平成16年版 情報通信白書

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第2章 情報通信の現況

3 海外の通信事業者の動向

債務削減、経営改善を進める欧米の通信事業者

 海外の企業では、IT不況、大手通信事業者の破たん、経営悪化の影響から、積極的な合併、買収を控え、着実に債務削減を進める傾向がみられる。
 米国では、長距離通信分野において、2002年7月に破たんしたワールドコムがMCIと社名を変更し、経営を立て直しつつある。移動体通信の分野においては、2004年2月に移動電話加入者数において米国第2位のシンギュラー・ワイヤレスが米国第3位のAT&Tワイヤレスを買収することを発表した。この買収が実現すれば、ベライゾン・ワイヤレスを抜き米国第1位の移動体通信事業者が誕生することになる。
 英国では、BTが、海外投資や第3世代移動体通信(3G)免許の獲得に伴い2001年に約280億ポンドあった負債を、資産売却等により2003年12月末で約88億ポンドまで削減させるなど各社とも財務内容を回復させている。また、MVNOによるサービスが活発化している。バージングループの傘下にあるバージン・モバイルは、2003年末現在で360万加入者を獲得しており、小売業者のテスコや移動体事業を分離したBTもMVNOにより移動体通信事業に再参入するなど新規事業者の参入が相次いでいる。
 フランスでは、国際進出戦略の失敗によりフランステレコム(FT)に巨額な負債が生じていたが、その後再建計画を策定し、拡大戦略の見直し、事業資産の売却、事業再構築を進めた結果、2003年は32億ユーロの単年度の黒字転換を果たした。今後、2003年末時点で約442億ユーロにのぼる累積債務を削減することを目指している。また、2003年12月には、政府の持ち株比率を50%以下に引き下げることを可能とする「FT定款改正法」が成立している。
 ドイツでは、最大手のドイツテレコムが事業戦略の失敗等により2002年に246億ユーロの赤字を記録するなど大幅に経営を悪化させたが、その後事業再建に取り組んだ結果、業績が好転し、2003年には2年振りの黒字を記録した。移動体分野では、モビルコムが3G免許取得料等による多額の負債により経営難に陥っていたが、ドイツ政府による救済策や3G事業からの撤退、主要株主であるFTによる約71億ユーロの負債負担によって負債の削減を進めた。その結果、再建の道筋をつけ、今後、移動体通信における法人・プリペイド分野での業務拡充を図る見通しである。

 
図表 国際的な電気通信業界の動向(概要)

図表 国際的な電気通信業界の動向(概要)

 

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