平成16年版 情報通信白書

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第3章 情報通信政策の動向

第2節 情報通信政策の展開

1 電気通信政策の展開

(1)電気通信政策の展開

電気通信事業分野における競争政策の展開

1 電気通信事業法の改正

 総務省の情報通信審議会は、IT革命を推進するための電気通信事業における競争政策の在り方について、平成12年7月から審議を行い、平成14年8月に最終答申を発表した。最終答申では、ブロードバンド化・IP化の進展を踏まえ、競争政策の積極的な展開、消費者行政の充実、新たな競争の枠組みの導入について提言を行っている。このうち、新たな競争の枠組みの導入については、競争の活性化を図るための規制水準の全般的低下、市場メカニズムを補完するための制度整備等の基本的視点に立って、一種・二種の事業区分の廃止、参入規制・公益事業特権・退出規制等の在り方の見直しなどを行うことを提言している。
 総務省では、同答申を踏まえ、電気通信事業法の抜本的見直しを進め、第156回通常国会に「電気通信事業法及び日本電信電話株式会社等に関する法律の一部を改正する法律案」を提出し、同法は平成15年7月に可決成立した。同法では、民間事業者が持てる力を最大限に発揮できるよう規制緩和を図る一方で、社会的に必要となる最低限のセーフティネットを確保し、制度全体として我が国の利用者利便の増進を図るとしている(図表[1]、[2])。総務省では、関係法令の整備を進め、同法は平成16年4月に施行された。

 
図表[1] 電気通信事業に関する新たな制度の枠組み

図表[1] 電気通信事業に関する新たな制度の枠組み

 
図表[2] 電気通信事業法及び日本電信電話株式会社等に関する法律の一部改正の主な概要

図表[2] 電気通信事業法及び日本電信電話株式会社等に関する法律の一部改正の主な概要
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2 事業者間の接続料金の見直し

 電気通信事業者間における接続料の算定には、従来、実際費用方式が用いられてきたが、情報の非対称性、既存事業者の非効率性排除等の点で一定の限界があるため、平成12年5月の電気通信事業法改正及び同年11月の接続料規則の制定により、一部の指定電気通信設備の接続料原価算定方法に、長期増分費用方式(注)が導入された。
 また、総務省では、長期増分費用モデル研究会においてモデルの見直しの検討を行い、「長期増分費用モデルの見直しを踏まえた接続料算定の在り方について」情報通信審議会に諮問し、平成14年9月に答申がなされた。総務省では、この答申を踏まえ、接続料規則の一部を改正し、平成15年度及び16年度に適用される接続料を規定した接続約款の変更が平成15年4月に認可された(図表[3])。なお、接続料規則の改正では、長期増分費用方式が適用される機能が追加され、また、トラヒックが大幅に変動した場合には事業者間で精算を行うこととされた。

 
図表[3] 電気通信事業者間の接続料

図表[3] 電気通信事業者間の接続料

 さらに、近年、携帯電話の普及やIP電話の急速な台頭により、固定電話のトラヒックが減少し、固定電話に対する新規投資が抑制されるなど、固定電話を取り巻く環境は大きく変化している。こうした状況を踏まえ、総務省では、平成15年9月から長期増分費用モデル研究会を再び開催し、モデル見直しの検討を行い、平成16年4月に「平成17年度以降の接続料算定の在り方について」情報通信審議会に諮問した。

3 基本料等の在り方の検討

 加入電話の主要な料金のうち、通話料は、昭和60年の電気通信市場の自由化以降、着実に低廉化・多様化してきたが、基本料は、平成7年の値上げ以降据え置かれている。このため、消費者から、加入電話サービスの基本料は継続的な物価下落の中で高止まりしており、見直しを図るべきであるとの意見が出されている。一方で、現在、接続料のコストに含まれるNTS(Non Traffic Sensitive)コスト(トラヒック(通信量)の大小にかかわらず発生するコスト)の回収方法について、従量制の接続料ではなく、定額制の基本料で回収すべきであるとの意見が出されている。さらに、平成15年6月に総務省が開催した基本料等に関するスタディグループの取りまとめでは、[1]基本料部門への費用の配賦方法を見直すこと、[2]施設設置負担金の在り方について廃止も含め検討することが指摘された。
 総務省では、これらを踏まえ、基本料・施設設置負担金の在り方について、平成17年度以降の接続料算定の在り方と併せて、平成16年4月の情報通信審議会電気通信事業部会に諮問を行った。

4 電気通信事業分野における競争評価の実施

 総務省では、IP化・ブロードバンド化等を背景として複雑化する電気通信事業分野の競争状況を正確に把握し、政策に反映していくため、平成14年9月からIP化等に対応した電気通信分野の競争評価手法に関する研究会を開催した。研究会では、競争評価手法について検討を行い、平成15年7月に報告書を取りまとめた。総務省では、この報告書を踏まえて、平成15年度から競争評価に取り組んでおり、平成15年11月に競争評価の全体像を示した「電気通信事業分野の競争状況の評価に関する基本方針」及び平成15年度における評価対象領域や具体的評価手法を示した「電気通信事業分野の競争状況の評価に関する平成15年度実施細目」を策定・公表した(図表[4])。この基本方針では、競争評価の対象領域を、[1]固定電話、[2]移動通信、[3]専用線、[4]インターネット接続、[5]データ通信の5つの領域とし、年度ごとに対象領域を決めて競争評価を実施することとしている。平成15年度は、インターネット接続の領域を対象として競争評価を実施した。

 
図表[4] 電気通信事業分野における競争評価の骨格

図表[4] 電気通信事業分野における競争評価の骨格


(注)長期増分費用方式とは、ネットワークの費用を、現時点で利用可能な最も低廉で最も効率的な設備と技術を利用する前提で費用を算定する方式

関連ページ:電気通信事業者については、2-2-1参照
関連ページ:電気通信事業者の競争状況については、2-2-1(3)参照

 

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