平成12年版 通信白書

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第1章 特集 ITがひらく21世紀

5 環境

衛星携帯電話を利用した気象観測システムが、世界遺産の自然環境を継続観察

 近年、地震・火山活動、生物の生態等、様々な調査、実験等に衛星携帯電話が利用され始めている。
 世界遺産に登録された白神山地においても、衛星携帯電話を利用した気象観測システムの実験が行われている。白神山地とは、青森県南西部から秋田県北西部にまたがる広大な山地帯の総称であり、このうち、ブナの原生林で占められた中心部約17,000ヘクタールが、5年12月に屋久島とともに日本で初めて世界自然遺産に登録された。白神山地のブナの原生林は世界最大級といわれており、人の手がほとんどついておらず、クマゲラ、イヌワシ、ニホンカモシカ等の稀少な野生動物が生息する貴重な地域である。
 白神山地の森林生態系を長期に渡って保存するため、継続的な気象データの収集は極めて重要である。しかしながら、白神山地は、我が国でも有数の豪雪地帯として知られており、人が冬季において広大なブナの原生林に実際に足を踏み入れ、気象観測を行っていくことは極めて難しいことから、無人施設に頼らざる得ないのが現状である。また、有線での無人観測施設を設置するには、大規模な工事が必要となるが、世界遺産地域内では大規模な工事は行えない。
 そこで、白神山地世界遺産センター(西目屋館)では、NTTドコモ東北の協力を得て、10年10月に衛星携帯電話を利用した気象観測システムを構築した(図表)。本システムは、鉄塔に取り付けられた気象観測計、衛星携帯電話等から構成されている。衛星携帯電話は太陽電池のエネルギーで稼働し、仮に無日照日が20日間続いても、バッテリーに蓄えたエネルギーで稼働し続けることができる。この気象観測システムによって得られた温度や風速等のデータは、日々、白神山地世界遺産センター(西目屋館)に送信され、白神山地の自然環境保護のための重要な基礎資料として、活用されている。

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