昭和49年版 通信白書

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5 その他の国際機関

(1) 国際連合宇宙空間平和利用委員会
 宇宙の利用及び開発技術は近年急速な発達をみせており,これを人類の福祉,社会の発展に資するために利用することの重要性は年ごとに増し,各国は大きな関心を示している。
 宇宙空間の平和利用に関する法律問題及び科学技術面の国際協力等を検討し,国連総会にこれを報告することを任務としている宇宙空間平和利用委員会においては,補助機関として法律小委員会,科学技術小委員会及び直接放送衛星作業部会が設けられ,これらの問題についてそれぞれ専門的に検討が行われている。48年度中には次の諸活動が行われた。
 直接放送衛星作業部会は,主として直接衛星放送の技術的,経済的,法律的側面の諸問題について審議するため設けられ,1969年2月から1970年5月までに3回会合が開かれた。その後活動を一時休止していたがITUが1971年の宇宙通信に関する世界無線通信主管庁会議において宇宙通信に関する諸規定を整備拡充したこと,ソ連が「直接テレビジョン放送衛星条約案」を国連に提出し,放送衛星の国際規律について審議を求めたこと,ユネスコにおいても,「衛星放送の利用に関する指導原則の宣言」を採択したこと等の情勢の進展にかんがみ,再開が決定され48年度中に2回の会合が行われた。第4会期では,カナダ,スウェーデン共同提案による「テレビジョンの衛星放送を規律する原則の宣言案」が提出されるとともに各国代表から各般の問題について意見が述べられた。大勢としては厳格な規律を要求する原則の早期作成を可とする意見が多かった。また,第5会期においても同様,衛星放送の技術的,経済的側面に関する前提事項について引き続き検討が行われるとともに,上記原則の内容となるべき事項14項目について初めて項目ごとに論議が交わされた。
 宇宙に関する法律面の問題の審議を任務とする法律小委員会においては,月面における活動の規制等を目的とする「月条約」及びロケット・人工衛星の国際登録制度の確立を目的とする「宇宙物体登録条約案」が前会期に引き続き審議されたが採択されるまでには至らなかった。
 科学技術面での国際協力等の審議を任務とする科学技術小委員会においては,一般討論のほか,人工衛星による地球の遠隔探査に関する作業部会の報告,宇宙技術応用に関する国連プログラムの状況等について審議された。我が国は,国連フェローシップによる「衛星通信コース」研修生を受け入れる用意があることを表明した。
 また,我が国は,国際協力促進の一環として,「教育用衛星放送システムに関する国連パネル会議」の開催を招請し,同会議が1974年2月26日から3月7日まで東京において開催された。この会議には,22か国,7国際機関が参加し,各国の宇宙応用計画の紹介,教育放送の利用状況と効果の紹介,教育衛星放送に関する国際協力についての討議等が行われた。
(2) 政府間海事協議機関(IMCO)
 無線通信は海上における人命の安全の確保,船舶の航行の能率化を図るために重要な役割を果たしている。近時,船舶の航行の増加及び自動化等に伴い,海上移動通信においては,混雑の緩和,質及び速度の改善,遭難及び安全通信の改善等の必要性に迫られている。海上を航行する船舶の安全のための国際協力を図ることを目的としているIMCOにおいては,常設機関である海上安全委員会に無線通信小委員会及び海事衛星専門家パネルが設けられ,これらの問題が検討されている。48年度においては次のような諸活動が行われた。
 海上における無線通信の全般的な問題を検討することを任務とする無線通信小委員会においては,第12会期が開催され,さきの会期で作成された「海上通信に関する世界無線通信主管庁会議の準備のための各国への勧告案(海上遭難通信制度の改善等に関するIMCO側のITUに対する要求)」の再検討及び船舶への航行警報の伝達方法の検討等が行われた。また,500〜1,600トンの貨物船の無線電話局においては,安全の面から通信士2名(現行1名)を配置することについて1960年海上人命安全条約の関係規則の改正案が採択されたが,同小委員会の上部機関である海上安全委員会において,専従の無線電話通信士の乗組が義務付けられている場合には,1名の無線電話通信士の乗組で足りることとするよう更に,無線通信小委員会において検討させることとなった。
 一方,海上移動通信の諸問題の改善を図るためには宇宙通信技術を導入することが国際的な課題となっており,この問題を検討するために設けられた海事衛星専門家パネルにおいては3回の会合がもたれ,海上衛星システムの運営組織,運用条件,技術基準等について検討が行われ,1975年4月開催予定の海上衛星システムに関する政府間会議に対する報告書案がまとめられた。
 我が国は上記各会合にそれぞれ代表を送り,必要に応じ文書を提出して意見の反映に努めた。
(3) 国際民間航空機関(ICAO)
 現在,航空の分野では,通信にあるいは航行援助に各種の電波が駆使されている。
 この分野における電気通信の国際的な課題は,電子技術を十分に活用して通信の自動化を図ること,VOR,ILS等の航行援助施設の性能を向上させること,宇宙通信技術を導入すること等である。
 国際民間航空が安全にかつ整然と発達するように国際協力を図ることを目的とするICAOにおいては,常設の機関である航空委員会が設けられているほか,必要に応じて,航空会議,地域航空会議,専門家パネル会議等が開催され,これらの問題が専門的に検討されている。国際民間航空条約の附属書の修正を審議し,その採択を理事会に勧告すること等を任務とする航空委員会においては,第7回航空会議(1972年4月)の勧告に基づき,[1]航空機が一定の飛行を行う場合における航空機非常位置指示標識の備え付け及びこれについての技術基準の規定[2]無線航行援助施設に使用する周波数の変更[3]航空移動業務用VHF帯における25kHzチャンネル間隔の導入等について同条約第6及び第10附属書の関係規定の改正が審議されてきていたが,48年度にそれぞれ理事会で採択された。
 また,アジア及び太平洋地域における航空通信計画等を審議するため,1973年9月5日〜同28日までハワイにおいてアジア・太平洋地域航空会議が開催された。この会議においては,[1]国際航空移動通信用の短波の需要増に対応して関係無線局のSSB(単側波帯)への移行を1978年12月31日以前に完了させること[2]VHF帯による空地通信の管制用の各周波数について部分的改正をすること[3]我が国の国際空港及び代替空港における通信施設の使用周波数に関すること等についてそれぞれ勧告が採択された。我が国は,この会議に7名の代表を送り意見の反映に努めた。
(4) 国際無線障害特別委員会(CISPR)
 国際無線障害特別委員会は,電気に関する規格を国際的に統一することを目的とする国際電気標準会議(IEC)が中心となって1931年に設立準備を進め,1934年1月パリにおける第1回IEC総会において特別委員会として設立された。
 目的は,各種電気機器設備の無線妨害に関する諸規格(許容限度,測定機,測定法)を国際的に統一して,国際貿易を促進するとともに,放送業務を雑音電波による妨害から保護するための国際協力を推進することであったが,近時における各種電気機器設備,オートバイ,自動車等の普及に伴い,これらが発生する人工雑音による無線妨害が無線通信業務全般にわたり著しく増加したこと及びCCIRからの緊密な相互協力の要請があったこと等にかんがみ,放送業務のみならず一般無線業務をも対象に包含することとなった。
 CISPRの総会は3年ごとに開催され,我が国は戦前はオブザーバーとして参加していたにすぎないが,1953年に<1>ECに加入し,同年ロンドンで開かれたCISPRの第12回総会から正式メンバーとして参加している。
 1973年は,第19回総会が米国のウエスト・ロング・ブランチで開催され,我が国もこれに参加したが、我が国の技術は高く評価され積極的に寄与することが強く期待された。今回の総会では,重要議題として機構改革が審議され,総会,運営委員会(毎年),六つの小委員会(妨害波測定器,ISM,電力線,自動車,受信機,各種電気機器)(毎年)及び三つの作業班(雑音防止の安全,用語,苦情統計)を設置することが決定された。この機構改革は,CISPR創設以来の画期的なものであるが,これは各国の妨害電波の除去に対する熱意の現れである。
 我が国内においては,郵政省の附属機関である電波技術審議会がCISPRに関する事務を取り扱っており,関係の文書を審議し,重要なものについて<1>ECの国内委員会である日本工業標準調査会を通じて意見案を回答し,その活動に寄与している。
 本年度は105件の審議を行い,7件について意見が出された。この7件の内容は,
 [1] 25A以上の電流を流す擬似電源回路網(新勧告)
 [2] けい光燈器具の端子電圧の測定(新勧告)
 [3] 妨害苦情の統計(勧告の改訂)
 [4] 内燃機関からの妨害(勧告の改訂)
 [5] ISMからの妨害許容値(勧告の改訂)
 [6] 音声周波の準尖頭値電圧計(仕様)
 [7] 点火栓妨害防止器のそう人損の測定(報告の改訂)
に関するものである。
 また,電波技術審議会が国内規格としてCISPR規格を採用することを答申したものとしては,内燃機関(自動車)から発生する妨害波の許容値及びその基礎となる測定法及び0.15MHz〜30MHz妨害波測定器規格がある。
(5) 経済協力開発機構(OECD)
 経済協力開発機構は,経済成長,発展途上国援助,貿易の拡大を目的として設立された国際機関であり,加盟国の話合いを通じて政策の調整を図っている。1961年に発足し,1974年3月現在で加盟国は24を数えている。我が国は1964年に加盟した。
 情報・通信政策に係る諸問題は,第2-8-3図に示す科学大臣会議以下の組織において討議される。
 科学技術政策委員会(CSTP,Committee for Scientific and Technological Policy)は,科学技術全般をカバーし,その下に分野ごとにいくつかの専門家グループが設けられている。
 電算機利用に関することは,電算機利用グループ(CUG,Computer Utilization Group)が担当し,更にテーマ別にパネルが設置されている。1973年9月と1974年2月に第10回及び第11回CUG会合が開かれ,データ保護,保健情報システム,都市管理情報技術等に関する問題が検討された。
 情報政策グループ(IPG,Information Policy Group)においては,情報に関する基本的政策について討議,報告が行われている。第20回会合は1973年11月に開かれ,国家情報政策の比較検討,情報専門家の教育訓練に関する国家政策等が討議された。
(6) 国際連合アジア極東経済委員会(ECAFE)
 国際連合アジア極東経済委員会は,国連経済社会理事会の監督下にある地域委員会の一つで,地域内各国の経済,社会開発のための協力をはじめ,これに関する調査,研究,情報収集等を行っている。現在の加盟国は,域内国26,域外国5,準加盟国8の計39か国で,我が国は1954年以来域内の加盟国として参加している。ECAFEにおける通信分野の討議は,常設委員会の一つである運輸通信委員会で行われるが,電気通信に関しては,この委員会の下部機構として電気通信小委員会があり,域内の電気通信の開発に関する技術及び経済関係の諸問題を専門家レベルにおいて討議し,その実施状況を検討する等の諸活動を行っている。
 通信分野における最も大きなプロジェクトとして,域内の14か国を対象とする「アジア電気通信網計画」の実現が懸案となっており,現在,1977/78年完成を目途に,計画実現のための技術的,経済的諸問題に関して,ECAFE事務局専門家と関係各国との間の調整会議が数次にわたって開催されており,これらの活動を強化するため我が国からも専門家2名を近くECAFEに派遣して,計画実現に協力する予定になっている。
 なお,ECAFEの名称は,1974年3月に開かれた第30回総会で国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)に改めることが決議されており,国連経済社会理事会の承認を得たのち,新名称に改められることになっている。また,これとあわせて審議された機構改革案により,電気通信小委員会もその名称を政府間電気通信専門家作業部会に改められる予定である。

第2-8-3表 OECD-CSTP 機構図

 

 

 

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