平成12年版 通信白書

本文へジャンプ メニューへジャンプ
トップページへ戻る
操作方法


目次の階層をすべて開く目次の階層をすべて閉じる

第1章 特集 ITがひらく21世紀

(5)金融取引

インターネットを活用した金融サービスが拡大

 インターネットでの金融取引は、対面営業と比較して、利用者が利用時間に拘束されず、店舗に出向かなくてもよいといったメリットを持つサービスである。また、金融機関にとっても、インターネットを活用することにより、従来の店舗における対面取引に比べ、人件費や店舗の維持費等を抑制できるというメリットがある。金融機関はこのようなコスト抑制の効果を、相対的に高い金利設定や各種手数料の引き下げに充てることにより競争力の増強を図っている。
 こうしたなか、インターネットバンキングサービスとして、8年には「残高照会」、9年には「振込・振替」の提供が開始されてきており、現在では、ほぼすべての都市銀行や多くの地方銀行等が、こうしたサービスを実施している。また、「預金口座の開設」、「ローン仮申請」等、利用可能なサービスも順次拡大しているほか、サービスが24時間利用可能な銀行も増加している。さらに、11年からは、モバイル通信端末を用いたサービスの提供も開始されており、利用者にとって「時と場所を選ばない」金融取引の利用が可能となっている。
 また、インターネットコマースの拡大に伴い、インターネットで購入した商品の代金決済を行うための、電子的な決済手段に対するニーズが高まっている。現在、インターネットにおける決済は複数の方式が存在しているが、急速な市場の拡大を背景としたニーズの高まりに対応し、インターネット取引における共通の決済インフラの基礎的環境整備を図るため、11年4月に「日本インターネット決済推進協議会」が設立された(図表1))。
 このように、インターネットが銀行等の経営の効率を向上させ、顧客のメリット増大に貢献し得ること、また、今後のインターネットコマースの拡大に伴い、インターネットを通じた決済が日常不可欠なものとなる可能性があることなどから、金融機関やその他の業種において、インターネットを今後の重要な経営資源ととらえ、新たな経営戦略の構築を図る動きがみられており、一部の民間金融機関や金融機関以外の企業において、従来のような店舗を持たず、インターネット等のオンラインのみを通じた銀行業務の提供が計画されている。こうした中、郵便貯金においても、12年3月より、「郵貯インターネットホームサービス」の実証実験が実施されている(1-コラム3参照)。
 こうした動きは、証券取引においても顕著にみられている。我が国における最初のインターネット証券取引は、8年4月に開始された。その後、こうした取引を行う証券会社は次第に増加しており、12年3月末現在で50社となっている。特に、11年10月には証券取引に関する手数料の自由化が行われ、店舗の維持費や人件費等を抑えられるインターネット取引に参入した証券会社は増加する傾向にある(図表2))。
 日本証券業協会が11年11月から12月にかけて全国の会員284社を対象に行った調査によれば、11年10月末現在のインターネット取引口座数は29万7,000口座であり、同月1か月間のインターネット経由による株式現金取引の売買代金合計は約2,228億円であった。また、サービス内容としては、ほぼ全社が「注文内容の照会」「約定照会」「残高照会」を提供し、6〜8割の会社が「市況情報」「株価情報」「企業情報」などの投資情報を提供している。
 また、モバイル通信端末を用いたインターネット経由の証券取引等については、11年2月から開始され、現在「株価情報」「売買注文」「残高照会」等各種サービスが提供されている。これにより、「時と場所を選ばない」というモバイルの特徴を用いたリアルタイムな取引が可能となり、今後もこのようなサービスを提供する証券会社は増加していくものと考えられる。


C1325001.gif
※ 各々の標準化検討が終了後、サービス開始の予定。

C1325002.gif
野村総合研究所資料により作成
Excel形式のファイルはこちら

 
 


(4)予約サービス に戻る 第1章第3節3(1) サプライチェーンマネージメント に進む