昭和50年版 通信白書

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3 画像通信システム

(1) テレビ会議方式
 テレビ会議方式は,複数の遠隔地間での会議を可能とするもので,旅行時間を不要にし,省エネルギーに貢献できるため,諸外国でも種々の研究,開発が行われている。英国等一部の国では既にサービスが開始されているが,我が国においても電電公社において数年前から研究,開発が進められており,50年度に東京・大阪間で商用試験が計画されている。
 本方式では,東京,大阪のテレビ会議室が双方向の4MHzカラーテレビジョン映像伝送路によって結ばれており,各会議室にはそれぞれ6〜10名が出席できる。出席者全員の像を見やすくし,かつ,伝送路の有効利用を図るため,出席者の半数ずつを2台のカメラで撮像し,これを合成して1回線で伝送し2台の受像機に表示する画面分割並列表示方式を採用しているほか,1人像,黒板,机上の書画・物品等の映像も切換え表示できる。また,会議に必要な資料の電送用として高速ファクシミリが併設されている。
 このほか,テレビ会議方式の一層の経済化やサービスの利便化を図るため,高感度カメラ使用による照明の簡略化等を行った低コストの移動形テレビ会議装置,静止画像技術を応用して人物と書画を同時に表示できるようにした書画同時表示装置,長距離伝送路に対する帯域圧縮技術の適用等について検討が進められている。
(2) ファクシミリ
 電話網を利用したファクシミリ通信については,事務用ファクシミリの利用が一段と活発化し,電電公社による電話ファクスや各社のファクシミリ装置が商品化されている。
 また,将来の普及を前提に小形化,経済化をねらった簡易形ファクシミリについても各方面で開発が進められている。
 一方,高速化に対する要望については,ファクシミリ信号の冗長度を抑圧して高速化を図る各種帯域圧縮形ファクシミリの研究が活発に行われており,CCITTにおいても技術標準に関する諸問題の審議が進められている。
 広帯域回線を利用した高速ファクシミリについては,FDM方式による群帯域(<1>規格),超群帯域(J規格)を使用したファクシミリ伝送方式に関し,伝送品質の調査検討が進められるとともに,高速化,高品質化をねらいとしたPCM回線利用の高速ファクシミリ方式等についても研究,開発が進められている。
 更に,ディジタルデータ交換網を利用するディジタルファクシミリ方式,同報通信及び異種規格端末間通信を行うためのファクシミリ蓄積交換方式及び回線交換と蓄積交換を併合したハイブリッド交換方式についての研究,開発も進められている。
(3) 行政情報通信用ファクシミリ装置
ア.開発の経緯
 郵政省は,46年度以来行政管理庁と共同して,各省庁の協力を得て,行政情報通信ネットワーク(AICON)の基礎的な調査研究を進めてきたが,48年度からはAICON関連の技術開発として,文書流通に効果的なファクシミリ通信システムの開発を行うこととし,これを郵政省が担当することとなった。
 この研究開発は,公衆電気通信網の開放に伴い,ファクシミリ通信の利用が多方面で増大し,行政の分野でもファクシミリの普及を促進する必要が生じたため,行政機関における文書情報の流通特性に適合した機能(蓄積同報通信,自動送受信,高速化の各機能)を持った行政用標準ファクシミリ通信システムの開発を行うことを目的としたものである。
イ.開発の内容
 49年度は,48年度に開発試作した同報装置と,我が国の代表的メーカ3社によりそれぞれ1対向ずつ計3対向試作した端末装置とにより,公衆電話網を通して運用試験,安定性試験等の通信実験を実施するとともに,ファクシミリ通信システムに関する利用実態の現状と将来動向をは握するため,ファクシミリを利用している官公庁及び民間企業350機関を対象に,ファクシミリ技術動向調査を実施し,それらの結果を反映して「行政用標準ファクシミリ装置仕様書」及び「行政用ファクシミリ同報装置仕様書」を作成公表し,政府行政機関における今後のファクシミリ装置の導入に資することとした。
ウ.開発の成果
(ア) 行政用標準ファクシミリ装置仕様書概要
 行政用標準ファクシミリ装置は,AICONの電話網又は加入電話網を利用し,伝送の迅速化,送受信操作の全自動化等サービス機能の充実と経済性の追求を目的としている。
 このため,情報処理をディジタル化し,新規に開発した2ライン一括モード・ランレングス方式による帯域圧縮により,画情報の符号長を約6分の1に圧縮するとともに,回線条件によりモデムの通信速度を2,400b/sないし9,600b/sに対応できるものとしている。
 また,ファクシミリ通信用に新たに開発したハイレベル伝送制御手順,固体走査方式及び静電記録方式の採用,自動給紙,あて先読取り及び自動送受信の機能のほか,故障,障害時の対応機能をも付加し,信頼性の向上と自動化を図ると同時に,製造メーカが異なった場合においても接続を保証するために,必須項目と推奨項目とに区別して,相互接続条件を明らかにしている。
 これにより,B4判ないしB5判の上質紙からざら紙,更に青焼き紙,ファクシミリ受信紙,コピー原紙等の使用が可能であり,分解能5本/mm以上で,4号活字のB4判原稿を平均約3分で電送出来る性能を持っている。
(イ) 行政用ファクシミリ同報装置仕様書概要
 行政用ファクシミリ同報装置は,同一文書を複数対地に送る場合に使用され,送信端末から伝送された文書を一度蓄積した後,複数対地の受信端末に自動的に送信する装置で,はん用ミニコンピュータを使用した蓄積プログラム制御方式による多重処理,収容回線数10回線,B5判文書で約60枚の蓄積,収容送信機30台,あて先総数100対地等の機能を有する一方,短縮あて先指定,機密保護,通信証明,優先サービス,課金記録,ポーリング処理等の多彩なサービス機能を有する。
 なお,故障,障害時の対応機能をも付加し信頼性の向上を図っている。
 

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