昭和49年版 通信白書

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2 電磁波有効利用技術

(1) レーザ通信
 最近における電気通信需要の急激な増大に対し,レーザ波はミリ波帯よりなお高い光領域のコヒーレント(可干渉性)な電磁波として,その通信への応用について研究開発が進められている。
 電波研究所におけるレーザの研究は幾つか行われているが,基礎的な分野では,大気中及び海中における伝搬特性の実験及び研究が,また応用面では,強力なパルスレーザによる上層大気の組成観測並びに大気汚染測定用としてのレーザ・レーダの開発などが行われている。
 レーザ波の伝搬研究に関しては,大気中におけるその伝搬特性を究明するため,実験に最適な秋田県八郎潟等において,ヘリウムネオン・レーザにより,シンチレーション(光のゆらぎ)の観測を行ったが,更に気象構造との関係等から,その伝搬特性を明らかにするため実験研究が進められている。
 一方,海中における伝搬特性の研究は,海洋開発の一環として実施されているものであり,室内水そうでの基礎的実験とともに実際の海中においてレーザ光の減衰特性や散乱の実態,その他通信システムの開発に必要な特性について,観測や解析研究が行われている。
(2) CNL-SSB(リンコンペックス)通信方式
 陸上移動無線については,無線周波数スペクトルの有効利用の観点から割当周波数帯域の縮小が図られてきたが,従来の方式ではおのずから限度があり,一方,通信の需要は今後ますます増大することが予測される。現在これらに使用されている電波型式はFMであるが,SSB(単側波帯)方式を用いることができれば周波数帯の大幅な有効利用にもつながる。
 上記の観点から,電波研究所では英国で考案され,既に短波遠距離固定回線で実用化されている,CNL(Constant Net Lossの略でリンコンペックスとも呼ばれている。)方式の応用について,計算機シミュレーションにより通信系の最適構成を検討してきたが,この結果に基づき150MHz帯における製作技術上の問題点を探り,実験装置の試作を行うとともに伝搬実験を開始した。
 この方式の原理は,送信側の音声信号を,周波数成分を持つ音声チャンネルと振幅成分を持つ制御チャンネルとに分割し,音声チャンネルはSSB変調し,制御チャンネルは周波数変調し,この二つの信号を複合して送信したものを,受信側で両者を同期させて合成して音声信号の復元を行い,結果として良好な通話品質を確保しようとするものである。
 本方式はフェージング,雑音等にも強く,将来の移動無線通信方式として有望であり,今後大都市における伝搬実験,他方式との比較実験等を実施し,総合システムとして開発研究が進められることとなろう。

 

 

 

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