昭和50年版 通信白書

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第2部 各   論

第1章 郵   便

 第1節 概   況

 49年度,郵便事業は人件費の急騰等により,収支のバランスが大きく崩れ,事業財政が急激に悪化したため,このような事業収支を改善し,財政基盤を確立することが,本年度の喫緊の課題であった。
 事業収支をみると,郵便業務収入はほぼ計画どおり確保されたが,年度当初から696億円の赤字予算を編成せざるを得なかったことに加え,支出の面では仲裁裁定等の実施によりベースアップが29.7%というかつてない大幅なものとなったため,人件費の支出増が著しく,1,247億円の赤字となり,郵便事業財政は極めて憂慮すべき事態に立ち至った。
 このような郵便事業財政悪化の見通しの上に立って,48年12月郵政審議会は郵政大臣の諮問「郵便事業の健全な経営を維持する方策について」に対し,「この際郵便料金の改正を行うことが適当である」旨の答申を行った。しかしながら,政府の公共料金抑制策の一環として小包料金を除いては49年度における郵便料金の改正は実施されなかったために,依然として郵便事業財政状況は改善されず,49年11月郵政大臣から再度同審議会に対し,「郵便料金の改正について」の諮問がなされた。これに対し第一種50円,第二種30円とし50年4月から実施することを骨子とする料金改定案が答申されたが,物価を極力抑制するという政府の方針の下に実施時期については50年10月に延期するほか,第二種については20円に抑えることとして「郵便法の一部を改正する法律」案が第75通常国会に提出されたが,審議未了となった。
 次に,業務運行状況についてみると,年度当初からとかく安定を欠きがちで一部の郵便物について郵便日数表どおりの送達速度を維持できない事態が生じていたが,特に春期及び年末期において労働組合が業務規制闘争や大規模なストライキを実施したため,この時期の業務運行は一部において乱れた。また,大阪国際空港における航空機の騒音問題に関連して,49年3月から同空港における深夜の郵便専用機の発着を廃止し,同年11月からは全国的に郵便専用機が廃止され,これに伴い一部地域の郵便物送達速度が半日ないし1日程度低下することとなり,郵便日数表の一部を変更した。
 郵便の需要,事業経営等の観点から長期的視野に立って郵便の将来ビジョンを探るため,49年6月いろいろな分野の学識経験者によって構成された「郵便の将来展望に関する調査会」が設置された。1年目の調査研究の結果は,50年3月に,郵便の本質論,主体論,機能論,比較メディア論を内容とする郵便コミュニケーションの理論的考察,郵便利用の大宗をなす企業の通信手段の利用実態や郵便と他の通信メディアとの代替,補完の関係に関する定性的分析,一般の利用者の郵便利用に関する意識調査等を内容として中間報告された。

 

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