平成16年版 情報通信白書

本文へジャンプ メニューへジャンプ
目次の階層をすべて開く目次の階層をすべて閉じる

第3章 情報通信政策の動向

(3)宇宙通信の高度化

高度な宇宙通信の実現に向けた研究開発の推進

 宇宙通信は、広域性・同報性・耐災害性等、多くの特長を有しており、これまで通信・放送・測位等の分野において幅広く利用されている。総務省では、今後、急速に整備・高度化される情報通信インフラの中で宇宙通信が果たすべき役割を踏まえ、今後必要とされる宇宙通信を実現するため各種実証衛星の開発や衛星利用実験を推進している。

1 準天頂衛星システムの研究開発

 静止軌道を約45度傾けた軌道に少なくとも3機の衛星を互いに同期して配置する準天頂衛星システムが実現すると、常に1つの衛星が日本の天頂付近に滞留し、ビル陰等に影響されない高品質の通信・測位サービス等の提供が可能となる。そのため、準天頂衛星システムの実現による新たな通信サービスマーケットや公共アプリケーションマーケットの創出が期待されている。
 準天頂衛星システムの研究開発は、総務省・文部科学省・経済産業省・国土交通省の4省連携施策であり、総務省では、平成15年度から超高精度衛星搭載原子時計技術等の研究開発を実施している。準天頂衛星は、平成20年度(2008年度)に打上げの予定である(図表[1])。

 
図表[1] 準天頂衛星システムの概念図

図表[1] 準天頂衛星システムの概念図

2 超高速インターネット衛星の研究開発

 総務省では、広域性・同報性・耐災害性等といった衛星の特長を積極的に活用した地上のインターネット網と相互補完する超高速衛星通信技術の確立、アジア・太平洋地域諸国との国際共同実験の実施等を目的として、最大1.2Gbpsの広帯域通信が可能となる超高速インターネット衛星(WINDS:Wideband InterNetworking engineering test and Demonstration Satellite)の研究開発を文部科学省と連携して推進している。超高速インターネット衛星は、平成18年度(2006年度)に打上げの予定である(図表[2])。

 
図表[2] 超高速インターネット衛星の概念図

図表[2] 超高速インターネット衛星の概念図

3 技術試験衛星VIII型の研究開発

 総務省では、マルチメディア移動体衛星通信技術、衛星測位に関する基盤技術等を開発することを目的として、技術試験衛星VIII型(ETS-VIII)の研究開発を文部科学省と連携して推進している。技術試験衛星VIII型は、13m級大型展開アンテナ、高出力中継器、フェーズドアレイ給電部、衛星搭載交換機、高精度時刻基準装置等を搭載し、平成17年度(2005年度)に打上げの予定である(図表[3])。

 
図表[3] 技術試験衛星VIII型の概念図

図表[3] 技術試験衛星VIII型の概念図

4 全球降水観測計画(GPM)の研究開発

 独立行政法人情報通信研究機構(NICT)、独立行政法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)及び米国航空宇宙局(NASA)が中心となり、広範囲な降水活動を高頻度・高精度に観測することを目指した全球降水観測計画(GPM:Global Precipitation Measurement)の研究開発が進められている(図表[4])。

 
図表[4] 全球降水観測計画の全体

図表[4] 全球降水観測計画の全体

 GPMはKu帯(14GHz)とKa帯(35GHz)からなる二周波降水レーダ及びマイクロ波放射計を搭載した主衛星1機とマイクロ波放射計を搭載した副衛星8機程度により構成される。
 平成14年11月、宇宙開発委員会において二周波降水レーダの開発研究(予備設計)段階へのフェーズアップが了承された。また、平成15年6月に開催された2003年世界無線通信会議(WRC-03)では、無線通信規則における35GHz帯衛星搭載レーダの運用制限が緩和され、二周波降水レーダによる観測に必要な発射電力が確保された。

5 大容量光衛星間通信システムの研究開発

 次世代衛星通信システムの実現に向けて、光ファイバ通信技術の宇宙空間への適用を目指した大容量光衛星間通信システムの研究開発を行っている。本研究開発は、平成18年度(2006年度)頃の宇宙実証を目指し、平成9年度から通信・放送機構(現NICT)の直轄研究として行っている。

6 電波を利用した地球観測技術及びデータ中継衛星技術の高度化に関する調査研究

 総務省では、平成15年度から、電波を利用した降水・雲観測技術、地表観測技術等について調査研究を行い、平成16年2月に報告書が取りまとめられた。同報告書では、地球観測衛星の収集するデータを可能な限り広範囲かつリアルタイムで日本の地球局に中継する、データ中継衛星の光通信技術を用いた高速化の必要性等が提言されている。

7 高度衛星放送システムの研究開発

 総務省では、超高精細度放送や立体TV放送等の次世代大容量衛星放送の実現に必要な21GHz帯を用いた衛星放送システムの研究を行っている。平成15年度からは、国際電気通信連合(ITU)における21GHz帯放送衛星に関する研究に我が国として寄与するために、フェーズドアレイを用いて降雨減衰の補償を行う衛星放送システム設計の基礎検討を行うとともに、ITUにおいて将来行われる可能性のある21GHz帯プラン化に備えて衛星間の電波干渉の基礎検討を行っている。

 

テキスト形式のファイルはこちら

(2)ユビキタスネットワーク社会の実現に向けた利活用技術 に戻る 第3章第9節1(1)アジア・ブロードバンド計画の推進 に進む