昭和49年版 通信白書

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第4章 データ通信

第1節 概   況

 電子計算機等を電気通信回線に接続して行うデータ通信は,46年の公衆電気通信法の一部改正により,電気通信回線の共同使用及び他人使用の制限が緩和され,それまでの同一企業内情報処理手段としての地位から,広く社会一般の情報処理手段としての地位を占める可能性を与えられた。また,データ通信サービスの提供については,従来の電電公社の独占から電電公社と民間情報通信事業者とが互にその特徴を生かしながら行うという制度的体制の確立もこの公衆電気通信法の一部改正により行われた。いわばこの年はデータ通信が正式に認知されるとともに,情報通信事業が誕生した年であった。
 48年度は,46年,47年に引き続きデータ通信利用制度の整備が細部にわたって実施され,いわゆる通信回線開放に伴う一連の措置が一応完了した年であった。また,この制度的基盤の下に従来の自営システムが急増し,データ通信が本格化したのみならず,民間情報通信事業者の相次ぐサービス開始や,電電公社のデータ通信システムサービスの増加など,情報通信事業が発展を開始した1年間であったといえよう。このデータ通信の飛躍的発展の跡は,単にシステム数の増加のみならず,使用回線数の増加,使用端末数の増加という面からとらえてみても,うかがい知ることができる。
 データ通信利用面においては,従来の企業経営の効率化を目指すもののほか,高度成長のひずみとして発生した公害や交通混雑等の問題を解決するための公害監視システムや交通制御システム等が地方公共団体において広く活用されはじめた。更には医療情報システム,環境情報システム,貿易情報システム等,個人の福祉や社会開発を指向した国家的規模のシステムも開発研究が進められた。また,外国に設置されている超大型電子計算機に,加入電話を通じて簡単にアクセスすることのできるシステムもサービスが開始された。これら諸システムの社会に与える効用は,計り知れないものが予想される。
 一方,個人生活に及ぼす諸影響も看過できず,個人データの集中化によるプライバシー侵害の危険性等,データ通信発達におけるマイナス効果についても引き続き各界で真剣に論議された。マイナス効果を除去し,データ通信の効用を最大限に活用するための対策が今後の重要な課題となるであろう。また,民間情報通信事業の誕生により,公共企業体としての電電公社が提供すべきデータ通信サービスと,民間情報通信事業者の提供するデータ通信サービスとをめぐって,各々が対象とする分野,提供条件等,いわゆる公正競争問題が発生した。誕生したばかりの国内情報通信事業者が,巨大な資本と技術とをもった外国系情報通信事業者に,51年度に予定されている情報処理関連産業の自由化を控えて,どのように対処するかも重要な問題となっている。
 データ通信技術の発達に伴い,いわゆるコンピュータネットワークの構想も一部で検討が開始され,今後システム相互間の接続等,データ通信利用の高度化が進展するものと予想される。このような背景の下にデータ通信に関する調査研究,電気通信回線利用に関する相談,指導等,データ通信の健全な発展と普及を図る機関として,財団法人日本データ通信協会が公衆通信事業者,電子計算機メーカー,情報通信事業者 ユーザ等により設立された。

 

 

 

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