に関しては、既に立ち上がりの時期を脱したものと考えられる。
 なお、我が国全体としては、2年度においてもサービス提供地域の増加が続いており、KDDが、フォークランド、シリア、グリーンランド及びヴイエトナムあての国際自動ダイヤル通話サービスを開始したことにより、国際自動ダイヤル通話サービスの提供地域は185地域に拡大しており、オペレータ通話を含めた国際電話サービス全体の提供地域は215地域となっている。
 また、KDDと新事業者2社との料金格差については、新事業者の参入(元年10月)直後の1か月間は23%程度あったが、その後価格競争が進展した結果、3年4月のKDDの第12次値下げにより、1%前後の僅差になっている(第1-1-32表参照)。
 イ 国際専用回線サービス
 2年9月末現在の国際専用回線の回線数(KDD及び新事業者2社の合計)は1,593回線であり、対前年同期比で6.3%増にとどまっている。しかし、種類別にみると、中高速符号品目は76.8%増と前年に引き続き大幅な伸びを示しており、専用回線に占める割合も33.1%にのぼるなど、国内同様国際電気通信分野においても、通信回線容量の大容量化は顕著である(第1-1-33図参照)。
 ウ 国際テレックスサービス及び国際電報サービス
 国際テレックスサービスにおける2年度上半期の取扱数(KDDの発着信及び中継信の合計)は874万回で、対前年度同期比で22.9%減となっており、国際電報サービスについても2年度上半期の通数(KDDの発着信及び中継信の合計)は31万通と、対前年度同期比で13.9%減となっている。
 これらの減少傾向は、かつては国際電気通信サービスの中心であった両者も、高速化、大容量化へと進む中で、電報からテレックス、テレックスからファクシミリへなど、通信メディア間の代替が行われたり、専用回線サービスやデータ伝送サービスへの吸収等が行われた結果であると考えられる。
 エ 国際テレビジョン伝送サービス
 国内における海外映像情報の需要増を反映して、国際テレビジョン伝送の需要も堅調である。2年度上半期におけるKDDの国際テレビジョン伝送サービスの伝送時間は、対前年度同期比35.0%増の22.6万分となっている。
 オ その他のサービス
 国際間のデー夕伝送サービスとしては、KDDのパケット交換サービスである、国際公衆データ伝送サービス(VENUS-P)と国際高速デー夕伝送サービス(VENUS-LP)が提供されているが、国際高速データ伝送サービスの2年度上半期の取扱数(発着信の合計)をみると、対前年度同期比6.2%増の2.7万回となっており、高速データ伝送の需要の拡大が見られる。
 カ 国際電気通信料金の低廉化
 国際電気通信料金の低廉化は、昭和54年10月にKDDが国際専用回線の値下げを実施して以来、国際電話(13回)、国際専用回線(9回)、国際テレックス(7回)、国際テレビジョン伝送(4回)、国際公衆データ伝送(3回)等、各種のサービスに関して毎年のように実施されてきた値下げや、各種サービスにおけるメニューの拡大等により実現されてきており、国際化の進展に伴う需要増に国際電気通信の割安感が拍車をかけるといった状況となっている(第1-1-34表参照)。
 この状況については、日本銀行による「企業向けサービス価格指数」においても明らかであり、昭和60年を100とした2年7月〜9月平均の料金指数は国際電気通信全体で54.0となっている。これは、産業全体の平均値(116.9)を大きく下回っており、国内電気通信全体の指数(95.6)と比較しても、価格の低下は著しいものといえる。また、サービス品目別内訳でみると、国際電話(49.9)、国際専用回線(49.6)、国際テレックス(67.4)と、サービス品目の区別なく一様に価格の低下がみられたことが特徴的であった(第1-1-35図参照)。
 一方、外国との内外価格差についても、我が国の料金水準は世界的にも最も低廉な水準となってきており、国際自動ダイヤル通話に関する限り、近年の内外価格差はほぼ解消されている(第1-1-36表参照)。
 なお、2年度における値下げ状況としては、国際自動ダイヤル通話サービスについて、4月にKDDが第11次値下げ(全対地平均7.7%、総額97億円)(注)を行って以降、9月には新事業者2社が初めての値下げ(日本国際通信(株)は同平均2.5%、総額4.6億円、国際デジタル通信(株)は同平均2.3%、総額3.3億円)を行い、11月にはKDDが、4月に値下げを見送った地域を対象とした値下げ(同平均1.7%、総額25億円)を行った。また、3年4月1日には、KDDによる第12次値下げ(同平均2.5%、総額43億円)かあった。
 その他のサービスについては、2年7月に国際テレビジョン伝送サービスの値下げ(平均13.9%、総額4.1億円)及び国際データ伝送サービス(VENUS-P)の値下げ(平均30%、総額3.5億円)がKDDにより行われている。

第1-1-30図 国際通信サービスの変遷

第1-1-31図 国際電話における対米料金の推移

第1-1-32表 国際第一種電気通信事業者の電話料金

第1-1-33図 国際専用回線数の速度別推移

第1-1-34表 昭和54年10月以降における国際電気通信料金の値下げ状況

第1-1-35図 企業向けサービス価格指数の推移

第1-1-36表 国際電話の主要国との料金水準比較

 

(4)国内通信設備の状況 に戻る (2)国際放送の動向 に進む