昭和49年版 通信白書

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第5節 事業財政の現状

 最近における郵便事業の収支状況は,第2-1-27表のとおりである。
 事業経営に必要な経費のなかで人件費関係経費の占める割合が極めて高いため,近年における人件費の高騰は,郵便事業財政を著しく圧迫している。
 48年度においては,46年度14.7%,47年度13.5%と,高率の賃金上昇が引き続いたことなどにより,当初から133億円の赤字予算を編成せざるを得ない事態となり,これについては,持越現金の充当により対処することとしたが,更に,48年度における賃金上昇が17.5%と大幅なものになったことによって年度決算において250億円の赤字となり,財政事情は一層ひっ迫の度を加え,事業経営は極めて憂慮すべき事態となった。
 なお,郵便物数,郵便業務収入及び郵便業務費の推移(30〜48年度)は第2-1-28図のとおりである。
 このような事業財政の悪化に対処するため,48年10月,郵政大臣から郵政審議会に対し「郵便事業の健全な経営を維持する方策について」諮問が行われ,同年12月,同審議会から大臣へ答申がなされた。その答申においては,「近年の賃金高騰などにより事業財政がひっ迫の度を加え,このまま推移すると,事業経営は危機にひんする状況にあると認め,また,事業収支の不足額は,郵便事業にとって少なからざるものであり,かつ,労働集約的な郵便事業の特質もあって,各種の合理化施策によっても,短時日に効果的にその不足額を償う方策はないと認めた。一方,利用者負担の原則をはなれた事業収支改善の方途は,一時的な糊塗策にすぎず,また,企業の利用が圧倒的部分を占める最近の郵便利用の実態などからみても,適切なものではないと判断した。加えて,今日の諸情勢の下においては,現行料金のまますえ置くならば,近い将来において大幅な値上げを余儀なくされるなど,かえって国民に大きな迷惑をかけ,その措置いかんでは,健全な経営を維持することを一層困難にするものと思われる。以上総合的に勘案した結果,事業収支の改善をはかるためには,この際郵便料金を改正することが適当である。」として,具体的料金改正案が提起された。
 しかしながら,たまたま,石油危機に端を発した資源不足や物価高などを背景とした政府の公共料金抑制策の一環として,小包料金を除いては料金改正を織り込まないこととして,49年度予算の編成を行ったため,49年度における事業財政は年度当初から約700億円の赤字を抱える立場におかれた。
 独立採算制を建前として経営する郵便事業としては,やはり事業の置かれているこうした実情について,国民の深い理解と協力を得ることに努め,できる限り早期に財政改善措置を行う必要に迫られている。

第2-1-27表 郵便事業の収支状況

第2-1-28図 年度別郵便物数,郵便業務収入及び郵便業務費の推移

第2-1-29表 郵政事業の人件費上昇率及び給与ベースの推移

 

 

 

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