昭和50年版 通信白書

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4 同軸ケーブル情報システム(CCIS)

 CATVは,その構成要素である同軸ケーブルが現在の技術でもテレビ換算30回線近くの極めて多量の情報を伝送する能力があり,テレビジョン再送信以外に多種多様な情報の伝送を可能とするところから,今後コミュニティーネットワークとして最もふさわしい情報メディアであるCCIS(Coaxial Cable Information System,同軸ケーブル情報システム)に発展する可能性を有するものとして一般の期待と注目を集めている。CCISの利用形態としては,放送の再送信,自主番組の提供等放送型のサービスのほかに,システムに双方向伝送機能を持たせることにより,加入者からの要求に基づき情報を提供する個別情報サービス,電気,ガス,水道等の自動検針,防火,防犯のための警報を発するような集配信サービス等を行うことが考えられている。
 CCISについての開発研究は,米国においてパイロットシステムによる実験が行われているが,我が国においても関係機器メーカ等においてここ数年活発に行われてきており,一部のシステム機器については既に実用の段階に達しているものがある。
 しかしながら,現実にCCISが普及発展し,社会的に機能していくためには解決すべき多くの問題がある。
 そこで,この社会的に有用なCCISの普及発展を図るため,郵政省,通商産業省をはじめその他の省庁でCCISの利活用について開発研究が進められている。
 現在多能型のCCISとしては,郵政省の生活情報システムと通商産業省の映像情報システムの二つのシステムの開発研究が具体的に推進されている。
(1) 生活情報システムの開発
 郵政省では,CATVの多角的利用の可能性を検討するため,46年9月にCCIS調査会を設置し,調査研究を行ったが,更にその調査結果等を受けて東京都下多摩ニュータウンにおいて,CCISを利用した生活情報システムの開発実験を行うこととした。実験はCATVの利活用に資するため,テレビジョンの再送信,通常の自主放送のほか,CCISにより実現可能な各種のサービスのうち住民のニーズが特に強く,実現が比較的容易と思われる各種のサービスを提供することにより,住民のニーズ,経済上の諸問題,技術上の諸問題,コミュニティにおけるCCISの役割等を解明することをねらいとするものである。48年度から実験調査に必要な設備等の開発製作に着手し,49年度までに自動反復サービス,有料テレビサービス,放送応答サービス,静止画サービス,ファクシミリ新聞サービス,フラッシュ・インフォメーションサービスの提供に必要な設備等の開発製作,一部番組の作成,実験センタの設置等を完了した。
 50年度には,残る設備等の開発製作,ケーブルの布設等の準備を進め,51年1月から実験を開始することになっている。
(2) 映像情報システムの開発
 通商産業省では,国民生活面への電子計算機の適用による生活の情報化,高度化を通して国民福祉の向上に資する観点から,地域社会の情報化に関して需要技術,産業制度面の実態,動向調査を行ってきた地域情報化システム調査委員会の提言を受け映像情報システムの開発,実験を行うこととした。この映像情報システムは,CATV回路網と電子計算機を中核とする強力な情報制御,処理機能とを組み合わせた双方向の情報システムであり,将来の多彩な情報需要にも応ずることができるいわばモデルシステムともいうべき高度なものである。このシステムでは,家庭に設置される端末機からのリクエストにこたえて,各種データやテレビ番組を提供するデータ・リクエスト,テレビ・リクエスト,生涯教育を可能とするCAI,更に各種予約,防災,防犯,保健等の多くのサービスを提供する。そして,奈良県東生駒地区をモデルタウンとして実験を実施することにより,生活の場における情報化の在り方の研究や最適なシステム機器の開発及び研究システムの経済性や需要動向等の調査研究を行うこととしている。
 この映像情報システムの開発は47年度から開始され,47年度には調査及び概念設計,48年度にはシステム設計,49年度には主要機器等の試作,開発を行った。50年度からは機器等の製作や実験施設の整備が行われるが,これらの機器等の据え付け,調整後約1年半の間実験が実施される計画である。
 

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