平成16年版 情報通信白書

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第3章 情報通信政策の動向

2 重点的な研究開発の実施

(1)ユビキタスネットワーク基盤技術の研究開発

ユビキタスネットワーク社会の実現に向けた基盤技術の研究開発

 ユビキタスネットワーク社会は、我が国が世界に誇る光通信、モバイル、情報家電に関する各テクノロジーの連携により実現されるものであり、国際競争力の確保にも大きく寄与することが期待されている。このような将来性に満ちたユビキタスネットワーク社会を実現するため、総務省では、トリガ−となる基盤的な研究開発への重点的取組やテストベッドにもなりうる研究開発用ネットワークの整備を推進している(図表[1])。

 
図表[1] ユビキタスネットワーク社会の実現に向けた基盤技術の研究開発

図表[1] ユビキタスネットワーク社会の実現に向けた基盤技術の研究開発

1 ユビキタスネットワーク技術の研究開発

 平成15年度から、ユビキタスネットワークの実現に不可欠な超小型チップを利用したネットワーキング技術、非常に高速なリアルタイム認証技術、多様なネットワークの接続技術の研究開発を産学が一体となった体制により実施しており、要素技術の確立とともに、利用参加型の総合的な実証実験を通じて、これら技術の実用化を目指している。
 また、産業界等においても、平成14年6月、民間企業や大学が主体となって、ユビキタスネットワーク社会実現のための業界横断的な研究開発・標準化の推進を目的としたユビキタスネットワーキングフォーラムが設立された。平成15年度末現在、同フォーラムには約100会員が参加し、各種研究開発や標準化に関する情報交換等、フォーラムの活動を推進している。
 総務省では、同フォーラム等、産学との連携を図りつつ、ユビキタスネットワーク社会の実現に向け、研究開発、標準化をはじめとした各種取組を総合的に推進している。

2 超高速フォトニックネットワーク、テラビット級スーパーネットワークの推進

 ネットワークの端から端までを光化することにより、ネットワークの大規模・大容量化を図ることが可能である。そのため、1本の光ファイバに数千の信号を同時に送ることができる超高密度波長分割多重技術及びこれに対応した光スイッチング技術等の超高速フォトニック・ネットワーク技術に関する研究開発(平成13〜17年度)を実施するとともに、テラビット級のトラヒックを安定かつ最適な経路で制御・管理する技術等の研究開発(平成14〜17年度)を実施している。
 また、これらの研究開発に関して、実証実験・検証を産学官連携で開始しており、技術の早期実用化・標準化を目指して、欧米・アジア・太平洋地域諸国との協力・連携を図っていく予定である。

3 次世代の高機能ネットワーク基盤に向けた研究開発

 現在の情報通信技術を支えるハードウェア技術は、いずれ物理的限界を迎えることが予想されており、新しい機能を発現させる技術に関する研究開発も重要となる。このことから、総務省では、次世代の高機能ネットワーク基盤に向けた研究開発に取り組んでいる。
 電子や光の粒子としての性質を利用して情報処理・伝送を行う量子情報通信技術は、極めて高い安全性を保証する暗号通信や光通信を超える超大容量通信を実現する可能性のある革新的な技術として注目されている。総務省では、平成13年5月、この分野の推進母体となる量子情報通信研究推進会議を設置し、平成15年11月、量子情報通信研究開発戦略を策定しており、量子暗号技術の研究開発(平成13〜17年度)や、量子もつれ光子対通信技術の研究開発(平成15〜17年度)を戦略的かつ総合的に推進している。
 また、ナノサイズ特有の物質効果等を利用し、従来にはない新しい機能を発現させるナノ技術を活用することで、情報通信ネットワークの性能に飛躍的な改善をもたらすことが期待されている。総務省では、小型・省電力の中継伝送技術や超高速・省電力の高機能ルーティング技術等のナノ技術を活用した超高機能ネットワーク技術の研究開発に平成16年度から取り組むとともに、国際シンポジウムを開催するなど、本分野における海外との協調・連携も積極的に推進している。

4 研究開発用テストベッドネットワークの整備

 研究開発用テストベッド(実証実験)ネットワークは、ネットワーク技術の高度化やサービスアプリケーションの開発・実証を促進し、それらの社会への展開を実践的に実現する役割を担っており、我が国の技術力の向上、産学官連携の強化に寄与するほか、新ビジネスや新産業の創出、地域活動の活性化、人材育成効果等、幅広い波及効果をもたらすものとして期待されている。
 平成11年度から15年度に運用されたギガビットネットワーク(JGN:Japan Gigabit Network)は、この役割を実践し、のべ650機関、2000人以上の研究者に利用され、我が国のブロードバンド化、IPv6化、地域活性化、人材育成等の面で大きな成果をあげている。このような状況を踏まえ、JGNを発展させた新たな研究開発用テストベッドネットワーク(JGNII)を整備し、平成16年4月から運用を開始している。JGNIIでは、最大20Gbpsの伝送が可能な全国規模のIPネットワーク環境を整えており、全国の都道府県にアクセスポイントを設置し、大学、研究機関、民間企業、地方自治体等に対して、研究開発利用に提供している。また、最先端の光交換機を導入するほか、基礎的な光伝送実験等を可能とする光伝送テストベッド環境を併せて整備している。さらに、国内外の研究機関との連携や国際共同研究を促進するため、平成16年8月から、日米回線の運用を開始する予定である。
 研究開発用テストベッドネットワークは、研究開発成果を迅速かつ柔軟にネットワーク自身に取り込むことで、常に最先端の環境を提供することが可能である。併せて、その環境を用いて、様々な技術の開発や実証等の先導的取組を行える特長がある。結果として、5年先、10年先といった将来のIT社会の姿を展望・実践し、目指すべきIT社会の早期実現に大きく貢献できるものとなる。総務省では、ユビキタスネットワーク社会の実現に向けて、このような役割を担うテストベッドネットワークの整備を、基盤技術の研究開発の重点的取組とともに、積極的に推進している(図表[2])。

 
図表[2] 研究開発用テストベッドネットワーク(JGNII)の概要

図表[2] 研究開発用テストベッドネットワーク(JGNII)の概要

 

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