昭和50年版 通信白書

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2 通信事業の財務状況

(1) 通信事業の収支状況
 49年度には,各通信事業体とも収入の伸び悩み,物価と人件費の高騰という問題に直面したが,特に郵便事業,電電公社,NHKはともに赤字を計上するに至った(第1-1-4表及び第1-1-5図参照)。
 郵便事業では,収入が前年度より9.7%増加したものの,支出の大部分を占める人件費が38.0%増というかつてない増加となったことにより,収支率は129.8%とますます悪化し,1,247億円の赤字となった。
 電電公社では,収入の大部分を占める電話収入の伸びが10.1%と低かったため,収入が10.4%増にとどまった。一方,支出の面では人件費が34.5%と大きく伸びたことなどにより,支出合計で22.2%の増加となった。このため,差引きでは,1,753億円とかつてない赤字を計上した。
 国際電電では,収入の伸びが対前年度比10.3%増と前年度までの伸び率に比べ鈍化したため,収支差額の黒字幅が前年に比べ30.4%縮小した。
 NHKは,収支差額で40億円の赤字となった。収入,支出ともに前年度に比べ減少しているが,これは特別収入と特別支出が前年度に比べそれぞれ大幅に減少したためである。放送会館の売却があった48年度を除けば,46年度以降収支率は年々悪化しており,49年度は103.2%となった。
 民間放送では,不況の深刻化に伴って広告活動が停滞,縮小したため前年度に比べ収入の伸びが大幅に鈍化し,49年度の収支差額は民間放送全体で485億円と前年度に比べ23.6%の減少となった。このため全社(105社)中10社が赤字を計上した。
(2) 通信事業の財務構造
 49年度における各事業体の財務比率は第1-1-6表のとおりである。
 郵便事業では労働装備率が低いが,これは人力依存度の高い事業の性格によるものである。
 電電公社では,全国的な規模の設備を有する事業であることを反映して,総資産に占める固定資産の比率が89.8%,労働装備率が1,462万円と高い値を示している。固定比率が317.8%と高いが,固定資産対長期資本比率は93.1%となっている。これは固定負債の額が大きいからであり,電信電話債券の総資本に占める割合は65.5%に達している。このため負債比率も253.8%と高い。
 国際電電では,固定資産に関する各種比率が増加したが,これは国際通信センターの完成に伴い固定資産が増加したためである。
 NHKの総資産に占める固定資産の比率は電電公社に次ぐ高い比率となっているが,民間放送については,NHKと比べてかなり低く全産業平均よりやや高い程度となっている。

第1-1-4表 通信事業の収支状況

第1-1-5図 通信事業の収支率

第1-1-6表 通信事業の財務比率

 

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