昭和49年版 通信白書

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第2部 各   論

第1章 郵   便

 第1節 概   況

 昭和48年度の郵便事業運営の概況は,まず郵便物数の推移をみると,年度途中までは景気の好調に支えられて順調に増加したが,11月以降は石油危機等による経済情勢の激変と資源の節約ムードを反映して,増加傾向は著しく鈍化した。年間を通じてみると,引受総郵便物数は130億通を超え,前年度に比し5.1%とほぼ平年度並みの増加率を示す結果となった。
 業務運行状況についてみると,世論の要請にこたえて,46年10月に全国の集配郵便局において全国の主要なあて地に配達されるまでに要する日数を示した「郵便日数表(郵便物標準送達所要日数表)」を公表し,その送達速度を安定させるために,輸送,施設,要員などについて種々の施策を推進した結果,47年度まではおおむね安定した郵便の業務運行が図られてきた。
 しかしながら,48年度に入ってからは,主として大都市及びその周辺部において,年度当初からともすれば郵便物の配送に円滑を欠き,一部の郵便物について郵便日数表どおりの送達速度を維持できない事態が生じがちであった。その原因は,これらの地域における人口及び産業の集中に伴う郵便取扱業務量激増と,労働組合の闘争が行われるなど労使関係の安定を著しく欠いたことによる点が多いものと考えられる。とりわけ,年末期においては,郵便及び交通関係労組の広範かつし烈な闘争が長期間継続し,空前の郵便物の滞留を生じ,業務運行は大幅に乱れた。
 また,航空機の騒音問題に関連して,大阪国際空港における郵便専用機の夜間発着規制を行ったが,これが郵便物の送達速度に少なからざる影響を与え,郵便日数表の一部変更を行うところとなった。今後,現在の郵便物の送達速度を維持するに当たって新たな問題を提起している。
 事業収支をみると,郵便業務収入はほぼ計画どおり確保されたが,支出の面では,仲裁裁定の実施等による給与改善が17.5%と大幅な上昇を示したため人件費の支出増が著しく,収支差額は250億円の赤字を計上せざるを得なかった。郵便事業は,運営経費のなかで人件費関係の経費が約90%を占めている現状であり,近年の引き続く高率の人件費増のため,郵便事業財政は極めて憂慮すべき事態に立ち至った。
 このような郵便事業財政悪化の事態に対処するため,48年10月郵政審議会に対し郵便事業の健全な経営を維持する方策について諮問がなされ,同年12月その答申が行われた。答申は,郵便事業経営はこのまま推移すると危機にひんするものと認め,その収支を改善するためには郵便料金の改正によらざるを得ないこと,社会的変化に適応した郵便の在るべき姿について長期的視野に立って検討すること,少なくとも実情に即しないサービスの再検討をすること,機械化を積極的に推進すること等,今後事業経営上採るべき措置について提言を行っている。これらの提言の趣旨にそって,健全経営維持のための各般にわたる施策を推進することが郵便事業の今後の大きな課題となっている。

 

 

 

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