昭和49年版 通信白書

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2 通信の資源・エネルギー消費の効率性

 コミュニケーションの手段として相似た機能を持つ通信と交通について,エネルギー消費量の面から比較してみる。
 情報交換を目的とした外出の平均距離は,47年度の郵政省総合情報流通調査会報告書で往復60kmと算出されている。このケースを用いて,電話でコミュニケーションを行った場合のエネルギー消費量と,コミュニケーションを行うために交通機関を利用して,外出してきた場合のエネルギー消費量を比較したのが第1-3-3図である。これによると輸送機関中最もエネルギー消費量が少ない国鉄中短距離線の消費エネルギー量をもってしても,電話であれば8時間の通話が可能となっており,タクシーを利用した場合はほぼ4昼夜分の電話通話ができることを示している。
 近距離の例として,往復6kmのケースを設定してエネルギー消費量を比較したのが第1-3-4図である。この場合は話す量が1〜3時間あれば電話を利用しても国鉄あるいはバスなどを利用してもエネルギーの消費量はほぼ同じであることが示されている。しかし乗用車やタクシーによる外出はエネルギー消費量が大きく,同一エネルギーで電話をするとすれば10〜15時間の通話が可能となっている。
 以上二つのケースについてみてきたが,短距離の領域では電気通信手段と交通手段のエネルギー消費格差は比較的小さいが,距離が延びるにつれその差は急速に大きくなるといえる。電話は距離が長くコミュニケーション時間が短いほど,交通は逆に距離が短くコミュニケーション時間が長いほどエネルギー消費面において相対的に有利であるといえよう。
 次に,大都市において業務のために出掛けていき,業務用コミュニケーションに費やした正味接触時間を,前記の近距離の場合の通話可能時間と比べてみよう。第1-3-5図は業務に費やした正味接触時間を示したものであるが,これによると1時間以内で終るコミュニケーションが54%と大半を占め,1時間〜3時間が34%,3時間以上が12%となっている。
 一方第1-3-4図の往復6人kmのケースをみると,前述のように電話で1〜3時間の通話量と国鉄やバスなどを利用した場合のエネルギー消費量がほぼ等しくなっている。このことから,大都市における業務外出の大部分は,エネルギー消費面からみて電話の有利な範囲に入るといえよう。

 

第1-3-3図 往復60人kmのコミュニケーション消費エネルギー量

第1-3-4図 往復6人kmのコミュニケーション消費エネルギー量

第1-3-5図 業務に費やした正味接触時間

 

 

 

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