平成16年版 情報通信白書

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第1章 特集 「世界に拡がるユビキタスネットワーク社会の構築」

2 企業のネットワーク活用の今後の展望

(1)国内外における新たなネットワーク活用の萌芽例

国内・国外ともに、企業における新たなネットワークの活用の萌芽例が生まれている

 現在、ネットワークの高度化とその活用への取組は様々な分野で広がっており、ここ数年で急速に普及したブロードバンド・モバイルネットワークを利用して、様々なサービス事業が展開されている。同時に、電子タグ、非接触型ICカードや、情報家電等の新しい端末・機器・ツール(ユビキタスツール)の活用も実用化されつつあり、ネットワークのビジネスにおける活用の萌芽例としてとらえることができる。
 企業内・間業務の効率化・高付加価値化にも、電子タグや携帯端末の活用等、新たなネットワーク活用の萌芽例がいくつも生まれている。特に、電子タグは、接触せずに読み書きが可能であること、複数のものを一度に読み取ることができること、小型化によりあらゆるものに添付することが可能であること等から、物流・商品管理、顧客への情報提供等、様々な分野での活用が期待されている。
 例えば、電子タグの実用化は、現在は個別の企業内でとどまっているケースがほとんどであるが、今後は複数の企業間における活用や、消費者に対する情報提供等のサービスまでを含めた包括的な活用が期待されており、そのための実証実験が国内外で行われている(図表[1]、[2])。

 
図表[1] 国内外の電子タグの活用事例

図表[1] 国内外の電子タグの活用事例

 
図表[2] 国内の電子タグ実証実験・実用化の例

図表[2] 国内の電子タグ実証実験・実用化の例
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1 国内における萌芽例

(1)物流・在庫管理における活用

 従来、物流・在庫管理等の業務においては、バーコードを添付した商品・ケースを一つひとつリーダーで読み込み、商品管理することが一般的であった。電子タグを利用すると情報を一括で読み込むことが可能であるほか、自動検品、単品の商品管理、防犯等、新しい活用方法が可能となることから、現在様々な事業分野において横断的な実証実験が行われている。
 衣料品分野では、従来、物流の各過程において検品のために製品のバーコードを一つひとつ手作業で読み取っており、その作業や人件費が大きな負担であった。電子タグを活用すれば非接触で一括読み取りが可能となるために、費用削減効果が期待されている。平成16年1月より、衣料品の製造から小売までの各業務領域の企業の共同による、一貫した物流・在庫管理のための電子タグ利用実験が行われた。
 出版分野では、書籍に電子タグを取り付け、物流倉庫での電子タグ読み取り精度や棚卸・在庫管理等の効率向上、店頭での万引き防止効果等の検証を行う実証実験が平成16年2月から行われた。
 このほか、電子タグは商業利用以外にも多数の応用例が考えられる。九州大学では、約5,000冊の蔵書に電子タグを取り付け、貸出・返却の簡易化、無断持ち出しの防止、蔵書点検に活用している。
 また、携帯端末の利点を生かして、物流の効率化に活用しているケースもある。例えば、自動販売機に取り付けた無線通信端末から、携帯電話網を介して自動販売機の在庫情報、売上情報、故障情報等を送信することで、自動販売機の状態を社員がその場に足を運ぶことなく把握することが可能になるほか、流通センターで、サーバーに送信された情報を見ることで、時機に応じた商品供給が可能となっている。

(2)営業における活用

 携帯端末は高性能化し、営業における活用のほか、GPSや機器の自動監視機能との連携等により、活用範囲が広がっている。
 例えばGPS対応型携帯電話端末を外出の多い営業社員に持たせることで、パソコンや携帯電話の画面上から営業担当者の位置を確認することが可能となり、この位置情報を活用することで、より効率的な営業が可能となっている(図表[3])。

 
図表[3] 携帯端末の営業への活用例

図表[3] 携帯端末の営業への活用例

(3)テレワークにおける活用

 インターネットや携帯端末を活用した社外からの遠隔勤務(テレワーク)は、従来から様々な企業で活用されてきたが、ここ数年で始まった定額制モバイル通信サービスやブロードバンドの普及により、従来以上に低廉な価格で高度なテレワーク環境を構築することが可能となり、一層利便性・効率性が増している。
 例えば、ある企業では、オフィスには社員の2割分の執務スペースのみを確保し、その日の仕事の都合に応じて自宅のパソコンや社外の公衆無線LANサービス等の提供エリア、顧客先等からネットワークに接続して業務する勤労形態をとっている。社内の書類も電子化し、ネットワーク上での情報共有を基本として、省スペース、ペーパーレス化を進めている。その結果、テレワークにかかる情報通信コストを上回るオフィスコストの削減に成功したほか、業務の効率化にもつながっている。

2 海外における萌芽例

 海外においても、各国でモバイルネットワークの活用が進んでおり、電子タグについても先進的な取組が行われている。
 モバイルネットワークにおいては、工場に無線LANを構築し、組み立てラインで利用する資材の補充や運搬に活用するなど、事業や業務の効率化を可能としている例がある。米国のある大手運輸事業者では、無線LANとBluetoothを併用したバーコード読み取り機を約55,000人に支給し、荷物管理の効率化を行っている。読み取り機は、指輪のように指に装着できる仕組みになっており、読み取ったバーコード情報をBluetoothで腰のベルトに取り付けた無線LAN装置に伝送し、ベルトからは無線LANで中央のコンピュータに情報を送信する(図表[4])。

 
図表[4] 海外の携帯端末・無線LAN環境の業務における活用例

図表[4] 海外の携帯端末・無線LAN環境の業務における活用例
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 電子タグの利活用は海外でも大きな話題となっている。米国国防総省が、納入物資への電子タグの取付を2005年から義務付ける方針を発表したほか、米国のある大手小売事業者が、2005年までに自社との大口取引企業には電子タグの取付を求めるなど、官民ともに商品管理・物流分野等において、電子タグの利活用に向けた動きが本格化している(図表[5])。

 
図表[5] 海外の電子タグ実証実験・実用化の例

図表[5] 海外の電子タグ実証実験・実用化の例
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