昭和49年版 通信白書

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2 通信事業の動向

(1) 通信事業の収支状況
 48年度には,賃金・物価の高騰が著しく,経費の増大は通信事業においても各事業体の収支を圧迫し,特に郵便事業では赤字を計上するに至った。
 各事業体別に48年度の収支状況をみると次のとおりである。
 郵便事業では,人件費の占める割合が極めて高く,人件費の大幅な増加は,事業収支に大きく影響を与え,250億円の赤字となった。
 電電公社では,年度前半の好況に支えられて209億円の黒字となったが,後半は我が国経済の停滞,人件費の高騰等の影響を受けて収支悪化の兆しをみせた。
 国際電電では,国際通信の大幅な伸びにより,利益は前年度に比べ36.5%増の101億円となった。
 放送事業では,NHKは事業収支で179億円の黒字となったが,放送会館の売却等の特別収入315億円,特別支出127億円を除いた経常事業収支においては10億円の赤字となった。
 民間放送は,主として広告収入によっているが,新聞,雑誌などの広告を含めた総広告費は対前年度比22.6%増と大幅な伸びを示し,このうちラジオ広告費が15.9%増,テレビ広告費が24.0%増となった(以上(株)電通調べ)。これに伴い48年度の民間放送の営業利益も民間放送全体で34.5%増となった。
(2) 通信事業の財務状況
 48年度における各通信事業の財務比率は第1-1-6表のとおりである。
 郵便事業では,労働装備率が低いことが目につくが,これは人力依存度の高い事業の性格によるほか,局舎借入れ,輸送の外部委託等の運営形態をとっていることによるものである。
 電電公社では,全国的な規模の設備を有する事業であることを反映して,総資産に占める固定資産の比率が88.2%,労働装備率が1,298万円と高い値を示している。固定比率は276.3%であるが,固定資産対長期資本比率は91.3%となっている。これは,固定負債の額が大きいからであり,電信電話債券の総資本に占める割合は64.4%に達している。
 国際電電は,設備投資の増加に伴い,総資産に占める固定資産の比率が増加した。また負債比率が53.8%と他の通信事業に比べ低くなっている。
 NHKは,放送会館の売却もあって,総資産に占める固定資産の比率が低下した。
 民間放送においては,総資産に占める固定資産の比率はNHKに比べ低いが他産業よりはやや高くなっている。
(3) 通信事業の設備投資状況
 48年度の通信事業の設備投資額は第1-1-7表のとおり1兆2,831億円で,対前年度増加率は8.7%であった。
 郵便事業では,都市近郊の人口増加などに対処するための局舎建築,局内作業の機械化を進めているが,48年度は総需要抑制策の一環として,設備投資の一部繰延べが行われたため,投資額は467億円となり,対前年度比では14.5%増にとどまった。
 電電公社の設備投資額は,対前年度比9.1%増の1兆1,681億円となったが,郵便事業と同様1,249億円の繰延べが実施された。しかしながら,一般加入電話,公衆電話等国民生活に関係の深いものについては,当初の予定通り実施された。
 国際電電では,設備投資額は対前年度比27.8%増の203億円となったが,これは国際通信センター建設等急増する国際通信に対処するための投資である。
 NHKの設備投資額は,対前年度比40.0%減の166億円となった。これは主として,放送センターに対する投資が前年度で終了したことによるものである。
 これらの設備投資等のための資金調達状況をみると,次のとおりである。
 郵便事業においては,郵政事業特別会計の設備投資額467億円のうち184億円が財政投融資(簡保資金)からの借入金である。
 電電公社においては,資本勘定の規模は1兆4,564億円であり,このうち8,034億円が加入者債券,政府保証債券等の外部資金である。内部資金の比率は44.8%であり,前年度の43.2%を若干上回った。資金調達上債券の比重は高く,発行残高は48年度末で3兆2,930億円に達しており,我が国の公社債全体の発行残高(外貨債を除く。)の7.9%を占めている。
 国際電電及びNHKでは,設備投資はいずれも内部資金で賄われた。

 

第1-1-5表 通信事業の収支状況

第1-1-6表 通信事業の財務比率

第1-1-7表 通信事業の設備投資額

 

 

 

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