昭和50年版 通信白書

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5 その他の国際機関

(1) 国際連合宇宙空間平和利用委員会
 宇宙空間の平和利用に関する法律問題,科学技術面の国際協力等を検討し,国連総会にこれを報告することを任務としている国際連合宇宙空間平和利用委員会においては,補助機関として法律小委員会及び科学技術小委員会が設けられ,これらの問題についてそれぞれ専門的に検討が行われている。1974年度中には次の諸活動が行われた。
 宇宙に関する法律面の問題の審議を任務とする法律小委員会は,第十三会期会合及び第十四会期会合が開かれた。前会期に引き続き審議された項目のうち月面における活動の規制等を目的とする「月条約」については,両会期ともに対立点が解消されず採択されるまでには至らなかったが,ロケット・人工衛星の国際登録制度の確立を目的とする「宇宙物体登録条約案」については第十三会期において全会一致で採択され,その後国連総会の決議を経て署名のために開放された。衛星による直接テレビジョン放送を規律する原則の作成作業については,第十三会期から審議に入った。第十三会期においては,国際法の適用,国際協力等の項目について,また第十四会期においては,これらを含め原則となるべき事項について具体的に審議が進められ,幾つかの基本的対立点を残しつつも一応の原則案の案文が作成された。衛星による地球の遠隔探査の法的側面の検討については,第十四会期において初めて実質的審議が開始された。
 科学技術面での国際協力等の審議を任務とする科学技術小委員会は,第十一会期会合が開催され,人工衛星による地球の遠隔探査に関する作業部会の報告,国連宇宙応用計画,科学技術小委員会の役割等について審議された。我が国は国連フェローシップによる「衛星通信コース」研修生を受け入れる用意があることを表明した。
(2) 国際連合教育科学文化機関(UNESCO)
 ユネスコ(加盟国136)は,国際連合の専門機関の一つで,教育,科学,文化及びコミュニケーションの各分野にわたって多様な活動を行っている。特に放送に関しては,ユネスコは早くから放送の利用の側面に着目し,教育放送の開発途上国における放送の役割など様々な内容についてセミナ,ワークショップの開催,研究の推進等を行ってきたが,近年においてはこの関連で特に衛星の果たす役割に関心を深め,1972年パリで開催されたユネスコ第十七回総会では,「情報の自由交流,教育の普及及び文化的交換の増大のための衛星放送の利用に関する指導原則宣言」を採択している。1974年度中には次の諸活動が行われた。
 ユネスコ総会は,ユネスコの政策と主要な方針の決定,国際条約や加盟国に対する勧告の採択等を任務とし,2年ごとに開催されている。第十八回総会は,1974年10月から11月にかけて5週間パリで開催された。総会中コミュニケーション関係では,マスメディアの平和強化への利用原則宣言案,ラジオ・テレビジョンに関する統計の国際的標準化に関する国際文書,教育・科学・文化的資材の輸入に関する協定の議定書等の問題について審議されたが,これらはいずれも更に政府専門家会議を開き十分審議することとされた。ユネスコと世界知的所有権機関(WIPO)は,衛星により送信された番組伝送信号の無断伝達を禁止することなどを目的として,1971年以来3回にわたって共同で政府専門家委員会を開き条約案の起草を行ってきたが,1974年5月条約締結のための外交会議をブラッセルにおいて開催し,「衛星により送信される番組伝送信号の伝達に関する条約」を採択した。
(3) 政府間海事協議機関(IMCO)
 近年,船舶の航行の増加,自動化等に伴い,海上移動通信においては,混雑の緩和,質及び速度の改善,遭難及び安全通信の改善等の必要性に迫られている。海上を航行する船舶の安全のための国際協力を図ることを目的としているIMCOにおいては,常設機関である海上安全委員会に無線通信小委員会,海事衛星専門家パネル等が設けられ,これらの問題について検討がなされている。1974年度においては次のような諸活動が行われた。
 海上における無線通信の全般的な問題を検討することを任務とする無線通信小委員会においては,第十三会期及び第十四会期が開催され,海上遭難通信制度改善の一環としての無線電信装置を備え付ける船舶における無線電話装置の追加備付け及び非常用位置指示無線標識(EPIRB)の在り方の検討,ITUの世界海上無線通信主管庁会議の決定事項に対するIMCOの今後の措置,航行警報伝達のための国際的調整,漁船に対する無線設備の要件の検討等が行われた。500トン〜1,600トンの貨物船の無線電話局に安全の面から通信士な2名配置することについては,「専従の通信士が乗船している場合は2名の配置は必要としない。」旨の我が国の修正提案が承認された。
 IMCOにおいては,漁船の安全のための国際条約を1976年に締結することとしており,この条約作成作業の一環として漁船の無線設備の要件について,1974年の無線通信小委員会及び漁船安全小委員会において審議が活発に進められた。審議中の主要な事項としては,無線設備を強制する漁船の範囲,無線設備の種類及び技術条件,国際遭難周波数における聴守の義務化等の問題があるが,これらについては,1975年度において更に審議を重ね,条約草案を作成することとしている。
 一方,海上移動通信の諸問題の改善を図るため,これに宇宙通信技術を導入することが国際的な課題となっているが,この問題を検討するために設けられた海事衛星専門家パネルにおいては,第五回の会合が持たれ,海事衛星システムの運営組織設立に関する協定案,運用要件,技術基準等について一応の検討を終え,1975年4月開催予定の国際海事衛星システム設立に関する政府間会議に対する最終的な報告書がまとめられた。
 以上の各事項は,世界有数の海運漁業国である我が国として大きな利害関係を有するものであるので,我が国は前記の各会合にそれぞれ代表を送り,必要に応じ文書を提出して意見の反映に努めた。
(4) 国際民間航空機関(ICAO)
 現在,航空の分野では,通信にあるいは航行援助に各種の電波が駆使されている。
 この分野における電気通信の国際的な課題は,電子技術を十分に活用して通信の自動化を図ること,VOR,ILS等の航行援助施設の性能を向上させること,宇宙通信技術を導入することなどである。
 国際民間航空が安全かつ整然と発達するように国際協力を図ることを目的とするICAOにおいては,常設の機関である航空委員会が設けられているほか,必要に応じて航空会議,地域航空会議,専門家パネル会議等が開催され,これらの問題が専門的に検討されている。
 ICAOの理事会は,1974年度において,ILSの業務提供範囲の拡大を図るためのILSの関係技術基準の改正及び航空緊急用周波数121.5MHzをインターセプションの時に使用可能とすることを内容とする規定の追加等国際民間航空条約附属書の改正を採択している。また,同理事会は最近における航空会社の長距離運航管理通信の需要が増大し,航空移動通信用短波通信チャンネルが不足している事情にあることにかんがみ,ITUに対し,その追加割当てのために世界無線通信主管庁会議を開催するよう申し入れ,ITUにおいてはこの会議を開催する方向で検討がなされている。
(5) 国際無線障害特別委員会(CISPR)
 国際無線障害特別委員会は,電気に関する規格の国際的な統一とこのための協調を促進することを目的とする国際電気標準会議(IEC)の特別委員会として設立されているものである。
 目的は,各種電気機器の無線妨害に関する諸規格(許容限度,測定器,測定法)を国際的に統一して,国際貿易を促進するとともに,放送業務を含む一般無線通信業務を各種電気機器による電波雑音から保護するための国際協力を推進することにある。
 また,CISPRの構成員には,CCIRが含まれており,各種電気通信業務に対する妨害の研究等の相互協力が行われ,諸会合にオブザーバを交換するなど緊密な連係が保たれている。
 CISPRには,総会(3年ごと),運営委員会(毎年),六つの小委員会(妨害波測定器,工業,科学及び医療用機器,電力線,自動車,受信機,各種電気機器)(毎年)及び三つの作業班(雑音防止の安全,用語,苦情統計)(毎年)が設置されているが,1974年には,上記小委員会のみで構成する第一回合同委員会がロンドンにおいて開催され,我が国からは代表7名が参加し,諸規格の検討等について会議の活動に寄与した。更に,1975年には第二回合同委員会がスイスのモントルーで開催されることになっている。
 国内においては,郵政省の附属機関である電波技術審議会がCISPRに関する文書及び国際規格に対する意見等を審議し,重要なものについてはIECの国内委員会である日本工業標準調査会を通じて意見を提出し,その活動に寄与している。
 本年度は67件の審議を行い,このうち可聴周波数準尖頭値電圧計の仕様については文書による意見が出され,8件については賛成する回答を行った。
 また,1974年度において電波技術審議会が国内規格としてCISPR規格を採用又は準拠することを答申したものとしては次のものがある。
 [1] 受信機から発生する不要ふく射の許容値及び測定法
 [2] 家庭用ビデオ機器から発生する妨害波の許容値及び測定法
 [3] 25MHz〜300MHz 妨害波測定規格
 [4] 300MHz〜1,000MHz 妨害波測定規格
(6) 経済協力開発機構(OECD)
 経済協力開発機構は1961年に設立され,1974年3月現在で24か国が加盟している。我が国は1964年に加盟した。経済成長,発展途上国援助,貿易の拡大を目的とし,経済,社会の広範な分野において,加盟国間の政策の調整,情報及び経験の交換,資料作成,共同研究等の協力を行っている。
 科学技術の問題については,科学技術政策委員会(CSTP)が設けられており,更にその下部機関としてテーマ別に幾つかの専門グループが設置されている。
 電子計算機の利用に関する事項は電子計算機利用グループ(CUG)において討議されている。1974年度には,9月に第十二回定例会合が開催されたほか,データバンクパネルにおいてデータ保護の問題が大きく取り上げられ,セミナの開催,報告書の作成,各国の実態調査等の活発な活動が行われた。また,1975年2月にはデータ通信政策会議が開催されデータ通信について社会的意義,資源分配,制度の整備,国際問題の4テーマに分けて討議が行われた。その他都市管理情報技術パネル等においても引き続き活動がなされた。
 情報に関する基本的政策については,情報政策グループ(IPG)があり,第二十一回定期会合(1974年6月),第二十二回定期会合(1974年11月)のほかビューロ会合等において科学技術情報指標等各国の情報政策の比較検討活動が行われた。
 その他,サービスセクタのイノベーショングループの事例研究に「公衆電気通信におけるマイクロ波通信方式の導入」を提出するよう活動を継続中である。
(7) 国際連合アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)
 国際連合アジア太平洋経済社会委員会は,1974年9月それまでエカフェといわれていた国際連合アジア極東経済委員会が名称を改めたものである。
 この委員会は,国連経済社会理事会の監督下にある地域委員会の一つで,地域内各国の経済,社会開発のための協力をはじめ,これに関する調査,研究,情報収集等を行っている。現在の加盟国は,域内国26,域外国5,準加盟国8の計39か国で,我が国は1954年以来域内の加盟国として参加している。ESCAPにおける通信分野の討議は,常設委員会の一つである運輸通信委員会で行われるが,通信に関しては,この委員会の下部機構として,政府間電気通信専門家作業部会と政府間郵便専門家作業部会があり,それぞれ,域内の電気通信又は郵便の開発に関する技術及び経済関係の諸問題を専門家レベルにおいて討議し,その実施状況を検討するなどの諸活動を行っている。
 通信分野における最も大きなプロジェクトは,域内の14か国を対象とする「アジア電気通信網」計画の実現と「アジア電気通信共同体」の設立である。アジア電気通信網については,1977,78年に実現を目途に,現在,計画実現のための技術的,経済的諸問題に関して,ESCAP事務局と関係各国との間の調整会議が数次にわたって開催されており,これらの活動を強化するため我が国からも2名の専門家をESCAP事務局へ派遣して協力している。また,アジア電気通信共同体は,地域内の電気通信の開発と地域電気通信網の完成を推進することを目的として地域内諸国により設立されることになっており,現在,1976年発足を目途に規約案の準備がESCAP事務局によって進められている。
 

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