昭和50年版 通信白書

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3 今後の課題

 通信は経済・社会基盤施設として不可欠なものであり,その整備状況が経済・社会・文化に与える影響は極めて大きい。近年,開発途上国は通信の重要性を認識して,各国とも国内,国際を問わず通信網を充実させるためのプロジェクトを積極的に推進しはじめている。我が国は東南アジアを中心として,中近東,アフリカ,中南米の開発途上国に対し技術協力及び資金協力を行っており,国際間の相互理解,友好関係の樹立に大きな成果をあげてきた。今後ますます増大すると予想される通信分野での我が国への国際協力の要請に応じていくためには,次のような配慮が必要とされる。
 第一は,海外からの研修員の受入施設の整備である。政府ベースによる通信関係の技術研修は,現在,郵政省のほか電電公社,国際電電,NHK,民間放送,通信機器メーカ等の自社職員のための訓練施設等を利用して行っている。このような状況では,今後増大する研修需要に対処していくことは困難であり,我が国がこのような要請に応じて効果的な国際協力活動を行ってゆくためには,通信分野における専門の研修施設を設ける必要がある。
 第二は,研修員に対する事後指導の実施である。これまでに我が国で受け入れた通信分野の技術研修員の数は,既に2,000名を超える多人数となっている。これら研修員の技術研修成果を持続的に一層効果あらしめるため,巡回指導班の派遣,帰国研修員の日本での再訓練等きめ細かい事後指導を行う必要がある。
 第三は,技術協力専門家の養成,確保である。通信分野における技術協力専門家の需要は,研修員の指導,現地調査,現地指導及び企画・助言活動等の面で,今後ますます増大することが見込まれる。この需要に応ずるため,通信技術はもちろん教育技法,語学,現地事情に通じた専門家を数多く養成,確保する必要がある。
 第四は,個々の援助プロジェクトの策定に当たって,対象国に対する総合的,長期的視野に立った検討が必要であり,このための資料の整備及び国別,地域別計画の策定である。これにより,単に相手国からの要請に基づいて協力活動を行うのではなく,相手国の実情に即した通信システムの在り方,優先順位等を検討した上で,技術協力と資金協力の間に有機的関連を持たせた協力活動を行っていく必要がある。
 第五は,コンサルタントの育成強化である。開発途上国では開発プロジェクトを実施してゆく場合,技術力不足のため当初の開発調査,計画立案から入札資料作成,更には,工事監督まで一貫した協力を行うコンサルタントを必要としている実状である。特に通信の分野は高度に技術性が強いため,国際コンサルタントの需要も非常に高いので,我が国においてもその育成強化が必要である。
 

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