昭和59年版 通信白書

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第4章 データ通信

 第1節 概   況

 電子計算機等を電気通信回線に接続してデータ伝送と処理とを一体的に行うデータ通信は,昭和46年の公衆電気通信法改正によって制度化され,以来順調に発展を遂げてきた。特に,ここ数年は電気通信技術,データ通信技術の急速な進歩,またこれに対応する公衆電気通信法の改正等の制度面の整備等により著しい伸びをみせているが,58年度においても総体としては順調な発展を示した。
 まず,データ通信回線の利用状況をみると,国内データ通信回線数は前年度末に比べ18%の増加となった。このうち特定通信回線にあっては,規格別の構成比からみれば,ユーザがその音声帯域を自由に利用できるD-1規格が56%を占めている。他方,公衆通信回線にあっては電話型回線の占める割合が多く95%を占めている。また,国際データ通信回線も37%増と大きな伸びを示した。
 次に,データ通信のシステム数については,国内データ通信システムは,58年度末現在8,468システム(私設システムを除く。)が設置されており,対前年度末比5%,434システムの増加となった。また,国際データ通信システムは,58年度末現在372システムが設置されており,対前年度末比62%,143システムの増加となっている。
 データ通信サービスを他人の需要に応じて提供する情報通信事業は,電電公社,国際電電及び民間企業により営まれている。我が国の情報通信事業は,全米的・全世界的なネットワークを形成している米国の情報通信事業に比べると,事業規模やネットワーク規模等からみても小規模なものがほとんどであるが,最近においては,ネットワーク・インフォメーション・サービス(NIS)へ発展しようとする動きが現われてきている。
 データ通信システムのネットワーク化は,社会活動の高度化・効率化,国民生活の利便の向上に資するものである。57年10月の公衆電気通信法の一部改正によって,より自由なデータ通信回線利用ができることとなったこと,また,これと同時に,種々のデータ通信システムの効率的な結合を可能とする付加価値通信(VAN)サービスについても,民間企業が主として中小企業者を対象にサービスを提供できる,いわゆる中小企業VAN制度が創設されたことにより,ネットワーク化の動きは一層促進されるものと考えられる。
 このようなデータ通信システムのネットワーク化は一企業内利用という限られた範囲を超えて,異企業間あるいは異業種間の結合へと進展する傾向にあるが,データ通信システムをより有効に活用するためには各種業界や一般家庭までを横断的に包合した総合的かつ全国的なシステム構築,いわば総合データ通信ネットワーク化を推進していく必要がある。
 このため,郵政省では58年度において郵政大臣の私的懇談会として「総合データ通信ネットワーク化構想懇談会」を開催し,このようなネットワークを構築するに当たっての次の五つの課題について技術的及び制度的な側面からの議論を行ったところである。
 [1] ネットワーク化の現状と今後の展望及びそれにより期待される効果
 [2] プロトコルの標準化に関する問題点と対策
 [3] ネットワークに期待する機能
 [4] ネットワークの安全・信頼性に関する対策の在り方
 [5] ネットワーク・サービスの充実及び健全性確保のための対策
 ところで,データ通信のこのような発展に伴い,一たび障害,エラー,犯罪等が発生した場合には,その影響は極めて重大なものとなるおそれがある。そこでデータ通信ネットワークの設計及び管理に当たっては,安全・信頼性に対する高度の配慮が要求されるところである。
 このため,郵政省では,これまでデータ保護のための標準的暗号化手法として「ミックス方式」の開発や,「データ通信ネットワーク安全・信頼性基準」の告示等を行ってきているが,58年度から,データ通信システムの総合安全対策に必要な共同バックアップシステム(データ通信総合安全対策システム)の開発を行っている。
 

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