昭和49年版 通信白書

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2 業務別周波数割当の現状

(1) 固定業務
 固定業務に分配されている周波数帯は,第2-6-4表に示すとおりである。
ア.30MHz以下の周波数帯は,数年前までは国際通信用として広く使用されてきたが,衛星通信,海底ケーブルの導入により国際通信に占める役割は減少の一途をたどり,現在,短波回線が全回線数に占める比率は約3%にすぎなくなっている。したがって,今後は主として衛星,ケーブルのいずれも使用することが困難な対地向け通信及び衛星,ケーブルの障害時のバックアップ回線用として使用されることとなろう。
 また,国内通信用としては,離島通信,市況情報等の同報通信,災害対策用,保安用等短波帯の特質を生かした回線に使用されている。
イ.30MHz〜1,000MHzの周波数帯は,中小容量の局地系の通信,災害対策用の通信,音声放送の中継,移動業務における通信所と送受信所間の連絡回線等に割り当てられており,今後もかなりの需要が見込まれている。
 この周波数帯は,移動業務に最も適した周波数帯であり,今後固定業務のために新たな周波数帯を設けることは困難なので,既割当ての周波数帯内での効率的使用を図る必要がある。
ウ.1GHz以上の周波数帯は,一般にマイクロ波帯といわれる周波数帯で大容量の無線中継方式に適し,公衆通信及び公益,治安,行政等の業務の幹線系,支線系の通信網に広く使用されている。この周波数帯については,我が国は世界有数のマイクロ波利用国といわれるように高い密度で使用されている。
 また,将来のマイクロ波帯の需要は情報化の進展とともにデータ通信,画像通信等の新しい通信需要を含め,大幅な増大が予想されているので,今後,空中線の指向性を利用して地域的な周波数の共用を一層図っていくとともに,いわゆる準ミリ波帯及びミリ波帯の開発あるいは衛星通信の利用を進めていく必要がある。
(2) 放送業務
 放送業務に分配されている周波数帯は第2-6-5表のとおりである。
ア.標準放送
 標準放送は525kHz〜1,605kHzの中波の周波数帯を使用し,10kHzの周波数間隔により108chの割当てが可能である。我が国はこのうち,外国混信などのため使用できないものを除き100chの周波数を「標準放送用周波数割当計画」に従い,48年度末現在NHK及び民間放送の計474局に割当てが行われている。
 標準放送波帯は世界的に非常に混雑しており,更に,周波数間隔が第1地域(欧州・アフリカ)では9kHz,第3地域(アジア・オセアニア)では10kHzと異なっているため,いわゆるビート妨害を生じ,周波数の利用効率を著しく低下させている等の理由から,長・中波放送に関し1974年及び1975年に両地域の合同主管庁会議の開催が予定されている。この会議では,統一した技術原則を定め,第1及び第3地域全体の周波数割当計画の作成について審議されるものと思われるが,世界で最も高密度にラジオ放送を実施している我が国にとって重大な影響を及ぼすと考えられ,伝搬特性,周波数間隔,混信保護比等の技術基準,周波数登録状況等について調査,検討が行われている。
イ.超短波放送
 いわゆるFM放送のための超短波放送用の周波数としては,76MHz〜90MHzが分配されており,「超短波放送用周波数割当計画」に従ってNHK及び民間放送に対し割当てが行われている。
ウ.短波放送
 短波帯で放送用に分配されている周波数帯は,3,6,7,9,11,15,17,21及び25MHz帯の一部で合計462ch(5kHz間隔)である。
 我が国では国内放送用として6波の割当てを行っているほか,国際放送用として32波の割当てを行っている。
 短波帯の放送業務用の周波数については,無線通信規則の規定により年4回季節別の周波数をIFRBに提出し,IFRBは技術審査と各国間の調整を行い,必要に応じて関係主管庁に勧告を行うこととなっており,この勧告を受けた主管庁は,これを勘案して周波数の割当てを行うという建前がとられている。しかしながら,第2-6-6図に示すように世界各国の周波数使用は逐年増加しており,更に最近は各国とも大電力化を図っているために混雑がはなはだしく,我が国の国際放送についても,近年,太陽黒点数の減少などもあって一部地域においては良好な受信の確保が困難となりつつあるが,各国の周波数計画,聴取状況,伝搬条件等を考慮して,季節ごとに最適な周波数の選定を図るよう努めている。
エ.テレビジョン放送
 テレビジョン放送はVHF帯(90MHz〜108MHz及び170MHz〜222MHz)の12ch,UHF帯(470MHz〜770MHz)の50chを使用し,「テレビジョン放送用周波数割当計画」に従い割当てを行っている。
(3) 陸上移動業務
 陸上移動業務に分配されている周波数帯は,短波からマイクロ波まで広範囲に存在するが,電波の特性上から陸上移動業務に適している周波数帯は,一般にVHF帯及びUHF帯が中心であり,この周波数帯の割当ての状況は,第2-6-7表のとおりである。
 これらVHF帯及びUHF帯の陸上移動業務用周波数帯は,無線局の使用が最も混雑しており,従来から割当周波数間隔の縮小,セルコール式の採用等による周波数共用,集中基地方式の採用など周波数の有効利用を図ってきている。
 単一通信路用の周波数帯においては,60MHz帯でば30kHzから15kHz間隔へ,150MHz帯では40kHzから20kHz間隔へ,400MHz帯では50kHzから25kHz間隔へ,それぞれ周波数間隔の縮小を48年度末に完了した。
 陸上移動業務は,自動車交通の発達,移動体との間の迅速な通信の確保の要求に伴い,都市部を中心に今後ますます増大の傾向にあるので,VHF帯及び400MHz帯についてち密な割当計画を定めて一層周波数の有効利用を図るとともに,今後800MHz帯等の技術開発を促進することが必要となろう。
(4) 海上移動業務
 海上移動業務に分配されている周波数帯は,第2-6-8表のとおりである。
 海上移動業務は人命の安全に直接関連のある業務であり,世界的ベースで専用周波数帯が分配されている。また,500kHz,2,182kHz,156.8MHzの周波数は遭難及び呼出周波数として国際的な保護が与えられている。
ア.短波帯の専用周波数帯は,割当周波数及び割当基準が国際的に定められている。これらの周波数は無線電信用と無線電話用とに大別されているが,細分については第2-6-9表のとおりである。
 無線電話海岸局に割り当てる周波数は,無線通信規則附録第25号に掲げる周波数区域分配計画により,国別に分配されており,分配された国がその周波数を使用する場合は有害な混信から国際的な保護を受ける権利が認められている。我が国は米国,ソ連に次いで多数の周波数の分配を得ているが,無線電話の船舶局は世界的に増加する傾向にあるので,今後,周波数の不足が予想される。また,無線電信については,従来の手動電信,ファクシミリに加え,1967年の世界無線通信主管庁会議(WARC)により,印刷電信,データ伝送方式の使用が認められたので,同様に周波数事情はひっ迫してきている。このため,1974年にはWARCが開催され,短波帯の海上移動用周波数について再検討されることとなっている。
イ.154.675MHz〜162.0375MHzのVHF帯は,国際海上移動無線電話,沿岸無線電話及び一般海上関係の業務に広く使用されている。
 特に沿岸無線電話は海上交通の発達に伴い需要が急増しており,この需要に対処するため新たに250MHz帯の導入が図られつつある。
 また,国際海上移動無線電話周波数帯については,昭和51年から周波数間隔を50kHzから25kHzに縮小することになっている。
ウ.我が国においては,漁船の通信は専用通信として行われており,操業海域の相違等により,中短波,短波及びVHF帯の周波数を割り当てているが,遠洋漁業用の短波帯及び小型船舶に対する近距離通信用の26及び27MHz帯の需要が特に増大している。
エ.将来,海上移動業務においては,船舶の大型化,航法の高度化等により大容量,高品質の長距離通信回線の需要増が見込まれている。このため,現在の短波に代わり宇宙通信技術の導入が期待され,政府間海事協議機関(IMCO)においても海上衛星開発のスケジュールが検討されており,周波数としては1.5GHz帯の利用が考えられている。
(5) 航空移動業務
 航空移動業務は,海上移動業務と同様人命の安全に直接関連のある業務であり,かつ,著しく国際性を有するので,原則として世界的ベースで専用周波数帯が分配されている。
 航空移動業務には主として民間航空路に沿う飛行の安全に関する通信のための航空移動(R)業務とそれ以外の航空移動(OR)業務の区分がある。
 航空移動業務用の周波数分配の状況は,第2-6-10表のとおりである。
ア.航空移動(R)業務
 航空移動(R)業務専用に分配されている周波数帯の使用に際しては,航空機の安全に関する通信が優先することになっている。また,航空移動(R)業務の使用に関しては,国際民間航空機関(ICAO)において技術基準,国際航空の周波数使用計画等が定められており,我が国でもこれを尊重している。短波帯については,無線通信規則附録第27号に世界的な周波数区域分配計画が定められており,我が国でもこの計画に従って主として遠距離通信用に割当てを行っている。
 また,空港等における管制通信の主力は現在,高品質の通信が可能なVHF帯の118MHz〜136MHz帯を使用するようになってきており,空港の整備に伴う需要の増大に対処するため,周波数間隔を100kHzから50k比へ縮小することを実施中で,51年8月末に完了の予定である。
イ.航空移動(OR)業務
 航空移動(OR)業務には主として短波帯及び138MHz〜142MHz,235MHz〜328.6MHzのVHF帯,UHF帯が分配されており,海上保安用,防衛用,新聞・報道用等に使用されている。短波帯については,無線通信規則附録第26号に区域分配計画があるが,我が国ではSSB(単側波帯)化により周波数の有効利用を図っている。
 VHF帯では現在50kHz〜100kHz,UHF帯では100kHz〜200kHzの周波数間隔で割当てを行っている。
(6) 無線測位業務
 無線側位業務は,電波の伝搬特性を利用して,位置の決定又は位置に関する情報の取得を行う業務であり,船舶及び航空機の航行のための無線測位を行う無線航行業務,無線航行以外の目的のための無線測位を行う無線標定業務がある。これらの周波数分配の状況は,第2-6-11表のとおりである。
ア.無線航行業務
 無線航行用の周波数帯は,短波帯を除く全周波数帯にわたって分配されている。
 長・中波帯は船舶及び航空機の位置決定のシステムのために割り当てている周波数帯で,ロラン,デッカ,海上ビーコン,航空ビーコンに使用されており,また,近く遠距離の高精度航行システムのオメガに対する割当てが予定されている。海洋開発などに伴い局所的な精密位置決定システムの需要が最近多くなっており,このために中波帯の割当てが必要になっている。
 30MHz〜1,000MHz帯は,主として航空無線航行に割り当て,VOR(VHF全方向式無線標識施設),ILS(計器着陸用施設),DME(距離測定用施設),TACAN(UHF全方向方位距離測定用施設)等に使用されている。また,マイクロ波帯は,船舶,航空機,空港監視,航空路監視のレーダ,マイクロ波ビーコン等に割り当てられている。
 海上無線航行では,今後,港湾を含む沿岸海域における海上交通のふくそうに対処するため準ミリ波帯,ミリ波帯の高精度の監視レーダも実用に供されてきている。
 なお,より正確かつ迅速な位置の決定及び通報の必要性に対処するため,衛星を利用した位置決定システムの導入が今後検討されることとなろう。
イ.無線標定業務
 無線標定業務に分配されている周波数帯は,短波帯を除く全周波数帯にわたっているが,主としてパルス方式のレーダに使用されている。
 低い周波数帯は精度は低いが探知距離の長いレーダに,高い周波数帯は探知距離は短いが精度の高いレーダにそれぞれ適している。
 パルス方式のレーダのほか,航空機,船舶,車両等の位置,速度の測定用としてCW方式(持続電波方式)のものも最近増加している。
 なお,1,605kHz〜2,495kHzの中短波帯においては漁業用のラジオブイが多数使用されている。
(7) その他の地上業務
 気象援助業務,アマチュア業務,標準周波数業務に分配されている周波数帯の状況は,第2-6-12表のとおりである。
ア.気象援助業務
 気象援助業務に分配されている周波数帯は400MHz帯の約12MHzと1.6GHz帯の40MHzであり,ラジオゾンデ用,気象データを伝送するラジオロボット及びロボット中継用に使用されている。
 ラジオゾンデは,1.6GHz帯を使用するものが多くなっている。
 また,最近,公害対策としての下層大気の観測及び海洋資源の開発のためのデータの伝送等の需要が増大しつつある。
 なお,衛星からの気象観測や衛星を経由する気象観測資料の収集のための気象衛星システムが国際的規模で計画されており,我が国でも51年度打上げを目標に開発が進められているが,主要な使用周波数は1.5GHz〜2GHz帯が予定されている。
イ.アマチュア業務
 アマチュア業務周波数帯は,1,907.5kHzから24.25GHzまでの間において15周波数帯が分配されている。
 アマチュア無線は,電波技術の発展あるいは災害時における通信の確保等に貢献をしてきており,48年度末現在全国で約23万5千局の多数の局が運用されている。
ウ.標準周波数業務
 標準周波数業務に分配されている周波数帯は短波以下の7周波数帯である。
 標準電波は,周波数,時刻,時間間隔の標準を一般に供する目的で発射されており,我が国では郵政省電波研究所に標準周波数局が設けられ,2.5MHz,10MHz,15MHzが常時発射され,機器の調整,較正,各種観測,学術研究等に広く利用されている。
エ.その他
 簡易無線業務用としては26MHz帯に11波,150MHz帯に9波及び400MHz帯に10波の個別周波数を定めている。
 また,信号報知業務用としては,半径約1km以内の狭い地域で専用に使用するものに対しては26MHz帯,一般の用に供するものに対しては150MHz帯が割り当てられている。
(8) 宇宙無線通信業務
 1971年の宇宙通信に関する世界無線通信主管庁会議(WARC-ST)の結果,衛星を使用する無線通信の業務に対して275GHzまでの周波数帯で多くの新しい周波数が分配された。
 我が国においても実験用中容量静止通信衛星,実験用中型放送衛星,気象衛星等の打上げ計画が具体的に進められており,今後衛星計画に関する情報の事前公表,関係主管庁との周波数の調整などの事務手続を含め,宇宙通信に関する周波数割当てが本格化するものと考えられる。
ア.固定衛星業務
 固定衛星業務には,2GHz〜275GHz帯において計43,245MHzが分配されているがこのうち約11,245MHzが地上の他の業務と共用となっている。4GHz帯及び6GHz帯の各500MHzはインテルサットの国際公衆通信用として世界的に使用されている。
 衛星通信は国際通信の約60%を占めているが,将来の大幅な需要増に対処するためインテルサットでは,1978年〜1982年にかけて,現在の<4>号系衛星の約3.5倍の容量を有する11GHz,14GHz帯を利用したV号系衛星の開発を計画している。
 また,我が国は51年度の打上げを目標に実験用中容量静止通信衛星の開発を進めているが,使用周波数帯は,地上との干渉等を考慮して17GHz〜29GHz帯の準ミリ波を利用することが計画されている。
イ.放送衛星業務
 1971年のWARC-STにおいて,放送衛星業務に対し初めて周波数が分配されたことを契機として各国で具体的な放送衛星の計画が進められている。我が国においても51年度の打上げを目標に実験用中型放送衛星の開発を進めている。
 使用周波数帯としては地上系との干渉,アンテナの大きさ及び指向性,伝搬特性等を考慮して,現段階では下り回線には12GHz帯が,放送衛星の上り回線には14GHz帯が適当と考えられているが,12GHz帯については,1977年に予定されている世界無線通信主管庁会議で国際的な周波数割当計画が検討される予定である。
ウ.宇宙研究業務
 宇宙研究業務用の周波数帯幅は,WARC-STの結果,従来の約4.5GHzから約37GHzと大幅な分配の増加が図られた。特に,40GHz以上の周波数帯では専用で5GHz,共用で29GHzと受信のみを行う宇宙研究に大幅な分配が行われている。
 我が国では東京大学及び宇宙開発事業団において,49年度から52年度にかけて科学衛星,技術試験衛星,電離層観測衛星の開発が進められており,テレメータ,コマンド,ビーコン用等に136MHz帯,150MHz帯,400MHz帯,R&RR(距離及び距離変化率測定)用に2GHz帯,伝搬試験,通信実験用にマイクロ波帯,ミリ波帯の割当てが必要になるものと考えられる。
エ.その他
 気象衛星業務については既に述べたとおりであるが,そのほか,航空移動衛星業務,海上移動衛星業務,無線航行衛星業務,アマチュア衛星業務等に対しても将来に備えて周波数の分配が行われている。
(9) 電波天文業務
 電波天文業務は,宇宙から発する電波の受信を基礎とする天文学の業務で,周波数の分配は,第2-6-13表のとおりである。
 我が国では電波天文業務用に専用に又は優先的に分配した周波数帯を受信する設備であって,一定の基準に適合するものについて指定を行い,受信の保護を行っている。
 現在1,400MHz〜1,427MHzの周波数を受信する東京天文台の受信設備が指定されている。

第2-6-4表 固定業務用の周波数分配状況

第2-6-5表 放送業務用の周波数分配状況

第2-6-6図 短波放送用周波数登録の年度別推移(全世界)

第2-6-7表 VHF帯及びUHF帯陸上移動業務用の周波数の数(48年度末現在)

第2-6-8表 海上移動業務用の周波数分配状況

第2-6-9表 海上移動業務用周波数帯の分配状況

第2-6-10表 航空移動業務用の周波数分配状況

第2-6-11表 無線測位業務用の周波数分配状況

第2-6-12表 気象援助,アマチュア及び標準周波数の各業務用の周波数分配状況

第2-6-13表 電波天文業務用の周波数分配状況

 

 

 

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