昭和49年版 通信白書

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9 漁 業 用

 我が国の漁船の船舶局は,無線電話の普及特に27MHz帯小型無線設備を装備する船舶局の急速なる普及によって毎年増加を続け,48年度末には4万953局に達した。漁船の船舶局の普及状況は第2-3-14表のとおりである。
 漁業通信はそれぞれの漁種,操業海域に適応した無線設備で通信を行っており,その使用電波は沿岸,沖合漁業は27MHz帯又は中短波帯,遠洋漁業は短波帯が主に使用され,それぞれの通信系を構成している。
 現在漁船の船舶局が使用する電波は,27MHz帯で148波,中短波帯102波,短波帯286波,VHF帯23波に達している。
 また,漁業用海岸局としては,国又は都道府県が漁業の指導監督業務用のため開設する漁業指導用海岸局と,民間漁業者が構成員となって組織した漁業団体が開設する一般の漁業用海岸局とがあり,ほとんど全国の漁業基地に開設されており,漁船の船舶局と常に緊密な連絡を確保し,航行の安全と漁獲の増進を図っている。48年度末現在指導用海岸局69局,一般の漁業用海岸局463局である。これらの海岸局のうちには,2,091kHzの遭難信号受信機又は27,524kHzによる注意信号自動受信機を備えて,漁船の安全確保のための聴守を行っているものもある。
(1) 沿岸漁業及び沖合漁業の無線通信
 沿岸漁業の小型漁船の操業の安全と漁業能率の向上を図るため,38年から27MHz帯1W-DSBによる電波の使用が認められた。1W-DSBの設備は,価格が低廉で操作方法が簡便であるということから,この種漁船の船舶局は逐次増加し,その船舶局数は2万6,978局で漁船の全船舶局4万953局の66%を占めている。
 また,この周波数帯のみの漁業用海岸局も305局で全体の漁業用海岸局532局に対し約57%を占めている。
 水産庁の漁船統計表によると,10トン未満の海水動力漁船は約28万隻といわれており,この漁船数に比較するとこの種の船舶局の普及率はわずか9.4%にすぎず,小型船操業の安全性を考慮すると今後ますます増加する傾向にある。
 これらの漁船相互間の船間通信は,漁海況の交換,投網揚網の際の連絡が主で,同一の漁場に多数の漁船が集まる入会い操業の場合は,この船間通信が非常に有効となっている。漁船と漁業用海岸局との間の陸船間通信は,漁業用海岸局が所属漁船との間に気象,漁海況,操業上の注意及び入港時間等の通報の交換を行うが,この通報によって漁港における水揚準備や漁船の安全操業に大きな役割を果たしている。
 小型機船底びき網,まき網,さんま棒受け網,いかつリなどの沿岸漁業で,沿岸又は近海に出漁する50トン前後の中型漁船は中短波帯の電信電話あるいは短波帯の電信電話によって漁業通信を行っている。中短波帯,短波帯の電波を使用する漁船の船舶局は,漁業の発展とともに上昇し,その普及率においても10トン以上100トン未満の海水動力漁船1万4,932隻のうち,1万1,871隻が無線設備を装備しており79.5%となっている。
(2) 遠洋漁業の無線通信
 我が国の遠洋漁業は,その出漁海域が太平洋全域,インド洋及び大西洋とほとんど世界の全海域に及び,かつお・まぐろ漁業,底魚漁業及びまき網漁業等を行っているが,いずれも操業期間が長期にわたるため,無線通信特に陸船間通信が極めて重要なものとなっている。
 これらの船舶局が使用する電波は主として短波帯であるが,短波帯は世界的に使用されているため混信が多いことと我が国の海岸局との間の通信は電波伝搬の特性上地域によっては通信可能の時間が極めて短い等のため,必要通信のそ通に困難を来すことが多い。48年度末現在,遠洋漁業の漁船の船舶局を通信の相手方としている漁業用海岸局(12MHz以上の電波を有するもの)は63局で,27MHz帯1W-DSBの小型漁船を通信の相手方とする漁業用海岸局を除いたその他の海岸局144局に対し44%となっている。
 また,漁業通信の状況を中央漁業用海岸局についてみると,第2-3-15表のとおりである。
(3) 母船式漁業の通信
 我が国の母船式漁業には,南氷洋捕鯨漁業と母船式北洋漁業があり,これらの漁業においても無線通信は漁獲の向上と安全操業に重要な役割を果たしている。母船と捕鯨船又は独航船との間の船間通信には中短波帯及び短波帯が使用され,母船と我が国漁業用海岸局との間の陸船間通信には短波帯が使用されている。
 母船式漁業においては,その通信量が膨大であることと限られた通信可能の時間帯にこれをそ通させる必要があることなどから,短時間に多量の通信そ通が可能である印刷電信方式の導入が図られ,48年11月から実用化されて漁業通信の省力化及び能率化を図ってきたところである。そのほか,ラジオ・ブイ (セルコール・ブイ,レーダ・ブイなど)を使用して漁獲の向上を図っている。

第2-3-14表 漁船の船舶局普及状況(48年度末現在)

第2-3-15表 中央漁業用海岸局の1日平均通信取扱状況

 

 

 

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