平成16年版 情報通信白書

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第1章 特集 「世界に拡がるユビキタスネットワーク社会の構築」

(2)国内外における新たなネットワークサービスの萌芽例

新たなネットワークサービスが日本、世界で展開

1 国内におけるネットワークサービスの動向

 利用者の意向に呼応する形で、いつでも、どこでも、誰でもが利用できるネットワークを活用した、新しく多様なサービスが生まれてきている。

(1)安心分野における活用

 平成15年10月から、和歌山県の幼稚園において、電子タグが取り付けられた園児の位置情報やネットワークカメラの映像を、光ファイバ網を通じて自宅や職場等にいる保護者が確認できるシステムの実証実験が行われた。実験は、園内の運動場や教室等の電子タグ読み取り器が、識別番号を書き込んだ電子タグを内蔵した名札を取り付けた園児の位置情報を把握し、その情報に連動したネットワークカメラが自動的に園児の映像をインターネット配信する形で行われた。実験に参加した保護者からは、自宅や職場に居ながら、今まで見ることができなかった幼稚園での自分の子供の様子を見ることや、遠方にいる祖父母からもアクセスできることのほか、映像を動画として保存できること等安心とともに楽しみをもたらすサービスとして高く評価されている(図表[1])。

 
図表[1] 幼稚園における電子タグ・ブロードバンド活用(イメージ図)

図表[1] 幼稚園における電子タグ・ブロードバンド活用(イメージ図)

(2)ショッピングにおける活用

 従来の店舗での買い物は、現金又はクレジットカードによる決済が一般的であったが、ここ数年、非接触型ICカードや携帯電話を用いた現金を要しない決済システムの活用が拡がっている。例えば、ある電子マネーサービス提供企業が提供する非接触型ICカードによる電子決済サービスは、カードに電子マネーを前もって入金し、レジでカードをかざすだけで決済が可能であり、小銭の授受が不要となるなど、利用者・店舗の双方に利便性がもたらされている。この企業の電子決済サービスは平成13年から開始され、平成16年3月現在でカード発行枚数が全国で380万枚を超えており、利用可能な店舗も全国で約3,700店に拡がっている。コンビニエンスストア等各種店舗での活用のほか、社員証・学生証に決済機能を盛り込むなどの動きも拡がっており、さらに携帯電話への非接触型ICチップの埋め込みなども予定されている。このように非接触型ICカードは、今後も様々なサービス展開が期待されており、更に活用範囲を拡大する見込みである。

(3)娯楽における活用

 インターネットをベースにパソコンや携帯電話を利用した映画やコンサート等のチケット販売サービスが拡がっている。従来、インターネット上で予約したチケットは、郵送により届けられていたが、あるチケット販売事業者が平成15年10月から、携帯電話や非接触型ICカードを利用し、入場券の検索、購入・決済、入場までを可能とする電子チケットの販売を本格的にスタートさせている。利用者は、インターネット上で検索、購入した電子チケットを携帯電話や非接触型ICカードにダウンロードし、入場ゲートに設置された端末にデータを送信することで、ペーパーレスで入場することが可能となる。平成16年3月の段階で50万人以上がこのサービス利用に必要な会員登録をしているほか、今後、非接触型ICカードが内蔵された次世代携帯電話の活用が予定されるなど、娯楽分野におけるネットワークサービスは新たな拡がりを見せている(図表[2])。

 
図表[2] 携帯電話・非接触型ICカードを活用した電子チケットサービス(概念図)

図表[2] 携帯電話・非接触型ICカードを活用した電子チケットサービス(概念図)

(4)交通における活用

 交通機関の自動改札システムにおいては、平成13年11月よりある鉄道会社が関東を中心に非接触型ICカードを利用したシステムを導入開始しており、平成16年2月には同カードの発行枚数が800万枚を超えた。同ICカードを利用した駅構内の店舗における電子マネーサービスも平成16年3月から開始されている。このほか、関西でも平成15年11月から同様のサービスが開始されているなど、バス等他の交通機関などでの利用が拡がっている。
 高速道路のノンストップ自動料金支払いシステム(ETC:Electronic Toll Collection System)の利用も着実に進展している。平成16年3月にはETC車載器を搭載した車両は累計約263万台、ETC利用率は高速道路利用数の15.7%に達している。

(5)世界に拡がる日本発のネットワークサービス

 日本で1999年2月に始まった携帯電話を利用したインターネット接続サービスは、海外の提携事業者を通じて、2002年3月のドイツでのサービス開始に続き、オランダ、台湾、ベルギー、フランス、スペイン等、欧州を中心に展開されている。2004年1月には、海外での利用者が200万加入を突破するなど、携帯電話を利用したネットワークサービスは、日本のみならず、世界においても急速に拡がっている。
 軽量かつ薄型で持ち運びが容易な非接触型ICカードは、無線による高速での情報のやり取りが可能であり、特に、交通機関等の自動改札において活用する動きが拡がっている。日本のある電機メーカーが開発した非接触型ICカードは、1997年9月に、世界に先駆けて香港の公共交通機関の自動改札に実用化されたのをはじめ、シンガポール、中国、インドにおける公共交通決済システム等において実用化が進み、2003年6月現在で累計2,250万枚が出荷されている。香港では、地下鉄、バス等公共交通機関での利用のほか、キオスク、コンビニエンスストア等の店舗での決済、ビルの入退室の管理にも利用されている。
 インターネットなどネットワークを介して楽しむことができるオンラインゲームの利用が拡がっており、2003年10月から、日本のあるゲームメーカーが北米においてオンラインゲームサービスを開始した。この会員制の多人数参加型オンラインゲームサービスは、インターネットに接続できるパソコンや家庭用テレビゲーム機を通じて利用することができるものであり、会員数は北米において2004年1月には約20万人にまで伸長している。
 このように、携帯インターネットサービスをはじめ、非接触型ICカード、オンラインゲーム等、日本企業が開発、提供する技術やシステム、ネットワークサービスが徐々に世界的な拡がりを見せつつある。

2 海外におけるネットワークサービスの動向

(1)韓国におけるネットワークサービスの動向

 ブロードバンドの利用環境の整備が進んでいる韓国は、ネットワークを利用した様々な先進的サービスが実用化されている。大型マンションのような集合住宅の形態が一般化している韓国では、2002年に建設会社や通信事業者、家電メーカーが中心となって、ホームネットワークが組み込まれた新築の高層集合住宅が完工した。同住宅は、各戸にホームサーバーを設置し、室内を無線LANと電力線通信で結んでいる。居住者は、各部屋に設置されたコントロールパネルから、家電機器の操作や電気・ガスの制御ができるようになっている。また、モニタを通じて来訪者の確認や指紋認識によるドアロックなどホームセキュリティが利用できるほか、外出先からも携帯電話を利用して、住宅内の家電の操作等、自宅管理なども可能となっている(図表[3])。

 
図表[3] ホームネットワークシステムの概念図

図表[3] ホームネットワークシステムの概念図

 また、マンションのポータルサイトを通じて、管理費の納付や、掲示板の利用、映画等の無料コンテンツサービスのほか、家電制御も行うことができ、ホームネットワークの先進事例となっている(図表[4])。

 
図表[4] ホームポータルサイト

図表[4] ホームポータルサイト

(2)米国におけるネットワークサービスの動向

 米国のあるテーマパークでは、家族や友人等の同行者とはぐれても居場所を確認できるサービスが提供されている。テーマパークの来場者には、腕時計型の専用ワイヤレス通信端末が配布され、園内に設置されたキオスク端末で同行者の居場所を確認することができるため、迷子になった子供を捜すことも可能となる(図表[5])。この端末は位置情報の表示のほかに、アトラクションの自動予約、キャッシュレスショッピング、同行者へのメール配信などの多彩な機能も持っている。同テーマパークで提供されているこのサービスは、2003年より開始され、現在この他にも3か所のテーマパークで利用されている。

 
図表[5] テーマパークにおける位置情報表示システム(米国)

図表[5] テーマパークにおける位置情報表示システム(米国)

(3)ドイツにおけるネットワークサービスの動向

 ドイツのあるスーパーマーケットでは、商品に電子タグを取り付け、賞味期限の確認や陳列棚の在庫管理を可能とするシステムが試験的に導入されている。この電子タグを活用したシステムにより、商品のチェックや在庫管理を行う従業員の負担が軽減されるとともに、スーパーマーケットの利用者が、店内に設置されたディスプレイを利用して、電子タグの付いたCDやDVDのサンプルの視聴ができるなどのサービスにも利用されている。

関連サイト:米国のテーマパーク「Dolly's Splash Country」(http://www.dollysplashcountry.com/Gen_SZone.htm
関連サイト:位置情報表示システム(http://www.safetzone.com/

 

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